「朝マック」から遠ざかって

(3月26日)

 支社勤務で単身赴任していた頃に時折、車で5分ほどのマクドナルドで、ハンバーガーとコーヒーがセットの格安の「朝マック」で腹ごしらえした。
 当時、能代にはマックの店がまだなく、テレビで盛んに宣伝されるバーガーショップに興味を覚えたのと、店の明るさと清潔さ、メニューの値頃感にひかれたためだった。しかし、後にマックの店舗が能代にようやく開店しても、いまだに行ったことはない。
 年を重ねて味の好みが和に傾いたためか、食のオコチャマと見られたくないためか。さまざまな外食チェーン店が増えた中で食事の選択にハンバーガーがすぐ出てこないのだ。それより、しなり強く頑張っている地元の食堂や、元気なラーメン店などに足が向く。
 それでは変化する外食の動向を探れないので、マックに行ってみようと思うのだが、マクドナルドは不祥事続き。去年は仕入れ先の中国の工場が使用期限切れ鶏肉を混入させたチキンナゲットを製造した疑惑が持ち上がり、アメリカの港湾ストで原材料入荷が制限されたことによりフライドポテトが一部販売中止。今年に入ってからは異物混入騒ぎだ。
 ファストフードの代表格といえる日本マクドナルド社が業績不振に喘(あえ)ぎ、11年ぶりの赤字になる見込みという。不祥事も要因の一つだろうが、もっと深い問題があるのではないかと想像しているところに、日経新聞の3月8日の書評欄に『マクドナルド 失敗の本質』(東洋経済新報社)があった。見出しは「競争力を失ったビジネスモデル」。
 著者は小川孔輔(こうすけ)さん。能代市出身で法政大教授。マーケティング理論の泰斗(たいと)だ。
 その本を探しているうちに月刊誌「新潮45」4月号に、小川さんが『マクドナルド「賞味期限切れ」の経営』と題して、本の概要ともいえそうな内容を載せていた。何度も何度も「なるほど」とうなずいた。
 「無理なスピード経営によるサービス品質の低下は、マクドナルドに限った話ではない。それとは逆に成長を急ぎ過ぎないことが、小売業やサービス業では重要なポイントである」。経営論としても突き刺さった。(八)
 


 

県議選どんだらもんだすか

(3月21日)

 三種町の知人と雑談すると、「ところで、どんだらもんだすか」と来月3日告示の県議選に話題を振ってきた。「さあ、やってみなければ分からないのでは」と返すと、彼は「そりゃそうだけど…」と苦笑い。
 後で思い出せば、彼の「どんだら」には、前哨戦から見える立候補予定者の情勢だけではなく、選挙そのものの雰囲気も含まれていた気がする。
 能代市内の先輩は「さっぱりだな」とポツリ。選挙はいつも好きで、候補者や有力支持者らを評し、時に集会にも行くが、この度は討議資料を持ってくる関係者もおらず、集まりの誘いもないらしい。今は置いてけぼりを食っている感じなのだろう。
 立候補予定者に近い立場にある知り合いと席が隣り合わせに。彼はいきなり「どんだ。何だか盛り上がっていねぐねがぁ」と漏らした。「そうかもしれない」と相づちを打ったが、別れてから「あんたが盛り上げなきゃ、誰が盛り上げるのだ」と檄(げき)を飛ばしてやるべきだったのではないかと思った。
 県議選能代市山本郡選挙区は定数4。自民と社民のベテラン2人が引退、現職2人に新人4人の6人が立候補を表明している。年齢構成、居住地、職業・経歴からみても多彩な顔触れである。
 それをして、「激戦」の予想が県内に響く。定数12に元市長も含む16人が出馬見込みの秋田市、定数1減で現職4人の誰かが落選する由利本荘市とともに注目区なのだ。
 先日の寒い日、街であいさつ回りする立候補予定者を2人見掛けた。会合で熱く語っている人の報告も聞いた。告示後の応援を算段する支持者もいた。決して手をこまねいているわけではないが、「激戦」予想のわりには前哨戦は案外に冷めているようにも見える。
 かつては県議選の後に市町村の首長選や議員選が控えていて、それらが大きく絡まって選挙全体が沸いたが、それがなくなったためか。昨年末の衆院選の過去最低投票率に表出した「1票を捨てる」がまだ、有権者に潜んでいるためか。
 告示まであと2週間。関心を高めて1票を大事にしたい。(八)
 


