けんちん汁にはサガリハを

(2月26日)

 「家で食べる?」と店主が言うので、「じゃあ遠慮なく」と答えた。「けんちん汁」である。
 お通しに出てきた「あったか汁」は、ワラビにイニョ(ニオサク)、フキ、タケノコ(ネマガリタケ)の山菜に、キノコのサモダシ(ナラタケ)、ゴボウ、ダイコン、ニンジンの地場野菜、油揚げなどが入った薄い味噌(みそ)仕立て。厳冬だからこそ体がポカポカになり、しかもヘルシー。滋味あふれていた。
 声には出さなかったけれどあまりにもうまそうにしていたためか、具が多いので量が膨らんでしまう郷土料理を作り過ぎて余しそうになったためか、そこはよく分からないが、タッパーにドバッと入れて、持ち帰らせてくれた。帰り際、彼女は「サガリハがあれば、もっとおいしくなるんだけど、なかったのよ」と申し訳なさそうに話した。
 思い出した。去年の4月29日の「昭和の日」にアウトドアの師匠と名人と3人で山菜採りに出掛けた際、彼らがサガリハだと指さし、「んめでなぁ。俺、好ぎだ」などと話していたことを。
 山菜の中でも早く出回り、おひたしや味噌汁の具となるアザミ。その仲間だが、大ぶりで灰汁(あく)が強いので塩漬けして保存し、塩抜きして料理に使うのだという。正式にはサワアザミと言うらしい。
 それから何日かして、農産物直売所をのぞくと、ワラビやイニョなどけんちん汁の具を細かく刻んだ「きゃの汁」「きゃのこ」の材料が袋詰めで売られていた。よくよく見ると刻まれた濃緑の葉が入っていた。原材料名にサガリハの文字。
 早速、買い求めて「けんちん汁もどき」を作ると、女主人が説明した独特の風味、アザミの少し苦くて、それでいて何とも言えぬ立つ香りが、郷土の味を一段と豊かにした。
 さらに数日後、別の直売所に立ち寄ると、今度はサガリハそのものが一袋198円であった。こちらは豚汁に放して食べたが、これまたいい味。ついお代わりをした。
 案外に知られていないサガリハは、結構見かける山菜だそうで、見直されていい地域の食材かもしれない。今度は名人たち好む「油炒め」を。

(八)


 

「まず、いが」を「まずい、が」に

(2月22日)

 この地方に土着している人ならば当たり前のように話し、自分もまた自然に発し、方言だと意識してこなかった表現が、実に深みがあると最近になって気付いた。「まんち」あるいは「まんつ」。
 冨波良一さんの「採録・能代弁」では「まんち」にはつの意味があると紹介している。
 まんちAは「それじゃまず」「サヨナラ」で主に男性語、類語は「ひば」。まんちBは「ひどい」「あきれた」で女性語だとし、類語に「まんちだよ」。確かによく使う。
 まんちCは①「まずまず・まあまあ」②「いいからいいから」③「それはそれでまあひとつ」④「なんでもいいからひとまず」⑤「ここのところはひとつどうか」で、使用例として「したらまんち、あえだべしゃ」(そんならまあ、ここんところはその〜ナンだろう〜ホレ〜あのほら…)。こういう言い回しで、言い訳にならない言い訳をして、ごまかす人は結構いる。
 まんちDは①まずまず(と、皆をしずめる)②まあ静かにして(と、制する)─だそう。使用例の「まんち、きでけれて」(静かにしてまず、聞いてくれや)は、この前の仲間内の飲み会で誰かが叫んでいた。
 まんちEは①どうにかこうにか②なんとかまず。「まんち終わったが」(まずはやっとのことで終わったナー)。冠婚葬祭の式が無事終われば、そんな風に安堵(あんど)する。
 まんち(つ)は、「何はともあれ、ともかく」や「おおよそ、だいたい」の意味がある「先ず」の音変化した形だそう。訛(なま)りが薄まって「ん」が強調されず、「ち」も正確な発音の「ず」に近づいて、「まんず」「まず」という人が増えた。
 そこで、耳にするのが「まずいが」。何かしらの問題が残っている、もしくは解決しなければならない点があるのに、それに目をつむったり、先送りする場合に、「まあ、いいか」と含めてしまう言い方だ。しかし、それでは後々に事が大きくなってにっちもさっちもいかなくなり、酷(ひど)いの「まんち」となり、サヨナラの「まんち」となるのだ。
 「まずいが」─「まずい、が」と慎重に見極め、立ち止まることも必要だ。日常生活も、組織の運営も。(八)


 

