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2019.記者メモ

2018.記者メモ

 

ヨルシカを聴いて

 

 通勤途中や取材先を往復する車内に流す音楽CDには少々こだわりがある。
 昨年の夏は、学生時代に聴いたパンクグループ、ザ・クラッシュの「ロンドンコーリング」と「サンディニスタ」だった。映画がヒットしたクイーンのベスト盤を挟んで、冬はスキャンダルの「ハローワールド」「イエロー」。ノリノリ気分で聴きまくった。
 コロナ禍で紙面作りに悩んだ今年春以降、選曲にとりとめがなくなった。ボブ・マーリー、ブルース・スプリングスティーン、松田聖子、セックスピストルズ…。気分を上げようとして、何を聴いてもイラついた。コロナで社会活動がとまる中、読者が求めているのは何で、どう伝えようかと考え続けた。
 今は、同じアルバムを流している。女性ボーカルと男性コンポーザー2人組のヨルシカ。澄んだ歌声には喪失の哀しみと癒やしが入り交じり心地よい。そう感じられるのは、報道の姿勢が落ち着いたからだろう。
 〈忘れないように、色褪せないように/歴史に残るものが全てじゃないから〉(ヨルシカ「花に亡霊」)。口ずさんでいて、はっと思ったことがある。
 私たち記者の仕事は日々の出来事から地域の歩みを紙面に刻む。その際、こぼれ落ちてしまいそうな小さな声も、すくい取るよう心掛けてきたつもりだ。勝者はもちろん、敗者の目線からも見つめる。たとえ世間が忘れてしまっても、寄り添い、問い続ける。記者にとって、大切なことが歌われている気がした。
 〈忘れないように、色褪せないように/心に響くものが全てじゃないから〉。感動物語が、価値あるものとは限らない。繰り返されるフレーズを勝手に解釈しているだけだが、聴くたびに、さあ前へと意を強くする。

(2020.12.31 伊藤 仁)
 


 

幻となった3便化

 

 「こんなはずじゃ…」。残り少なくなった今年を振り返る時、誰もがそんな思いだろう。新型コロナウイルス感染拡大でそれぞれの日常が一変、予定したことの多くは成就できず、みんなが我慢を強いられた1年だった。
 明るいニュースが乏しかった中で、5月に県北の空の玄関・大館能代空港の東京(羽田)便が1便(往復)増え1日3便となることが決まった。「羽田発着枠数政策コンテスト」で当選し、長年の要望が実現、10月25日の冬ダイヤから適用される見通しだった。
 それがコロナ禍で増便どころか、多くの日は1日1便に減らされる事態となった。今月25日、開港からの利用者300万人達成記念セレモニーで、空港利用促進協議会会長の福原淳嗣大館市長は「クリスマスプレゼントが届いた」と喜んだが、コロナの影響がなく、前年並みの利用で推移していたら5月の連休中にも突破できた数字だ。
 近年は高速道路網の整備、駐車場が無料なことなどで青森・弘前圏域からの空港利用者が増えてきていた。3便化は、羽田を経由し全国の旅行者が北東北観光に来る「玄関口」としての需要拡大を見据えたもの。当然、能代山本も波及効果創出へ、関係機関の対応が急がれる。今ごろは実現し、活気にあふれていたはずだった。
 しかし、師走の空港ターミナルビルは例年の混雑はなく閑散とし、到着ロビーに通じる出口には東京便から降りた搭乗者が体温を確認できる遠隔の機器が設置されている、予想もしなかった光景だ。
 「幻」となった3便目がダイヤに加わるのはいつの日か。それは同時にコロナが終息へと向かい、社会の日常が戻るということだろう。1日も早く、その飛躍の時が訪れるよう願う。

(2020.12.30 池端 雅彦)
 


 

コロナ禍の新聞作り

 

