今度は「でぶやづ」と「ごさらし」

(5月29日)

 記者会見での壊れたレコードのような「精査します」の繰り返し、「第三者の厳しい目で」のオンパレード、調査結果の「一日も早く」の連発が火に油を注ぎ、舛添要一東京都知事の「カネの疑惑」報道は一向に収まる気配がない。
 日本の首都の顔としてふさわしいのか、にまで騒動は広がって、この能代山本でもあちこちで話題に上る。そこで、秋田弁のののしり言葉が出てくる。
 小欄が「ち(つ)らつけね=厚かましい」などを載せたところ、読者の70代女性から「うしゃらしぐね=薄愛らしくない=嫌だ、気持ち悪い」を自分だったら使うと電話があり、先週紹介。その際、舛添サンのその後の記者会見を見て、「今度はどんな罵詈雑言を浴びせただろうか」と問い掛けた。
 すると、彼女は本紙記者に「でぶやづ」を伝言した。記者も当方も「でぶ=肥えている人」は知っており、また、「どぶでやづ=ずるい奴」は使うけれど、「でぶやづ」は初めて聞く。
 調べると、工藤泰二著「読む方言辞典─能代山本編」には確かに載っていた。「でぶやづ=大分奴。ひどい・途方もない・大それたなどの意」とある。さらに、琴丘町郷土史研究会の「琴丘の方言」から引いて、「とんでもない理不尽なこと。または、無茶な意。うんと多いことを非難する気持ち」を示している。
 さらに、県教委の「秋田のことば」では、「でんぶやんじんだ=乱暴だ、無茶だ」がある。
 語源は「田夫野人」で、「してはならないことを無理やりする者にいう」とあり、能代市で拾った「でんぶやんじんな人だ」(間違っていることでも押し通すような無茶な人だ)を用例として紹介している。
 なるほど、せこい、みみっちい、時に尊大な舛添サンの金銭疑惑にふさわしい方言と思える。
 こちらが思い浮かんだのは、先輩が人を非難する場合によく使う「ごさらし」である。恥ずかしい言動、ぶざまな姿の醜態をさらしていること指す。語源は「業晒し」のよう。
 「でぶやづ」「ごさらし」が方言としてなお残っていることは、この地域にも舛添サン的な人がいるということか。  (八)


舛添サンは「うしゃらしぐね」

(5月22日)

 高額な海外出張費や公用車での別荘通いに続いて、家族との旅行や飲食に政治資金を使用した疑惑で槍(やり)玉に挙がった舛添要一東京都知事について、15日付小欄に「舛添サンを秋田弁で何と呼ぶ?」と書いたところ、その日朝一番に読者の女性から電話が入った。
 「わだしダバ、『うしゃらしぐね』と言うニャ~」。
 「ち(つ)らつけね=厚かましい」を第一に、ほかに「どぶで=ずうずうしい」「どぶすけ=ずるい奴」「じろ=ずるいやつ」「じろすけ=ずる助」「がめ=がめつい人。しみったれ」と言われる可能性があるとしたのだが、方言使いの上手な読者に「うしゃらしぐね、はどう」と問われて、「それもありですね」と答えた。
 小欄では平成17年10月に、中年女性たちが夫の悪口を述べ合ったところ、「うしゃらしぐね」の方言が出た話を載せた。その際、語源を次のように紹介した。

              ◇  ◇  ◇

 「うしゃらしぐねぇ」とは、秋田弁辞典によれば、「薄愛らしくない」説と「薄嫌らしい」説があるらしい。
 「薄愛らしくない」は、「うす」が「情愛・関心・感銘などの気持ちが浅い─の意を表す接頭語」で、それに「愛らしい」の否定と結び付き、「嫌だ・気持ちが悪い・良くない・好きになれない・可愛(かわい)らしくない」などを表す形容詞となったとの説だ。
 「薄嫌らしい」説は「うす、いやらしく、ない」。この場合の「ない」は「甚だしい」の形容詞語尾との捉え方で、「小憎らしい」の意味としている。