オラホの国会議員は…

(2月17日)

  年明け早々に開会した国会。この国の行方はどうなるのかと論戦に関心が及ぶはずが、安倍政権は不祥事続きで、金銭疑惑の大臣辞任、女性閣僚の失言、はては不倫騒動のイクメン議員辞職。騒動を見て、冷ややかに呆れている。
 それでも、テレビ中継される本会議、予算委員会は〝ながら”でも見聞きするようにしている。そして、本県選出あるいは縁の議員が映れば気になる。
 衆院予算委員会。質問者席を隔てた横にいつも座り露出度が高いのは、自民党総務会副会長の金田勝年氏(秋田2区)。予算委筆頭理事であるからだ。審議が混乱すれば、出番が多くなるだろうか。
 その予算委で4日、改革結集の会代表の村岡敏英氏(比例東北)が、政治とカネや衆院定数削減などを質問していた。映し出された共産党の委員席には、能代市生まれの高橋千鶴子氏(同)がいた。党厚労部会長は予算委員だった。
 委員会審議の中継は、〝華”である予算委に集中するので、金田、村岡、高橋の3氏以外は、どの場で存在感を見せているのかは、よく分からない。インターネットで議員のホームページを探せば出てくるが、そこまでするのは熱烈な支持者か、批判的な有権者に限られるだろう。
 定期購入している國會議員要覧(国政情報センター発行)の最新刊が届いた。政党・国会で大幅異動があったためだ。
 本県関係は衆院は自民党の冨樫博之氏(秋田1区)が経産委員、党国交・国防副部会長、御法川信英氏(同3区)が議運委理事、党国対副委員長、民主党の寺田学氏(比例東北)が決算行監委筆頭理事、党副幹事長。参院の秋田選挙区選出はともに自民党で中泉松司氏が決算委理事、党青年局次長、今夏改選の石井浩郎氏が文教科学委員長。
 もう1人。県知事を務めた寺田典城氏。維新の党参院会長で先月28日に本会議で代表質問した。みんなの党の比例で当選、改選期を迎えた。75歳。
 再挑戦か、政治の表舞台から去るのか、注目する。引退の可能性が高いと見るが、秋田選挙区の野党統一候補になるべきという人がいた。「あり得ない」と返したが。    (八)


 

能代市議会の傍聴を続けた人

(2月12日)

 能代市議会の定例会は3、6、9、12月の4回。「論戦の華」である一般質問は登壇者の人数にもよるが2日か3日で、いずれも平日の日中である。
 身近な市議会に関心を持つべきといわれても、議会側に多くの市民が足を運ぶようにする努力が足りない中で、見学することさえ案外に容易ではない。
 まして、国登録有形文化財に指定されている風格ある議事堂が耐震不足が指摘されるや、早々と使用をやめて、平成23年からは二ツ井町庁舎で議会を開くこととなり、同じ市民ではあるけれど旧能代市の住民には遠い存在となり、時間に余裕がある住民でもおいそれと、一般質問をのぞくことができない状態である。
 ところが、平成10年頃から定例会一般質問を傍聴、しかも12年6月から実に15年余の昨年12月まで62回にわたって小紙に「議会傍聴記」を投稿し続けてきた人がいる。その内容は、議会の在り方、質問のやりとり、それに対する自身の分析を加えたもので、記者が書く議会記事とは異なる視点・論評があり、「私の意見」欄に掲載、議員はもとより市当局、読者の関心を呼んできた。
 本人に聞いたことがある。「あなたはなぜ市議会の傍聴を続け、投稿するのですか」と。すると、こう答えた。
 「なぜ私が投稿するのかというと、自分の意見を言いたいという面もあるが、それだけではない。能代にできるだけ違った物の見方を伝えていきたい、一緒になって勉強していきたい、そのことによって少しでも自分の意見を言えるような能代にしていきたということ。議会傍聴記を書いているのは、議会が監視機能と牽制(けんせい)機能を発揮できているのか、そういうところを少しでも掘り下げて伝えたいと始めた」
 山田孝行さんである。日本IBM勤務を経て、平成7年に帰郷。能代と首都圏で経営コンサルタントをしていた。今では一般的になった選挙の公開討論をいち早く説き、15年の能代では初めての市長選討論会につなげた。
 その山田さんがさる3日、大動脈解離のため滞在先の横浜市で急逝した。72歳。市議会を見続け、地域に提言してきた人を惜しむ。(八)


 

壇蜜さんの説く「あきたこまち再興」

(2月7日)