 本県で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されたのは3月6日。それ以降、秋田支社勤務の記者は、県や秋田市の動向を取材し、本社に感染者の有無を毎日報告している。
 報告があるのは夕方。その時刻になると、編集局のフロアには緊張感が漂う。陽性者が判明した場合、それがもし能代山本を管轄する能代保健所管内だとしたら、記事は差し替えとなり、紙面構成は大きな変更を余儀なくされる。さらに夜の記者発表となれば作業は遅くなり、印刷などの業務にも影響が生じる。
 「ジリリリリリ」──。電話機が鳴る。すかさず受話器を取ると、「きょうはコロナありません」。記者のその声を聞き、新型ウイルスの感染が拡大しなかったこと、新聞制作に影響が出なかったことに安堵(あんど)する。こうしたやりとりが、ずっと続いている。
 整理部に所属する私は、報道部の記者が出稿した記事をチェックし、見出しを付け、写真や図表などとともに紙面をレイアウトするのが役目。ニュース量はその日によって違う。記事が多いと「どれを掲載しようか」と苦心し、少ないと「どうやってスペースを埋めようか」と悩む。
 今年は、コロナにより行事やイベントが軒並み中止や延期となった。影響は大きく、原稿が底を突き、その日暮らしの紙面作りという過去にない状況に陥った。何度かあった窮地は報道記者たちの踏ん張りで乗り切ったが、逆に記事があふれ返るときも。なかなか掲載できず、取材先から「いつ載るのか」と問われたことも多々あった。
 今月になって三種町で感染者が多発。いまだ収束する気配のない新型ウイルスには、この先も翻弄(ほんろう)され続けるだろう。貴重な経験と無駄にせず、日々の仕事に当たりたい。

(2020.12.29 工藤 剛起)

 


 

「悲観」よりも「楽天」を

 

 ネット上で「消滅しない都道府県ランキング」(ダイヤモンド・オンライン/8月24日)という記事に目が止まった。「人口減少、少子高齢化が年々深刻さを増す日本の地方。(中略)そうした中でも…『消滅しない』力を持っている都道府県はどこなのか」。もしかして…と思いながら読み進めると、秋田県が全国最下位にあり、まぁ、予想の範囲内。しかし、たとえ最下位であっても、ここで生きていくと決めた以上、開き直るしかない。
 ランキングは、「生活に満足」「幸せに感じる」などを指数化したという。結果、1位は沖縄県、2位北海道、3位福岡県。逆に下位は青森県(45位)、佐賀県(46位)、秋田県(47位)。この手のランキングで秋田はあまり好結果を残していない印象があるので、予想の範囲内。ただ、上位に位置すればそれはそれで胸を張れるが、仮に下位だとしても、だから何?と開き直る気持ちもあったり。
 この夏、能代市二ツ井町の二ツ井きみまち商店会と二ツ井町商業協同組合が独自に行った地域限定商品券、藤里町のお買い得商品券の発行事業を見ていて思った。販売時などに恋文すぽっときみまち、かもや堂がそれぞれ利用されたが、街なかに拠点となる場所があるかどうかは実はとても大事なのでは、と。
 数年単位で人口が減り続ける現状に、消滅しない都道府県ランキングを見せられるまでもなく、「能代もそのうちなくなるかも」と自虐的に言う人も。それでも、拠点となる場所があり、地域を盛り上げようという人たちの意思がある以上、これからも地域は存続するだろう──と、希望的観測を強くして思う。というか、今は悲観的に見るより、逆に楽天的な目で見ていたい。楽天さは「幸せに感じる」ことにもつながるだろうと、今は信じたい。

(2020.12.28 岡本 泰)

 


 

ご協力に感謝

 