              ◇  ◇  ◇


 読者女性の舛添サンを言う「うしゃらしぐね」は、「小憎らしい」ではなく、「嫌だ」だろう。電話の前日、釈明にもならない記者会見の様子を見て、強い憤りを感じたらしい。
 舛添知事はその後も、絵画や乗用車の購入、家賃の政治資金流用など疑惑が次々。20日の記者会見では「べんふり(弁振り)=おしゃべり」な人が説明責任を果たさず、「第三者に見てもらう」を繰り返した。
 「うしゃらしぐね」と叫んだ彼女は、今度はどんな罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせただろうか。方言再発見のために、ぜひ教えてください。(八)


 

 

コメノキを天ぷらにして

(5月19日)

 「ハイ、これが約束のコメノキです」。観桜会で同席した人が、植物の入ったビニール袋を持ってきた。
 2月のとある集まりで雑談中に珍しい食べ物が話題となり、「コメノキって知ってます?」と質問してきた。「コメヌキとも呼ぶらしけど」と付け加え。
 コメノキ─「米は稲」であって、木があるとは思えない。コメヌキ─米を抜いたものは藁。米に関したとしても木も藁も食べるとは聞いたことはないので、「分からない」と返すと、「それがあるのよ。うちの方の山に」という。
 仲間が山から採ってきて、調理したものを「珍味」として振る舞ったそうだ。湯がいて、干して、保存して、戻して料理するとのこと。ゼンマイやワラビ、イニョ(ニオサク)と同様に保存用山菜のようだ。
 その後、再び調理品を頂いたらしく、お裾分けが回ってきた。薄い葉っぱと刻んだ油揚げの入った煮付けだった。茎ではなく葉であり、これまで食べた保存食の山菜とは異なる歯触り。干したダイコン葉とは食感が違い、苦味はなく独特の風味であったが、どんな植物であるのか判然としないので、「うまい」は湧かなかった。
 観桜会の際に再びコメノキを話題にして、実物を見てみたいものだと言ったことを忘れていなかったらしく、取り寄せてくれたらしい。届いたのは3枚1組になった緑濃い若い葉が付いた枝が5本ほど。彼女も採った仲間も依然として正式名は分からないらしい。
 そこで調べると、インターネット上に県内の人が説明していた。
 「ミツバウツギというんですね。若芽を摘んで、おひたしや和(あ)え物、酢の物に。乾燥させて保存して必要な時に煮物にとか。昔はけっこう保存食として、誰でも採っていたらしいのです。一時は採る人が少なくなってたんですが、最近また見直されているというか懐かしい味として採る人が増えてます」。
 米粒のような白い花がいっぱい付くことから「コメノキ」と呼ばれるらしい。
 天ぷらにした。淡い香りにサクッの食感。食材の新発見を与えてくれたことに感謝するとともに、田植えの始まったコメの豊作を願った。(八)


 

舛添サンを秋田弁で何と呼ぶ?

(5月15日)

