はぐらん警報、発令中

(7月31日)

 八峰町峰浜のポンポコ山公園に29日、八峰風力発電所で使う巨大な羽の実物の展示を見学に行くと、むわっとする強烈な暑さに、一瞬くらりとした。6日前に東京で体感した39度と比べると、まだましではあったが、北国もいよいよ酷暑かと感じた。能代市では最高気温が35・9度、今年初の猛暑日。
 ある気象予報士の3月の講演を思い出した。秋田市の平均気温がこの100年で3・2度、40~50年で1・5度上昇、秋田市は南に150~160㌔下がったようなものだと述べ、真夏日も以前は平均15日ぐらいだったのが、今は30日以上になっているという。もっとも真冬日の日数はそれほど変わっていないそうだが。
 その伝でいくと、能代の気象も南下状態で、かつての山形県の酒田市か鶴岡市あたりの気候になっていることなのだろうか。
 能代山本では「暑さ十日(とうか)、寒さ二十日(はつか)」との言い伝えがあった。夏に我慢しなければならない暑さは10日ほど、一方、冬の寒さが本当に厳しいのは20日ぐらいで、それを想定して対策を立てたり、家づくりをするべきという教えだったが、気象予報士の説明からはもはや、夏の暑さの口承は当てはまらないのだ。
 人は災害や特別な出来事がない限り、去年も一昨年も天気のことは忘れがちである。が、近年の能代市を振り返れば、8年前の平成22年は8月に最高気温30度以上の真夏日が計20日、最低気温が25度以上の熱帯夜が8日連続。24年は真夏日が8月18日から9月5日まで連続19日、その年の最高気温は9月17日の35・8度であった。
 してみると、これからが酷暑の本番で、「七夕が過ぎれば涼しくなる」との経験則も実は外れて、厳しい残暑の可能性がある。
 うだる暑さに這這(ほうほう)の体(てい)の小欄に、先輩は「はぐらん、したが」と聞いてきた。「鬼の霍乱」の「かくらん」は「暑気あたり、日射病」の意。それが訛(なま)ったのが「はくらん」で、江戸時代からの言葉。熱中症がやたらと使われるが、「はぐらん」のほうが警戒をより強く促すような気がした。
 能代市は30日に最高気温が36・4度で前日超え。「はぐらん警報」発令中だ。(八)


 

子は宝、「めんちょこ」を大事に

(7月24日)

 幼子はみなかわいい。元気な「ハイハイ」も、頑張って「立っち」も、危なっかしい「よちよち歩き」も応援したくなる。満面の笑顔もプーと怒りん坊も、ちょっぴり泣くのも。
 その姿を見て、少子化の能代山本のお年寄りは「めんけー」とか「めんこい」と言う。より身近にいれば、その存在を特に面倒を見るかのように「めんこ」とかわいがる。
 方言辞典では「可愛(かわい)い子」の意とある。語源は、奈良時代およびそれ以前に使われていた上代語の形容詞「め(愛)ぐし」に由来する「めごい」の語幹をそのまま名詞にしたものとされている。
 一方で、「めんこ」以上に非常にかわいいを表す場合に「さどめんこ」や「めんちょこ」と使う人もいる。「さどめんこ」は県教委の「秋田のことば」によれば、「特別の秘蔵っ子の意で、砂糖(さど)は甘く、甘いゆえに食べてしまいたい、それに匹敵する可愛い子ということである」と説明。
 「めんちょこ」については、「めんこ」と同じ意味とあるものの詳述は見当たらない。ただ、知人が遅い初孫の女児を周りがあきれるほどに「あのしぐさがめんけ~」「笑顔が何とも言えない」とでれでれして語り、決め台詞(ぜりふ)のように「俺のめんちょこ」と発するように、特にお気に入りを表す表現である。
 「めんこ」を幼児語のように「めんちょ」と言い、それに秋田弁の何でも最後に付く「こ」が加わったか。
 能代市が10月に市庁舎内に開設する子育て世代包括支援センターの愛称が、「めんchoco(ちょこ)テラス」に決まった。妊娠期から子育て期を切れ目なく応援する拠点。愛称が採用された末広町の浅理翔さんは「めんちょこ(こども)をてらす(照らす)、お母さん・お父さんの心が晴れるような気持ちになるセンターになれば」との思いを込めたという。
 市が子育て応援で協賛店でサービスが受けられるカード事業、新生児に木製品や絵本を贈る誕生記念事業に「めんchoco」をすでに使っていることを参考にしたという。
 子は宝、地域で大事に育てたい。夏休み、都会の子が父や母の故郷に帰省する季節。「めんちょこ」を「お帰り」と迎える。(八)