 お正月の紙面に掲載する恒例の「データもの」がある。能代市内を対象にした「市民アンケート」だ。調査にご協力くださった皆さん、ありがとうございます。結果は、元日付から掲載予定です。
 今回から、調査方法を変更した。特に回収方法を。昨年までは弊紙の配達員と集金員が、調査をお願いしたお宅を1軒1軒訪問し、回答済みの調査用紙を集めていた。それを、回答者に郵送で返信してもらうよう変えた。
 対面を避けることが理由の一つだった。新型コロナウイルス感染防止が命題となっているこのご時世、戸別訪問は、する方も、受ける方も、抵抗があると推測された。調査用紙の受け取りという短時間ではあろう接触ではあるけれども。
 回答を頂戴できるまで何度も訪問する場合があったと聞く。おかげで回収率ほぼ9割をキープしていた。郵送方式に変えたことで、回収率は、落ちた。改めて戸別訪問の力を知り、配達・集金員の協力に頭が下がる。そして、ポストに投函(とうかん)するという手間をかけて回答を送ってくださった皆さんに深謝、である。
 記入欄には、添付資料付きや手書きの地図入りの問題提起があったり、弊紙への叱咤(しった)あり激励あり、「今回はご案内頂いたことに感謝いたします」なんてお礼まで頂き、より良い街にしよう、訴えたいことがあるんだよ、という意思がビシバシと伝わってきた。全文を掲載できないのが申し訳ないのですが…。
 近年は集計を半分手伝う程度だったが、今年は…現在、せっせと集計と原稿書きにいそしんでいるところ。さあ、急がなくっちゃ。来年も(おそらく)実施します。A3判の紙1枚、片面の調査です。もし、お手元に用紙が届いたら、ぜひ、ご協力ください。

(2020.12.27 渡部 祐木子)

 


 

寄り添う姿勢

 

 いつもそこに足を踏み入れると、一言では言い表せない強烈な異臭が、コロナ禍で常時装着となったマスクを軽々と突き抜けてきた。旧能代産業廃棄物処理センター(能代市浅内)・第2処分場で今年、約3年ぶりに行われた廃油入りドラム缶掘削の取材を担当した。
 所管する県環境整備課は当初、前年のボーリング調査などから、地中に残るドラム缶を最大350本と想定していた。しかし作業の過程で計画範囲外にも残存しているのが分かり、6~7月の予定で始めた掘削は10月まで延長。撤去されたドラム缶は3年前の424本をも上回る651本に達した。
 元経営者によって不法投棄され、周辺の環境を汚し、地域住民を不安の中に陥れてきた「諸悪の根源」が掘れば掘るだけ出てくるその様には、取材のたびに怒りを禁じ得なかったが、今回救いだったのは県が終始一貫、住民側に「寄り添う姿勢」を見せ続けたことだ。 担当者はドラム缶の掘削状況を住民団体に逐一報告し、追加工事をどの範囲で行うかや、埋め戻しを始めていいかどうかもその都度確認。課長も「見えたドラム缶は例外なく撤去する」と言い続けた。予算切れを理由に工事を打ち切り、地元の反感を買った3年前の「反省」は当然あっただろうが、おかげで現場に殺伐とした雰囲気はなく、「県には感謝している」の言葉を住民から何度も聞いた。
 ドラム缶掘削について県は来年度以降、特に計画していないとしているが、住民からは「場内にはまだ埋まっていると疑われる場所がある」との声も上がる。財政は無尽蔵でなく、対応も容易ではないと思われるが、地元に不安や疑問がある以上、検討はあって然るべき。「地元の意向に反して進めることはしない」という県の言葉を、自分も信じたい

(2020.12.26 平川 貢)

 


 

洋上風力の今後

 