 去年の10月に元経産相で「初の女性総理」候補と言われた小渕優子代議士に対して、「ちらつけねニャー」と非難した女性は、今回は何という方言で難詰しているだろうか。
 小渕氏をののしったのは、第三者委員会の調査報告を受けた記者会見の言葉と態度。不正な会計も虚偽記載も秘書まかせ、私は何も知らなかったのだから、監督責任はあるけれどそれほど厳しく断ぜられることはない、といった風に見えたかららしい。
 「ち(つ)らつけね」は「面(つら)付けない」「面躾(しつけ)ない」からきたらしく、「厚かましい」のこと。つまり、厚かましく恥ずかしげもなく振る舞える人、常識に欠け面の皮の厚い人を言い表す。
 今回の人は、すぐにも思い出せることを「精査をしたうえで」「調べてから」と言い訳し、その言葉が実は、非や誤りをもっともらしい理屈に変えるためつじつまを合わせることの意味と思わせる態度に出た。13日の釈明会見では、少しは反省の色を見せつつも、自分の責任は棚上げして会計責任者に転嫁したり、納得できる説明ではなくごまかそうとしたりした。
 舛添要一東京都知事である。高額な海外出張費が問題視されたうえ、公用車での別荘通い、政治資金を家族との旅行や飲食に使用した疑惑から、公私混同が追及されている。
 彼女はテレビに向かって、また「ちらつけねニャー」と叫んだか。それとも「どぶでー」「どぶすけ」と毒づいたか。あるいは「じろ」「じろしけ」とつぶやいたか。「がめ」と吠(ほ)えたか。
 「どぶで」は「胴太い」「図太い」が語源のようで、「ずうずうしい」、「どぶすけ」は「ずるい奴」。「じろ」も「ずるいやつ」で、「ずる」の音が変化した形。「じろすけ」は「ずる助」のことだ。
 「がめ」は「がめつい人。しみったれ」。県教委の「秋田のことば」によると、「盗む、ちょろまかすの意を表す動詞『がめる』から生まれた語。他人の金品をかすめ取ろうおいつ魂胆の人間は、貪欲(どんよく)でケチでもある」。
 7年前の厚労大臣時代に、衆院選の応援で二ツ井町にやってきた意気揚々の顔は、「ちらつけね」に変わっていた。(八)



角館は比内地鶏と稲庭うどんの町?

(5月12日)

 みちのくの小京都・仙北市角館に出掛け、首都圏から観光に来ていた夫婦と落ち合った。誰の日頃の行いの悪さによるものか、目当ての枝垂れ桜はとうに散り、天候もぱっとせずだった。
 こうなれば、楽しみは「食」。武家屋敷周辺を散策しながら、食堂を探すと、違和感を覚えた。確かに江戸期から続く建物、風格ある樹木、落ち着いた庭など通り全体の佇(たたず)まいは角館そのものなのだが、「食」に関すれば、ここは大館なのか、湯沢なのか。
 若い人が列を成していた和風の食堂は比内地鶏の親子丼が「売り」。テレビのバラエティーやグルメの番組に紹介されたそうで、全国から外国からの観光客は「並んでも食べたい」らしい。ほかにも元祖や究極を名乗る比内地鶏親子丼の店。
 観光協会は、佐竹北家の城主がカモやキジを狩り料理を楽しんだ歴史を踏まえ、山椒味噌(さんしょうみそ)で調理した「御狩場焼(おかりばやき)」を売り出している。その店でもイベント会場の出店でも御狩場焼は比内地鶏の使用を前面に。主産地は大館市、能代山本でも生産者がいる。角館は聞いたことがないけれど。
 中高年がベンチに座り、順番に名前を呼ばれるのを待っていた店は、幟(のぼり)に稲庭うどんの大文字。その隣の店も。狭い一帯で「稲庭うどん店」は、少なくとも5軒はあった。湯沢市稲庭の有名工場の製品を使っていると宣伝、メーカーの直売店も。
 そして、うどん、地鶏どちらに比重をかけるかは店によって異なるにして、両方使った「親子丼とうどん」のセット、「比内地鶏入りうどん」も人気のようだった。
 観光客にしてみれば、たとえ角館が産地でなくても秋田に来たのだから比内地鶏も稲庭うどんも食べたい、店側はその声に応えて客単価の高いメニューを用意して経営につなげたい、うどんメーカーは商機をつかみたい──そんな図式か。
 約10年ぶりに訪ねた角館は人気スポットとしてさらににぎわい、食事処(どころ)と土産店を変化させたと気付いた。
 それが湯沢の稲庭うどんと県北の比内地鶏でいいのかナア、と思いつつ、結局、われらの注文は「冷やし稲庭うどん」(1050円)であった。(八)



「やったいば」「バガでねが」では…

(5月8日)