「あごたまさつぐ」と嘆く人

(3月17日)

  後輩から「あごたまさつぐ」の意味を教えてほしいと、問い合わせがあった。しかし、自分はその言葉を周辺から聞いたことがなく、したがって使わないので答えようがない。後日、どのような場面で出てきたのか事情聴取し、そのうえで調べてみた。
 彼がなじみの店でくつろいでいると、応対した60代半ばの女性店主が客から頂いたものだろうかお菓子を頬張った。その刹那、彼女は「あごたまさつぐ」と顔をしかめたそうだ。どうやら、あまりにも甘くて辟易(へきえき)したらしい。
 後輩が当方に質問してきたのは、そうした場合に使う方言なのかとの疑問も含む。
 彼が経営する現場作業のある会社では、毎朝打ち合わせを行い、いろいろ指示するが、従業員の中には「それはできない」「無理だ」などとやる気が見えないことが少なくないという。能代弁の「あいでごどね」、つまり「そうだ」「そうです」とうなずくことがないことに、腹の中で「何で素直になれないのだ」と怒り、そして口には出さぬが、「あごたまさつぐ」とつい愚痴るのだ。
 「あごたま」は県教委の「秋田のことば」によれば、「近世には『あぎと=顎(あご)』を『あごた』と言ったが、その形に接尾辞『ま』を添えた語が『あごたま』であるとみられる」と説明。別の辞典では、その顎から「おしゃべり・饒舌(じょうぜつ)家」に意味が転じたとみる。さらに「付く」(つぐ、ちける)が加わると、「処置に困る」となる。
 今月11日に亡くなった冨波良一さん(元能代商高教頭)が遺(のこ)した「採録・能代弁」には、「あごたまさ ちける」。「顎ったま付ける」は①全くもって閉口②やりようもなく、お手上げ③あきらめて打ち捨てにする④サジを投げる──の四つ意味があるとし、使用例文に「どだにもかだにも、あごたまさちけだでゃ」(どうにもこうにも参っちまった)を紹介している。
 甘い菓子に閉口した彼女も、意欲に欠ける従業員にお手上げの彼も、どちらも使い方は間違ってはいなかったのだ。
 それにしても近頃、「あごたまさちける」状態の人が多くないだろうか。誰とは言わないけれど。   (八)

 


言葉に潜む決意と鎮魂
─ 東日本大震災から4年 ㊦

(3月11日)

  旅館の紹介で、港近くの復興屋台村「気仙沼横丁」の居酒屋の暖簾を潜った。開店早々で客はわれら2人。生ビールを注文すると、お通しには薄醤油味の「ネカブとキャベツの和え物」。地元で採れたネカブのねっぱりが何とも乙であった。
 「どちらからお見えですか」と若くはつらつとした女性従業員が聞くので、「能代」と答え、被災地のその後を視察に来たと伝えると、「ワーッうれしい」と喜んだ。能代は鉄道で何回か通過したそうだが、「バスケのまち」に親近感あるらしい。
 彼女は「先日は大館の人が寄ってくれました。被災地を観光してお金を使うんだ、と言っていましたね」と話したので、こちらも翌日に特産品を土産に買っていこうという気分にさせられた。
 その店は、3人の男性による共同経営。いずれも営んでいた民宿と自宅を失い、一人は両親と妹を、もう一人は祖父を亡くした。けれど気仙沼の魚介、宮城の食材を使った自慢の料理の腕は流されていないと立ち上がったという。
 郷土料理をと注文した「モウカの星」。ネズミザメの心臓の刺身は、臭みなし、歯触りコリコリ、味はさっぱり。国登録有形文化財の本社屋が大きな被害を受けながらも製造を再開した酒蔵の純米酒の旨さが相まって、「復興の味」を堪能した。
 しかし、被災地応援ツアーもあってひっきりなしであった客足は、ブームが去ってか今は鈍く、地元の客も経営者の人脈に頼りがちだという。会話から厳しさがうかがえた。
 カウンターに色紙が飾ってあった。「めげない にげない くじけない」の墨書き。地元の住職の言葉だった。「希望の店」はそれを胸に刻んで、奮い立っているのだと思うと、さまざまな形で東北支援は続けるべきなのだと考えた。
 別の仮設の復興商店街の飲食店に立ち寄ると、初老の主人は仮設住宅に暮らす男性客と語っていた。店主は「うんぷてんぷと思うしかないよ」とわれらにも同意を求めた。
 「運否天賦」は「人の運不運は天のなすところである」の意。大震災・大津波から4年。そう思わざる得ない鎮魂と「今を生きる」決意があると言外に伝わってきた。(八)