 

イシャジャでジュンサイ貝焼ぎ

(7月19日)

 三種町の岩川地区の生まれで今は能代市に住む知人との会話でジュンサイが話題になったところ、彼は「今度、イシャジャ貝焼ぎ、やらねすか。俺準備しますから」と誘ってきた。二つ返事で「オッ、いいなぁ」と承諾すると、後日、場所と時間を指定された。
 一般的には「いさじゃ」と呼ぶ微小の甲殻類を、能代山本を含む八朗湖周辺では訛(なま)ってイシャジャと言う。エビに似た体長3㍉ぐらいで、淡水で獲れるアミの一種。新鮮なうちに漬け込んで発酵させた「塩辛」にする。
 そのままなめてご飯のお供にしたり、貝焼き(鍋物)の調味料に使うほか、「聞き書き・秋田の食事」(農文協刊)では、ごといも(じゃがいも)、ニンジンなどを煮付けたり、白菜漬け・ナスの漬物などにも利用するとある。
 鼻に付く特有の匂いと塩辛さが特徴で、好悪が分かれるが、臭い物好きにはたまらないらしい。
 「わが輩は発酵仮面」を自称する小泉武夫東京農大名誉教授は、著書「くさい食べ物大全」で、「いさじゃ漬け」を「くさい度数★★★★★」と、「失神するほどくさい」の最高度数を付けている。魚醤(ぎょしょう)12種類の中で、タイのナン・プラー、ベトナムのニョク・ナムをしのぐくさい評価である。
 小欄は積極的に好むというわけではない。買ってまで食べるほどではなく、出されれば食す程度なので、10年ぶりぐらいの出合いである。しかし、ジュンサイの入った鍋は、タイとの塩もしくはしょっつる味、地鶏との醤油(しょうゆ)味がほとんどで、「いさじゃ漬け」の貝焼きは初めてなのか記憶にない。
 知人は、当然のように鍋奉行となり、「いさじゃの塩辛」で出汁(だし)を取り、味を調え煮立ったところで火を止めて、地元のジュンサイをどっと入れ、色が変わるやいなや、椀(わん)に装った。
 今はマイルドで強烈な匂いはなく、しょっぱさも強くはなく、どんな味にも同化するジュンサイのほのかな味を殺さず、滑らかな舌触りを運んできた。もっとも同席の中には、「ダメ」とはなから断った人もいたけれど。おいしいのに。
 秋田の伝統食であり八郎潟の食文化を伝えたい遺したい。(八)


 

メロンの季節で思い出す

(7月15日)