 昨年夏に田舎館村で田んぼアートを見物すると、映画「風と共に去りぬ」の見詰め合うシーンの下に、「青天(せいてん)の霹靂(へきれき)」の文字がくっきり描かれていた。
 青森県が秋に大々的にデビューさせる米の新品種「青天の霹靂」をPRしていたのだ。食味ランキングでは特A。手に入りにくいだろうけれど、一度食べてみたいと思っていると、能代市内のスーパーでも少量を用意しており、2㌔で1280円は高いが購入した。
 宣伝文句によると、「粒がやや大きめのしっかりした米で、ほどよいツヤとやわらかな白さ。炊き上がりからしばらく保温していても、つぶれることのない適度なかたさがあり、食べごたえがあって、しかも重すぎず、粘りとキレのバランスがいい。上品な甘みの残るあじわい」だそうで、その通りだとすれば、まさに青天の霹靂である。
 実際に食べてみると、イメージが刷り込まれたためか「上品な米」との印象を抱いたが、食味判定の素人は、どれほどの「旨(うま)い」なのかはよく分からず。毎日食べている作り手の顔の見える能代産とあまり差がないようにも感じた。
 なじみの食事処(どころ)の女主人の言う「結局、米ってササニシキとコシヒカリとあきたこまちに行き着くのじゃないのかしら」なのかもしれない。
 去年の米をめぐるあれこれを思いだしたのは、横手市生まれのタレントの檀蜜さんが季刊誌「新・田舎人」の最新刊86号のインタビューに答えた言葉に強く同意するからだ。
 「日本のお米はどれもおいしいのに、なぜ各地で競い合うんだろう」と疑問を呈し、さまざま品種米ある中で消費者の選択は「何となく」だと説明、「だって何となく選んでもどれもおいしく食べられるんですから」と。
 次が心強い。「あきたこまち」の強みは30年続いてきたブランド力だとし、「最近は新しい品種のお米がたくさん出てきていますが、それらの品種改良のもとになったお米なので〝元祖〟や〝母体〟としてのブランド力は今後も大事にしてほしい。その歴史や実績は、新しいライバルたちには塗り替えられない点ですから」。
 「あきたこまち」再興の年にしたい。             (八)


 

偶然の再会に「ばばば」「ぼぼぼ」

(2月4日)

 岩手県大船渡市を舞台にしたNHKのドラマ「恋の三陸 列車コンで行こう」が27日から始まる。先月会見が報じられた主演の松下奈緒さんは、方言に挑戦した感想の中で、驚くことを意味する「ばばば」を「こんなにもよく使うんだ。すごく面白いなと思いました」と語っていた。
 3年前の連続テレビ小説「あまちゃん」ではヒロインの天野アキ(能年玲奈)がビックリしたりする場面で「じぇじぇじぇ」と叫んで、それが流行語にもなったので、三陸地方の感嘆詞の代表が「じぇじぇじぇ」と思っていたが、どうやら違うようだ。
 大船渡の隣の陸前高田市では特産品を詰め込んだ贈り物の「ばばば便」を売り込んでおり、「ばばば」は岩手の南三陸、「じぇじぇじぇ」は久慈市など北三陸らしい。
 そうしたら、どこかの新聞に盛岡市などではたまげた場合や久しぶりの再会を喜ぶ場面では「じゃじゃじゃ」を使うと紹介していた。盛岡は「じゃじゃ麺」が有名だから、「じぇ」や「ば」ではなく「じゃ」なのかと勝手に思ったが、「じゃじゃ麺」は「炸醤麺(ジャージアンミエン)」が由来だそう。
 いずれにしても、方言による驚き表現は地域によって似ているようで微妙に異なることを改めて知った。そして「面白いなあ」と感じていたところ、わが地域でもっと方言が楽しいと思うシーンに出合った。
 能代市内の居酒屋で「一人飲み」していると、小上がりに50代後半のB氏を含む男性4人。しばらくしてA氏ら別の3人が入ってきた。
 すると、暖簾(のれん)をくぐったA氏は、座っているB氏を見るなり「ばばば、ばばば」、それに気付いたB氏は「ぼぼぼ、ぼぼぼ」。次にA氏は「んにゃんにゃ」、B氏は「や〜や〜」、A氏「お〜お〜」。
 A氏とB氏は同年代で、隣合わせの集落に住んでいるらしい。今年初めての巡り会い。そこで「ばばば」「ぼぼぼ」。新年会の意外な場所での鉢合わせ。なので「んにゃ」「や〜」。それは何とうれしいことかと「お〜」。
 気の利いた言葉は出なくても、感嘆詞で通じ合える仲間たち。いいなあ。

(八)