 

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マグロやサメが水揚げされ、活気を取り     観光施設の「海の市」も昨年夏に

戻した気仙沼魚市場              全面復旧(気仙沼市)

 


 

復興へ地域変貌、異観も
─ 東日本大震災から4年 ㊥

(3月10日)

 宮城県石巻市から岩手県釜石市へと国道398号と45号を車で走ると、採石や土砂を積んだ大型ダンプカーが列を成し、時折渋滞に巻き込まれた。
 ダンプのご当地ナンバーは室蘭(北海道)、袖ケ浦(千葉県)、湘南(神奈川県)、静岡、滋賀など全国各地。同乗の人は「新車が多い」と驚いた。なるほどよく見ると、塗装が剥げていたり、サビがある車体はほとんどなく新しい。1000万円クラスを購入してもフル稼働すればペイするとの見通しがあるのだろう。
 津波で被災した沿岸部は、2年前はまだガレキの処理や港湾・海岸の応急復旧などに追われていたが、今は高速道、一般道、土地のかさ上げと区画整理、上下水道、防潮堤、水門、公共住宅などありとあらゆる工事があちこちで行われており、ダンプの需要もピークとみた。インフラという生活・産業基盤は復旧から本格的な復興に入ったようで、「遅れている」を取り戻しつつあると感じた。
 陸前高田市では、巨大なベルトコンベヤーがうなりを上げていた。高台造成でかさ上げするために山を切り崩して土砂を運ぶが、その全長は3㌔、総工事費120億円。トラック運搬で9年かかるところを2年に短縮でき、復興を加速させるという。その異観と盛土の高さに目に奪われながら、再生のために街が完全に変貌することを想像した。
 しかし、山側の高台にはすでに新築の家が建ち、新たな商店も点在している。水産加工場も一部は完成・稼働。果たして街が構想通り形成されていくのだろうか。
 女川町に住んでいた山本郡出身の知人は家屋を流され、仙台市の「みなし仮設住宅」の借り上げ宿舎にいる。80歳の年齢を考えれば、夫婦がもう戻ることはないと昨年話していた。高齢化と過疎、そして震災。復興工事は着実でも、人や地域の復興には影がつきまとう。
 防潮堤にも驚嘆した。陸前高田では海面から高さ12・5㍍が工事中。釜石では6・1㍍のかさ上げがホテルや旧商店街のある湾内にぐるり巡らされた。
 住民合意を得て防御を施したが、海の見えない景観は大津波の恐怖を改めて教える。そして、人知の及ばぬ自然の脅威を乗り越えられるのかの不安にも襲われた。(八)

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うなりを上げて山からの土砂を運ぶ巨   高さ12・5㍍の防潮堤の建設が進む

大ベルトコンベヤー(岩手県陸前高田市)               (陸前高田市)

 


 

「伝える」「語り継ぐ」学ぶ
─東日本大震災から4年㊤

(3月9日)

