総選挙に「地方の視点」を

―政権公約・有権者の「真剣」勝負

(2009.8.18)

 いよいよ総選挙である。
 郵政民営化を問うて小泉首相が解散・総選挙に打って自民党が歴史的勝利をしてから、衆議院議員のほぼ任期満了に近い4年を経ての今日18日の公示。この間、首相は3人交代したが、その政権の信を問うことのないまま、ようやくの総選挙となった。 
 産業、雇用、福祉に医療、社会保障、教育、外交・安全保障などさまざまな分野に問題は山積、中には先送りが続いている課題も多い。私たちの暮らしはどうなっていくのか、日本に未来はあるのかと不安は一段と募り、課題解決のできない政治に不満が高まっている。
 日本の政治の明日を誰に託すのか―。自民・公明の与党政権が続くのか、民主党を中心とした政権交代となるのか。今回の総選挙は「政権選択」を懸けた重要な選挙である。
 政権選択の前提としてマニフェスト(政権公約)がある。各政党はそのマニフェストを前面に押し出し、自らの主張の正しさを強調し、一方で対立政党の政策に問題点があることを指摘している。かつて、公約は総花的であり、どれだけ実現するのか不透明なものであり、守られなくても実現しなくても有権者に一種のあきらめもあったが、今は項目によっては「いつまでにどれだけ」という目標値も示され、有権者もまた政権公約に向き合うようになっているから、政党にとってはマニフェストの戦いの時代でもある。
 この政権公約について、明るい選挙推進協会会長の佐々木毅・学習院大学教授(仙北郡美郷町出身)は、同協会の会報「私たちの広場」の特集号の巻頭言でこう述べている。
 「有権者は、精神力を集中し眼光紙背に徹してその意のあるところを解読して、選挙に赴く覚悟が求められます。正に今度の総選挙は政治家同士だけではなく、政党と有権者の『真剣』勝負の場にならなければなりません。政策を通して政治を立て直すこと、これこそが今度の総選挙に課せられた最大の課題です」
 その政権公約の「意のあるところ」を有権者がどう解読するかであるが、日本の将来を担う若者であれば若者の、先行きに不安な高齢者であれば高齢者の、そして中小企業経営者、医療従事者、非正規雇用者・失業者などそれぞれが今ある生活や思想に立脚しながら、どれだけ共感を受けるかにかかるだろう。
 地方再生・地域活性化・地方分権・地域主権も公約に掲げられている。しかし、地方交付税や補助金、国の権限委譲、道州制など制度的なものが叫ばれており、疲弊する地方の立て直しや、少子高齢化で維持さえ難しくなっている集落の明日をどうするかなどについてはあまり見えてこない。
 「地方はどう永続すべきなのか」―そのことも争点にすべきである。秋田2区の立候補予定者は大いに論ずるべきであり、有権者もわが地方の姿から日本を照射する「地方の視点」を持ちたいものだ。


 

合併はどうだったか語れ

―近づく能代山本の地域選挙

(2010.4.6)

 わがまちの明日を託して首長と議員を選ぶ「おらホの選挙」が迫ってきた。11日告示は能代市、13日は八峰町、そして1カ月後の5月11日が三種町。一票を投ずるために何に重きを置くのかは、訴える夢と政策、実績あるいは期待度、実行力と提案力、信条や人格など有権者一人ひとりによって異なるが、「合併への思い」も含めたい。
 11年前に始まった「平成の大合併」は、先月31日をもって幕を降ろした。新合併特例法で規定した推進策の期限となり、打ち切りとなったためで、平成11年3月の市町村数3232は現在1227に。秋田県は69が25に。
 能代山本は8市町村による大同合併が模索されたが、藤里町がいち早く単独立町を選択。その後7市町村が合併のテーブルに着いたものの、「白神市名称騒動」などにより破綻(はたん)し、能代市と二ツ井町、山本郡南部の琴丘、山本、八竜の3町、郡北部の八森町と峰浜村が小規模合併することを決め、4年前の3月にそれぞれ新・能代市、三種町、八峰町としてスタート、能代山本は4市町構成となった。
 一部には、能代山本が一圏域として消防など広域行政が進んでいることから、再度の合併、つまり1市体制とすべきとの声もあるが、国の地方制度調査会が昨年6月に大合併打ち切りを答申、鳩山政権もその方針を踏襲したことから、能代山本も短中期的には再合併の道は難しいといえるだろう。少なくとも今後10年は、現行の市町の枠組みで進むとみられる。
 とすれば、バラ色にも見え、喧伝(けんでん)もされた合併が果たしてどうだったかの検証が必要であり、それを踏まえた政策の展開が求められる。
 全国的には、合併を選択せず単独の道を進んでいる小さな村・町が輝いている。少子高齢化、限界集落の問題を抱えていながら、議会を含めた大胆な行政改革、行政の目の行き届いたサービス、地域の資源を見直した観光や産業の開発、お年寄りの能力の活用、住民コミュニティーの再発掘など知恵と行動力を活(い)かした施策を進め、持続可能な自治体を確立しようとしている。
 対して、合併した自治体、とりわけ圏域まるごとの大合併自治体の住民からは「こんなはずでは…」の声が聞こえる。役所を分庁方式にしたものの、本庁のある地域はまだしも、周辺地域が次第に寂れているからである。旧町村の単位の地域振興策を行っても追いつかない現状もみられる。期待された等しいサービスも、財政難に加えて行政の効率化や合理化によって逆に低下するケースがある。旧市町村の垣根を越えた住民の融和が叫ばれたが、地域の衰退感が住民の不安・不満を招き、対抗意識による強い主張が出てくることもある。
 一方で、合併をしなければ早晩、財政は破綻していたとの指摘があり、必要な教育文化、福祉の設備投資ができたのは合併があったればこそだったともいえる。職員減・人件費減や事務事業の見直し効率化なども合併によって進んだ。
 能代山本の合併が成功であったか失敗であったかの結論を出すには早計であろう。しかし、反省点はなかったのか、今後改善すべき事柄はないのかなどを語る必要がある。ともに住んで生きていくのであれば、合併をよりよきものにするために道を示すことが大事だ。そこから地域の明日が見えてくる「おらホの選挙」に出る人にそれを求めたい。住民はそれを聞こう。