 年を重ね、地域や業界の各団体の役員を務めるようになった知人の奥さんが、教えてくれた。夫が酔えばこぼす愚痴が、何とも笑えると。
 ある会議で、夫が「①俺、思うには…」と異議を唱えようとしたり、新たな提案をしようとすると、他の出席者や長老らから「②やったいば」と、そういう話はしなくてもいいと諭されたり、たしなめられるという。
 それに対し彼は「③そんた問題でね」と、話を取り上げないようにする態度に反発して、何か言わねばならないと意気込むが、周囲に今度は「④バガでねが」と吐かれ、いらないことを口出しする馬鹿者に扱われるそうである。そこで意気消沈、後は口ごもってしまうらしい。
 ①俺思うには→②やったいば→③そんた問題でね→④バガでねが──。彼はこの流れが、総会をはじめさまざまな場面であることを、妻に嘆いた。酔っ払いはくどく、その話を何回もするので、奥さんは①から④までをすっかり覚えてしまった。男社会とは、そんなものなのかと呆れながら。
 組織が健全に動くためには、意見を出し合い、それをまとめて実行することが大事。トップのリーダーシップに信頼を置いて任せる場合もあるが、それでも議論は必要である。
 それが、なぜ発言しようとすれば、馬鹿者扱いされるのか。荒立てず穏便に物事を進めたいという雰囲気が組織全体に広がっているとも思われる。
 少数意見を認めない、異論は受け付けないという執行部や議長の傲慢(ごうまん)さもあるのかもしれない。あるいは、質問に満足に答えられない力量の人を上に置いているので、それを露見させたくないのだろうか。
 それとも、会議を長引かせず、さっさと終えて、次に控える懇親会に移りたい気分があるため、とうがった見方もしてみる。
 5月。総会シーズン。彼が再びぼやかないように、奥さんに冷笑されないように、「やったいば」「バガでねが」と待ったをかけず、自由に意見を出し合い、実りあるものとしたい。
 もっとも「会議は踊る、されど進まず」の名言があるように、延々と続く無駄な議論は困るが。(八)



アマドコロは甘野老だった

(5月3日)

 野老を「ところ」と読むと、藍色の市松模様をつなげたデザインが2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムに採用された野老朝雄さんの名字で知った。
 先日、とある店で「食べる?」と鮮やかな緑の茹(ゆ)でた楕円(だえん)形の葉っぱを見せられた。「少しだけ」と言うと、3枚出てきて1枚齧(かじ)ると、よく分からない味だったので、「う〜ん」とうなった。すると、「マヨネーズでも付けてみたら」というので、そうすると、案外に合っていた。
 アマドコロだという。能代市内の知人の農家の裏山にたくさん自生している山菜とのことで、バイタリティーあふれる女性がくれたそうだ。翌日、アマドコロを調べてみると、漢字名は甘野老で、野老さんに甘いが加わっている。「山野に普通なユリ科の多年草」だった。ついでに「野老」を調べると、ヤマイモ科の蔓(つる)性多年草で、通常トコロと呼ぶのはオニドコロのこととも。
 さて、アマドコロは、山菜料理本では「やや日当たりのよい草原状に生える」とあり、「根茎がトコロに似て甘味があるため、この名が付けられた」と説明している。
 添付の写真を見ると、確かに山野に行って見掛ける植物である。要は食する習慣がなければ、採りもしないし、味わうもしない山菜といえようか。春先の10㌢前後の若芽を食べるそうで、料理法は油炒め、酢味噌和(みそあ)え、卵とじ、マヨネーズ和え。天ぷらは「ふっくらしておいしい」らしい。
 今度採ってきて挑戦してみようと思った。ところが、群生している中から間引いて採る、芽生えの時期は毒草のホウチャクソウとよく似ているので注意が必要、とあり素人は無理しないでプロに任せることにする。
 山菜シーズン。黄金週間にやって来る人を歓待するには、やはり飲食。それも旬の山菜である。望郷の念の強い年配者は喜ぶ。ところが、新しいこじゃれた名前の西洋野菜は積極的に食べるのに、田舎の山菜は敬遠したり、手を付けない若い人が少なくない。残念。
 彼・彼女らは概してマヨラー。好むマヨネーズを出して食べてもらおう。「ワラビにマヨ」はだいぶ普及しているから。(八)