 大好物のメロンの季節の到来で、20数年前の「失敗」と11年前の「宿題」を思い出した。
 「失敗」は、皮がネットで果肉がオレンジの夕張メロン。母に北海道に住んでいる甥(おい)から中元として2個入りが届き、早速恭しく仏前に。しばらくして一つくれるというので実家にいそいそ。しかし、熟れ過ぎて果肉はどろどろに。それでもすするように食べた。
 まだ食べ頃の日付のシールが貼られていない時代。どういう状態になれば美味(おい)しいかを教えるチラシが入っていたと思うが、それを忘れて置きっ放しにしていたため高級品が悲惨な状態に。以来、頂き物は頃合いをみて食べる、お裾分けするようにと促したものの、「もったいない世代」はそうもいかなった。
 実母が亡き後も甥は中元を贈ってくるが、夕張メロンでも日持ちするゼリーである。供養のためにとの思いが込められている。
 「宿題」は、7月になると、メロンの種類とその味について質問されるので、小欄でメロンに関する特集・企画を紙面に載せることを「来年の宿題」と宣言したこと。だが、いまだ実現せず。というよりやり過ごしてきた。
 先日、能代市内の知り合いが東京都内に住む子どもに送るメロンを何にしたらいいのか迷っていた。東京には最大の生産量を誇る近くの茨城県をはじめ全国の産地から集まったものが、果実店やデパート、スーパーに並ぶからあえて送らなくてもいいのではと言いかけたが、ふるさとの旬を届けたいという親心を思えば、やはり地元産を選ぶべきなのだと思った。
 けれど、メロンの種類は多様でどれが何でどんな味なのかよく分からない。三種町八竜ならやはり「サンキュー」か、高級そうなネット系の「秋田美人」か「甘えんぼ」かと迷ってしまいアドバイスできない。
 誰かメロンソムリエはいないかしら、と思いつつ農産物直売所をめぐると、八竜の「メロディアン」に手書きの「八竜産メロンの品種と特徴」が張られていた。
 初めて知る「ながれ星」「こまちクイーン」を含めて18種類。スマートフォンのカメラに収めて虎の巻に使うことにした。(八)


 

 

ここにきて風力発電への疑問

(7月12日)

 男鹿市船川にオープンした道の駅オガーレと、同市北浦のこの時期人気のスポット雲昌寺を巡ってきた能代の人が、ある驚きを口にした。
 道の駅とアジサイ寺に人があふれていたことかと思いきや、北浦から北へ能代まで風力発電の羽根があちこちで回っていることだった。「あんなにあるの。それも大きいのや小型のクルクル回るのやいろいろ。景色が変わっていた」と。
 男鹿に行ったのは久しぶり。入道崎も水族館も訪ねたけれど、ルートは大潟村を通る県道42号が柱。三種町釜谷─男鹿市宮沢海岸─申川─五里合─北浦の国道101号は10年以上通ったことがなかったという。
 小欄は、五里合周辺の人けのない寂しい漁村と彼方に見える能代山本への海岸が織り成す風景が好きで、男鹿に行った帰りはこのコースを車で走り、風車の光景は見慣れているが、そうでない人は「風車銀座」に映ったのだろうか。
 彼女は、能代市や三種町、八峰町に風力発電がさらに増え、海上にも設置される洋上風力の計画があることにも思いが及んだようで、「海岸の風景はどうなるのかしら」と問い掛けてきた。
 7年前の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、「原発はいずれやめるべき」と脱原発とその代替となる再生可能エネルギーの普及拡大には賛意を示してきたという。県内で太陽光、風力、木質バイオマス、地熱による発電が進み、能代山本に風車が次々と設置され、それで地域が少しでも活気づけば、それはそれで喜ばしいとも思っていたそうだ。
 だが、男鹿の五里合や申川周辺で間近に見た風車の群れと連なりに、違和感を覚えたのだった。
 今後進む陸上、海上の風車の設置計画。脱原発と再生エネルギーの拡大を背景にして、ふるさとの自然風景が今後どう変容するかはまだイメージできていないようだが、どことなく疑問や不安が浮かんでくるのに、県や市が風力発電に前のめりのような感じがするのが、何だか釈然としないという。
 彼女のような人がここにきて増えている。少し立ち止まる時期かもしれない。 (八)


 

本田選手の「きよきよしい」から

(7月7日)