 八峰町・能代市沖が、洋上風力発電を優先的に整備できる促進区域の指定を受けることに向けた協議会の初会合が先月17日、能代市で開かれた。一般の傍聴席には市民グループのいつもの顔触れのほか、見慣れないスーツ姿の男性たちがいた。調べてみると、両市町沖の案件では名前が挙がっていない大手の電力会社や外資企業、総合商社であることが分かった。
 「嵐の予感がしますね」。能代山本沖での開発を見据え地元調整などに奔走してきた霞が関出身のメーカー担当者は、新たな強敵の動きに身構えた。同沖は洋上風力の参入に意欲を示す事業者が群雄割拠し、激しい攻防を繰り広げている。
 先行する能代市・三種町・男鹿市沖は7月に促進区域に指定され、先月27日に公募が始まった。5事業者が1枠を懸けて争っており、大林組や住友商事などの大手が事業者の代表に名を連ねる。共同事業体で手を組む企業も大物ばかりだ。
 能代山本沖の案件ではさまざまなプレーヤーが複雑な出資関係にあり、同じ土俵で自社ブランド同士が競合するカニバリゼーション(共食い)が生じている。温室効果ガスを大量に出す石炭火力への風当たりが強く、洋上風力にかじを切って出資参画する企業もいる。
 菅義偉首相は2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする目標を表明し、洋上風力を再エネ拡大の切り札と位置付けた。東芝は洋上風力の風車製造に取り組む意向を示した。バイデン次期米大統領は地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰し、各国に二酸化炭素(CO2)の削減目標の引き上げを働き掛けるという。
 脱炭素の動きが加速してきた。国内外のドラスティックな変化に能代山本沖の洋上風力も密接に関係する。注視したい。

(2020.12.25 若狭 基)

 


 

新たなやりがい

 

 報道部から整理部に異動して半年以上がたつ。個々の記者が出稿した記事を編集する仕事。原稿に目を通して、誤字・脱字や分かりにくい表現をはじめ間違いがないかチェックし、必要があれば修正する。大幅に削ることもしばしば。取材に駆けずり回る後輩記者の顔を思い浮かべ「申し訳ないなあ」とためらいながらもペンを入れる。
 記事のタイトルである見出しを付けるにしても、熟練の先輩デスクのように鮮やかにはいかない。文字数の制約がある中、記事のエッセンスを凝縮しつつ読者の関心を引き付ける「答え」のような見出しが必ずあるはずだと、悩む。同じ話題を扱った他紙の見出しが、より的確で洗練されたものに見えて朝からへこむ。紙面のどこにどの記事を配置するのか、あれこれ考えながら机にかじりついているうちに、あっという間に1日が終わる。
 外回りをしていたころは、自分で予定を立てて担当分野を取材し、出先で書いた原稿をデータ送信することも多かった。個人商売のようなところがあるなと思うこともあったが、記事を編集する側になり、より紙面そのものに責任を負ったと自覚せねばと思う。誤字・脱字や失礼な表現などを見逃すものなら、そのまま翌日の紙面を汚すことになるから責任は重いが、同時に、今までは感じることができなかった面白みややりがいも味わわせてもらっている。
 コロナ禍。例年とは勝手が異なる環境下での紙面づくりは、同僚スタッフの踏ん張りによって、行事の中止が相次いで記事が枯渇しそうな時期も乗り越えながら、何とか1年を終えようとしている。明るい話題や時には厳しい指摘で、地域にエールを送る地域紙の役割は不変だとの思いを新たに、来年も紙面づくりに励みたい。

(2020.12.24 菊地 健太郎)

 


 

知事選動く

 

 高校時代、序盤で理数教科の授業から「脱落」した。そのせいか、理工系の知識や数学的な思考力を駆使して仕事をバリバリこなす人に対し、尊敬の念と劣等感が混じり合った複雑な感情を抱いてしまうことがある。
 「サイエンス(科学)に基づく手法が必要」。新型コロナウイルス感染症対策を語る佐竹敬久知事(73)は「サイエンス」という言葉を繰り返し使う。人と人の接触頻度について地域ごとの人口密度などを含め科学的・統計的に分析する必要があることを強調する。
 感染拡大を防ぐために科学的な視点が求められることに疑いはない。ただ、会見などの場で知事が繰り返す「サイエンス」という言葉には、東北大工学部を出た「理工系のリーダー」の自負が強くにじみ、先に書いた複雑な感情が何度も湧き上がった。
 12月県議会では、県政の与党的立場にある自民党の県議が知事のそうした姿勢を取り上げ「謙虚な気持ちで頑張ってほしい」とくぎを刺す場面もあった。新型ウイルス感染症で社会構造が大きく変わり、情報通信などの技術が高度化・複雑化する中で、理工系の知識と明晰(めいせき)な思考力に恵まれたリーダーは確かに心強いが、割り切れない思いや小さな声に寄り添う柔らかさを感じたいとも思う。「非理工系」の嫉妬(しっと)と言われてしまうかもしれないが…。
 任期満了に伴う知事選(来年4月4日投開票)が迫り、県内の動きが慌ただしさを増してきた。4選を目指す佐竹知事と、元衆院議員の村岡敏英氏(60)=由利本荘市=が立候補を表明し、風力発電事業にも携わる美容室経営の山本久博氏(69)=秋田市=が近く出馬表明する見通し。
 それぞれの訴えと、県民に向けるまなざしをしっかり見極めたい。