 2年ぶりに宮城、岩手の三陸海岸を訪ねた。東日本大震災・大津波から間もなくまる4年。遅れていると伝えられている被災地の復興の状況、3・11の伝え方などをこの目で確かめたいと思ったからである。
 宮城県石巻市から北上して岩手県釜石市まで。青森県から福島県さらには茨城県にまで及んだ被災地の一部、しかもつぶさに見たわけでもなく、人々の生の声を拾う余裕もなく、表層を知るだけであったが、それでも風景は迫るものがあり、いろいろ思った。
 来日した英国のウイリアム王子が訪問して、その施設の存在を知った石巻日日新聞の「石巻ニューゼ」。
 同社は津波で社屋が浸水、輪転機が水没して新聞発行の危機に立たされたが、「電気がなくても紙とペンはある」「わかることだけでいい」と、手書きの壁新聞を作った。その壁新聞、3月12日から17日までの6枚が張られていた。「伝える使命」がひしひしで、同業として地域紙の役割を改めて教えられた。
 石巻市大川小学校。全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となり、教職員も10人犠牲に。被災のまま手付かず状態にある校舎を震災遺構として残すのかについては結論は出ていない。
 校舎は悲しみをたたえてぽつんと建っているが、生死を分けた裏山の前には2年前にはなかった犠牲者の名を刻んだ慰霊碑やモニュメントが建立されていた。手を合わせ、遺族や地域の人々の苦しみを思えば、校舎の解体も止むを得ないのではと感じた。裏山がある限り、悲劇は語り継がれていくのだから。
 多くの職員が亡くなった南三陸町の防災対策庁舎。鉄骨がむき出しで津波の凄さをまざまざと見せつけ、遺構として残る方向にあるが、周辺のかさ上げで埋没しそうにも見えた。気仙沼市の津波の象徴であった、陸に打ち流された漁船の第18共徳丸。解体され、その場所は土地区画整理など復興現場を望める展望台となっていた。
 「伝える」「残す」も簡単ではない。錯誤もあるだろう。しかし、風化させないは人の意思である。
 気仙沼に宿を構えると、旅館の従業員は、展示している写真パネルを指しながら震災時の様子を説明、自らのあの時の恐怖と不安を述べた。まさに「語り継ぐ」だった。(八)

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裏山前に建立された大川小の慰霊碑    6枚の壁新聞を展示(石巻ニューゼで)

 


 

「亭主を早死にさせる方法」学ぶ

(3月4日)

 行き付けの店のトイレに「秋田県の中高年男性に告ぐ!減塩六つの戒め」なるパンフレットのコピーが張ってある。県健康福祉保健部健康推進課の作製。小用の度に目に飛び込んできて反応する。
 「一、何さでも醤油かげるな!」。それは気を付けている。「二、麺類の汁は飲むな!のごへ!」。しかし、鰹節、昆布、鶏ガラなど出汁の利いたうどん・蕎麦・ラーメンの汁は旨く残すなんてもったいない。そこで半分は残す。
 「三、汁物は一日一杯、具いっぺ入れでけ!」。でも朝に味噌汁、昼は麺類の日も。ランチにはスープがつく。「四、ソースはかげるな!つけでけ!」。付けはしないが、かけるのは少々、よしとしようか。
 「五、しょっぺものばりさ、手ぇ出すな!」。そうしているが、塩っぱいゆえに深い味わいの食材がある。しょっぺガッコも少しはいいのではと食べるが、だめなの。「六、おめのための味付けだ!文句つけるな!」。文句をつけたら反撃されるから、それはしない。
 合格点だろうか。パンフに登場する恐そうなお母さんは、「これが守れねば、おめがだ…早死にするド!!」と脅している。
 先日のとある会で「亭主を早死にさせる方法」を教えられた。
 ①甘いものを毎日たくさん食べさせる②塩辛いものを毎日たくさん食べさせる③お酒を毎日たっぷり飲ませる④脂肪のついた動物の肉を食べさせる⑤タバコをたくさん吸わせる⑥座らせたままで動かさない⑦旅行はしないようにさせる⑧文句をいっていじめる⑨夜更かしをさせる⑩健康診断は受けても結果は無視させる。
 「旅行はしない」はリラックスさせない、ストレス解消をさせないため。文句は「ネチネチと」だそう。
 脳血管研究センターなどを運営する県立病院機構の鈴木明文理事長が「脳卒中から身を守る─寝たきりにならないために」と題した講演の中で、外国の医学博士が作った十カ条を紹介した。笑いの中に不安を抱えた人も少なくなかったよう。
 早死にしないためすることは、誰もがみんな分かっているのだが、実行がなかなか伴わないのだ。(八)