来春に向けてこちょがす

(8月30日)

 2カ月ほど前、ある小さな団体のトップに就いた後輩の激励を名目にした3人の小宴。話が佳境に入って地域の将来像に及ぶと、彼の説得力のある提言に対して、彼の仲間が「いい話だ。いけるのでは」と話し、その実行のために「議員選挙に出たらどうか」とあおった。
 すると、彼は「こちょがす、なよ」と苦笑した。「こちょがす」は「くすぐる」の秋田弁。指で幼児の脇を「こちょこちょ」のくすぐって笑わせる様(さま)のことだが、仲間から「もちゃげる=持ち上げられる」ことで、こそばゆい感じとなり、「こちょぐちぇ」くなったのだ。
 だからといって、彼が選挙に出ることはないだろう。仕事を抱え多忙であること、年齢的に「打って出る」には遅いことなどで、その気はないと見える。むしろ裏方に回って誰かを応援するかもしれない。
 先日、知人がある現職議員を激励したと話した。そろそろ勇退してもいい年頃だが、地域代表としての有力な後継者がいないことやまだ若々しいので、来年に向けて頑張るよう元気づけたらしいが、議員の側は「こちょがす」ように「持ちゃげられて」、どのような気分となっただろうか。
 ある議員が、有力な支援者である友人から「落ちる~」と言われ、居合わせた人がその友人に対して「おじょかす、な」といさめたそうだ。
 議員は議会内外で地域の問題点を探り、相談に乗り、さまざまな場で発言しており、その結果、当選を重ねてきたが、友人にしてみれば物足りなさを感じ、次の選挙に不安を抱いているのかもしれない。そこで、「このままではだめだ」と恐がらせるために「おじょ=脅し」をかけたのだ。
 来春は能代山本の統一地方選で、能代市と三種町、八峰町の首長と議員選挙がある。そろりそろりとあちこちで選挙が話題に。そこから「こちょがす」も「持ちゃげる」も「おじょかす」も出てきたが、今のところ去就や決意の表明は聞こえてこない。秋から次第に騒がしくなるか。(八)