(2020.12.23 川尻 昭吾)

 


 

「ユーチュー婆」いたら

 

 先日、「ツバキの花」を食べた。もちもちの食感で、しっかりめの甘さが懐かしく、何だかほっとした。
 とはいえ本当の花ではない。JA秋田やまもとの郷土料理の達人・グランママシスターズが、酢飯や野菜で作った「ツバキ柄」の巻きずし。昔は結婚式や法事、運動会で作ったという。
 四十路が目前に迫り、「ババの味」や「母さんの味」に心が惹(ひ)かれる。公私混同しつつ、今年は干し餅やミズたたき、ダイコンのビール漬け、カブの酢漬け、イグジ(アミタケ)の煮付けのレシピなどを取材。手間をかけさせたのに〝お土産〟まで頂き、毎回ベテランの味に感激した。
 ただ、その味を10、20年後も楽しめるのかと、不安がある。グランマは60~80代の女性17人で構成し、9人が80代。若々しいとは言え高齢化がじわりと進み、学校の階段を上るのに一苦労という。郷土料理の体験教室を開いてきたものの会員の高齢化で継続が難しくなっている産直もある。
 同JAは10月、「伝統食を残していきたい」とグランマのレシピ集をインターネットに公開した。今月5日の三種町のイベントでは、グランマがオンラインで首都圏の人に赤ずし、かまぶくを紹介。最初は「尻込みしていた」(同JA)グランマたちはノリノリになり、「またやりたい」との声が上がったといい、今後はインターネットで調理動画を紹介したい考えだ。
 「料理上手な女性部員をグランマに引き込み、無くさないようにしたい」と同JA。広報誌にレシピを載せるだけではなく、講習会の開催や動画共有サイトの活用など、あの手この手で名人の技を残したい。郷土料理専門の「ユーチュー婆(ばあ)」がいたら面白い。
 何年経(た)っても、ミズを、イグジを、ビール漬けを、食べたい。

(2020.12.22 山谷 俊平)

 


 

対話で課題解決を

 

 課題の解決に向け、人が集まり、話し合いの場を設ける。容易に対応策などの方向性が定まれば、越したことはない。大概、そうはいかない。
 「地域に新たな動きを生み出すエネルギーがなくなってきている」。若い世代の流出、少子高齢化などを受け、地域の活力減退を肌で感じる住民の切実な声を各地で聞いた。今年に限らず、取材先で耳にする機会、書くことが多い言葉がある。それが「人口減少」だ。
 人口減少の流れを緩和させるべく、定住・移住促進、雇用・産業振興などに関して知恵を絞っているのは行政機関だけでない。
 印象的な意見交換の場があった。三種町民による任意団体「コミュニティウィーバーズなんとすみたね」の月例会でのこと。多くの市町村が子育て世帯に対して手厚い支援を打ち出しているが、子どもを産み育てる環境の実情を知ろうと、関係者を招いて話を聞くと、能代山本の場合、産科や小児科は能代市に集中し、その数も限られていた。人によっては初めて知る事実であり、地域の医療体制が定住・移住の施策と大きく関わることが改めて浮き彫りになった。
 人口減少対策に特効薬など存在しない。重点施策の数値目標設定も必要かもしれないが、地域の現状を直視し、探り、気付きを得ることも大切だ。
 「まずは感じていること、考えていることを口に出していくことが大切。根は深いが、協働の形をつくって行動するほかない。そうすることで解決できるものもあるはず」。同団体の代表、山本智さん(65)はそう語る。
 すぐに答えが出なくてもいい。課題の解決に求められるのは対話だと思う。地域の道筋を模索する役割は、この土地にいま生きる私たちに与えられているのだから。