 

今こそ地域づくりの再考を

―震災下、県議選あす告示

(2011.3.31)

 県議選があす1日、告示される。未曽有の被害をもたらした東日本大震災の復旧復興の見通しがつかない中で、選挙運動の自粛ムードが高まり、従来と様変わりした静かな選挙戦となりそうだが、立候補者には内容が濃く有権者の心に触れる訴えを求めたい。同時に、住民は「地域づくり」を再考したい。
 能代市山本郡選挙区の立候補予定者は定数4に対し現職3人、前職1人、新人3人の計7人の見込み。昨年末から年明けにそれぞれ政策を掲げて立候補を表明した。経済雇用、少子高齢化、農林水産業、行財政、教育、福祉医療など多岐にわたる政策には、それぞれの経験、信念、夢を基に、秋田の厳しい現状を打破したいの思いが込められている。
 選挙戦では、その訴えが言葉だけの表層ではなく、具体性を伴うべきである。特に、大震災の現実を踏まえることが、必要と考える。
 能代山本は、直接的な被害はなかったが、大震災と日々刻々と変わるその後の状況は、今われわれがなすべきこと、教訓としてしっかり学び備えておくべきことの教えにあふれている。それが、「安全安心の地域づくり」や「持続可能なまちづくり」といったわが地域の命題につながるからである。
 28年前の昭和58年5月、能代山本はマグニチュード7.7の日本海中部地震と津波の直撃を受け、多くの犠牲者と甚大な被害を出した。さかのぼること47年の米代川水害、31年と24年の能代大火。度重なる災害に見舞われたが、住民と行政の強い意志の下で復興してきた。その過程で防災意識が高まり、都市整備など社会基盤も構築されてきた。しかし、今回の大震災は、能代山本の災害史からは想像のつかない事態である。
 能代活断層があり将来的な大地震の懸念もあるのだから、改めて地震・津波対策、防災対策はどうあるべきかを候補者が選挙で訴えることは、必然である。大震災の被災地の三陸沿岸の状況から見える高齢者や病人など弱者への対応や地域コミュニティーの助け合いと問題点は、過疎・限界集落を抱え、さらに少子高齢化が進行する能代山本にとって看過できないことであり、地域の課題としてとらえ語ってほしい。
 大震災は、産業立地の問題点を浮き彫りにした。大動脈の高速道・新幹線が早くに開通した東北の太平洋岸県に多くの工場が進出立地し、それらが壊滅的な被害を受けたことで日本の経済界全体が苦難の道を歩むことになったが、秋田県の産業立地が低い水準であることをも示した。リスク分散で国土の、産業の均衡あるバランスを求めなければならないのか、秋田は安全で安定的な食料基地として維持していくべきなのか、そうした「問い」が生まれている今、それを念頭に置いた産業政策の訴えも聞きたい。
 宮城、岩手、福島、青森が震災で苦境にあるなかで、被害のほとんどなかった秋田と山形が、東北再興の先頭を切る必要があるとの指摘も出ている。「がんばろう東北」と奮い立たつために秋田県は、能代山本は何ができるのか。被災地支援や避難者の受け入れはもちろん、中長期的な視野に立った地域づくり・産業振興を具体的にするべきである。そのためには秋田の政治力の結集と政治家の知恵と実行が不可欠であり、そのことにも立候補予定者の訴えが必要であろう。
 3・11東日本大震災。被災地に心を寄せる毎日の住民は、その中に始まる県議選をしっかり見据えたい。自粛ムードで盛り上がらないと言われているが、候補者が熱い訴えをするならば、熱い思いで投票に動きたい。