 サッカー日本代表の本田圭佑選手が、漢字の読み間違えを潔く認め、好感をもって受け止められているとのニュースがあった。
 本田選手はベルギー戦の敗退後、3日放送のテレビのインタビューで、今の心境を「きよきよしい」と表現した。これに対しインターネット上で「すがすがしい、の間違えではないのか」と指摘され、「清清しい」を「きよきよ」と言った誤りに気付き、素早く翌日に自身のツイッターに「お恥ずかしい。漢字が苦手で。もうしっかり覚えました」と短文を書き込んだという。
 人は誰しも漢字の読み違えがある。
 小欄は物事が順調に運ぶさまを言い表す「順風満帆」を「じゅんぷうまんぽ」と読み使っていた。しかし、記者の先輩が「じゅんぷうまんぱん」と言ったのを聞いて、辞書を調べて誤りを知った。
 一方で、厚地で丈夫な織物でバッグにも使われる「帆布」を「ほふ」だとばかり思っていたが、後に「はんぷ」あるいは「ほぬの」と読むと分かった。覚えたふりをして使っていれば赤恥をかいていたのだ。
 友人は仲間が包み隠しなく生々しく語ったことを「あかはだかはだか」と言って、周りをきょとんとさせた。「赤裸々=せきらら」を勘違いしたのか、笑いを取るためなのか。
 今はどうかしらないが、能代山本の政治家でもあった。議場で「追加予算」を「ついか」でなく「おいか」と読んだ昭和の県議、事業がそうは簡単に進まないことを表現した際に「いっちょういちゆう」、一朝一夕の夕を「せき」と読めずに質問した平成の県議。
 国会議員では麻生太郎氏が首相時代に「未曽有(みぞう)」を「みぞうゆう」、「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」と話したのが有名だが、秋田県の衆議院議員も何年か前の事業仕分けの場で「白砂青松」を「はくしゃせいしょう」ではなく、「しろすなあおまつ」と言って失笑を買った。
 政治家の場合、大向こうをうならすように言葉を使うが、それが読み違えては漢字の読解力どころか資質を問われる。かといって資料や質問書の漢字にルビばかり振っては、自分の言葉でないことを露呈する。新聞記者もだけれど。(八)


 

「さび」は先週、今は「ぬぎ」

(7月3日)

 1週間ほど前、後輩との話題は「さび」、標準語で言うところの「寒い」であった。
 最高気温が30度以上の真夏日、35度以上の猛暑日の報告が全国各地から伝わってくるのに、能代は最高で20度、最低は13度という日があり、また風も吹いたこともあって、街で出会う男性は「さびー」、女性は「さびにゃ~」と漏らしていた。
 後輩によると、同期生が40年ぶりかで故郷に戻って暮らし始めたそうだが、「能代って、こんなに寒いのか」と質問してきたという。ヒートアイランド化した大都市圏に住んでいた人であれば、余計に寒さが身に染みたのかもしれない。
 予想に反して、能代山本地方は5月が温かかったのに、帰郷した6月は過ごしやすいはずが冷え込んでしまったのだ。
 ところが、7月に入って一転、青空が広がり、日差しは強く、最高気温は30度超え。友人に「ぬぎ」と話すと、エアコンの効いた事務所から出た彼は相づちを打って、「んにゃ、ぬぎごと」と発した。
 「ぬぎ」あるいは「のぎ」は「温(ぬく)い」が訛(なま)った方言で、「暖かい」を表すが、秋田では「暑い」こと言う場合に多く使う。
 友人と妻は1日、男鹿市に小旅行、オープンした道の駅「オガーレ」と、あじさい寺として近年、人気急上昇で今が満開の雲昌寺を訪ねてきたが、前日の雨模様から打って変わっての暑い晴天、それにあふれる人の波にのまれ、「ぬぎ」を過剰に感じたのかもしれない。
 ついでに言うと、彼の従業員も夫婦でオガーレと雲昌寺に行ったとのこと。同じ行動パターンで同じく暑さの洗礼を受けたのだ。
 2日午後0時50分、スマートフォンが震えた。見ると、防災速報に能代市の熱中症情報が入っていた。「熱中症の危険性が高まっています。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動してください。運動は原則中止し、乳幼児や高齢の方は水分補給しましょう」と。
 けれど、屋外に軽スポーツを楽しむ中高年がいた。涼しいとはいえない室内にひっそりとするお年寄りがいた。
 首都圏から移住した人と違って、北国の定住者はまだ暑さに慣れていない。体調管理を万全にだ。(八)