(2020.12.21 宮腰 友治)

 


 

八峰の魅力ハタハタ

 

 軽トラックのヘッドライトに照らされ、日が沈んだ空にハタハタが舞った。降りしきる雪の中、刺し網をほろう漁師たちの姿を写真に収め、初めて見た幻想的な光景に見とれた。シャッターを押す指先の感覚が麻痺する氷点下5度の寒さの中、漁師が笑った。「ハタハタ、おもしれべ?」
 八峰町担当1年目。行政も漁業も初めての取材で、頭の中は「?」でいっぱいだった。とりわけハタハタ取材に翻弄された。「ハタハタは夜に動く魚」「網を上げるのは朝」で、漁師から「ねぷかきこいでられねよ」と気合を掛けられた。
 朝と夜はなかなか時間の融通が利かず、日中、少しでもハタハタを知ろうと、港に足を運んで漁協職員や漁師に話を聞いた。硬派な海の男たちの世界におじけづいたり、なまりが聞き取れなかったりと会話が続かないこともあった。
 ハタハタ取材のあんばいが分からず、「接岸、いつ頃になりそうですか」「今週中には来ますかね」と同じ質問を繰り返し、「ハタハタさ聞いでけれ」「ハタハタさ電話せ」「ハタハタでねば分がらね」と苦笑いされた。網に数匹掛かった時や初漁の時には、待ちに待った瞬間に、「おめでとうございます」と口にしたが、「なんもよくね」「まだ始まってもいねがら」と返された。例年にない沖合不漁や接岸の遅れから、漁業者のやきもき感も相当だった。
 ようやくまとまった水揚げがあり、昨年より3週間ほど遅く本格的な漁がスタート。「ハタハタは漁師のボーナスみてえなもんだ」。そう教えてくれた漁業者の顔が少しでも晴れることを願いながら、今日も港に向かう。
 漁業も行政も町の人に助けられた1年。温かく対応してくれてありがとうございました。来年も八峰町の魅力、教えてください。

(2020.12.20 成田 結子)

 


 

能代工らしさを

 

 全国制覇58回を誇る高校バスケットボール界の名門・能代工が学校統合前、最後の全国大会・ウインターカップに挑む。新型コロナウイルスの感染拡大で主要大会が中止になり、今年唯一となる全国の舞台。選手たちの勇姿を目に焼き付けたい。
 コロナ禍で部活動の自粛や休校措置が取られ、満足に練習できなかった春。能代カップやインターハイの中止も決まった。部員、とりわけ最上級生の心情は察するに余りあった。
 それでも選手たちは前を向いた。ウインターカップの開催を信じ、気持ちを切り替えて練習に励んだ。未曾有の困難を乗り越え、努力の成果をぶつける舞台が近づく。
 平成19年の秋田わか杉国体を最後に全国優勝から遠ざかり、全国大会出場を逃した年もあった。高校バスケ界を取り巻く環境は変わり、長身の外国人留学生を擁するチームが全国上位を占める時代。小柄な日本人選手だけで走り勝つのは容易ではなくなった。
 ウインターカップ前の取材で、OBら関係者から思い出やエールを聞いた。大会に向けたメッセージの共通項は「能代工らしさを見せてほしい」。当然13年ぶり59回目の日本一に期待する一方、何よりも見たいのは能代工伝統のスタイルだという。しつこいディフェンス、ルーズボールやリバウンドへの執念──。そんな能代工の気概に期待しているのだ。
 ウインターカップは23日開幕し、能代工は初日の1回戦で九州学院(熊本)と対戦する。あるOBの「過去の栄光と歴史をプレッシャーに感じることはない」という言葉が印象深い。現役部員が集中すべきは目の前の試合。悔いのないプレーで勝利をつかみ取ってほしい。試合会場で能代工らしさを見詰め、長く選手と喜びを分かち合いたい。

(2020.12.19 山田 直弥)

 


 

宇宙見詰め輝く目

 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くのイベントが中止となった能代山本地方。振り返ると非常に静かな1年だったが、そんな中、県内外から大学生らが集まる能代宇宙イベントは対策に対策を重ねて11月下旬に開催。規模こそ縮小したが、学生たちの熱い思いが改めて感じられた。
 今年は本県や東京、愛知、宮城、神奈川などから大学生ら約150人が参加。来能2週間前から外出制限などを行い、イベント期間中も感染対策を徹底。守れない場合は参加を禁止して帰らせるという規則も設けた。
 対策は学生たちの意見も踏まえたもの。前田恵介実行委員長から「これまで学生たちに一見危険とも思えるロケット打ち上げ実験をどうやったら安全にできるのかを真剣に考えるよう指導してきた。コロナ禍の中で、学生はどうやったら市民に安心を与えながら安全にイベントが開催できるかを必死に考えていた」と聞き、学生たちが知恵を絞り、たとえ条件が厳しくても能代に来たいという姿勢にすさまじい熱意を感じるとともに、そこまでして来能してくれることをうれしく思った。
 一般公開は中止したが、その分インターネット配信を充実させるなど代替となる取り組みもしっかり用意。こうしてコロナ禍での行事の在り方の例を一つ示すことができたのは大きかったのではないか。実際、伊豆大島(東京都)で学生主体の運営で行われる共同打ち上げ実験では、今回の対策を参考にしたいという声が出ているという。
 例年は8月開催ということもあり、取材中に会った学生たちは慣れない寒さに震える様子もあったが、宇宙という目標を見詰める目は輝いていた。新型ウイルス感染症が終息し、来年は大勢の学生が能代をにぎわせてくれることを願っている。

(2020.12.18 小林 佑斗)

 


 

日常のありがたさ

 

 新型コロナウイルスが中国で初めて確認されてから1年が過ぎた。この災厄はすべての人の生活を変えさせ、教育現場も例外ではなかった。行事の中止や縮小、「3密」への細心の注意を払っての授業など子どもたちや保護者、教職員にとって悩ましく慌ただしい年になったと思う。
 行事などでは、2度の臨時休校や保護者の出席がかなわなかった卒業式、規模を縮小した運動会や学習発表会、行き先を変更または中止せざるを得なかった修学旅行。校内では、毎朝の検温と健康観察カードへの記入、手指消毒などの感染対策、座席間隔を広げたり空き教室を利用した分散授業。新型ウイルスで変わってしまった日常は枚挙にいとまがない。
 ただ、すべてが子どもたちにとってマイナスに働いたわけではなさそうだ。小中学校の修学旅行は、北海道や首都圏から北東北や県内に行き先が変更されたが、同じ東北地方、同じ県でも地域によって異なる風土や文化を学び、古里の魅力、日常を過ごせるありがたさに気付くきっかけとなったようだった。
 岩手県を訪れた能代市の児童は「岩手県でしか体験できないことが多く、みんなで楽しめた。修学旅行に行けただけでもうれしい」、仙北市を訪れた三種町の児童は「県内でも楽しい思い出をつくれた」と笑顔を見せていたのが印象に残った。
 新型ウイルスは先月下旬から再び感染者数が全国的に増加傾向にあり、予断を許さない状況にある。幸い能代保健所管内で10代以下の感染は現時点で確認されていないが、これからはインフルエンザの流行にも気を付けなければならない。充実した学校生活を送るために引き続きマスク着用や手洗いうがい、消毒といった感染予防を欠かさずに続けていきましょう。

(2020.12.17 藤田 侑樹)