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2020.記者メモ

2019.記者メモ

 

「錦島三太夫」って誰

 

 昭和10年1月、東京・帝国ホテル演芸場の初春興行は、新派役者で後の人間国宝、花柳章太郎演じる「錦島三太夫」が観客の喝采を浴びた。無性に泣かせる芝居としてその後、浅草のエノケン一座も上演。戦後はテレビドラマにもなった。
 主人公の錦島は、能代市出身の力士「大蛇潟」の年寄り名。14歳で上京して18歳で関取になり、入幕後は関脇まで昇り詰めたが、足を痛めて引退。錦島部屋の親方として育てた力士には、藤里町出身の大関「能代潟」がいる。厳しいが温情あふれる親方だった錦島の最期を舞台にした。
 俳人・菅裸馬の随想「錦島三太夫の死」が芝居の原作になった。裸馬の本名は菅礼之助。秋田市土崎出身で、同和鉱業会長や東京電力会長、経団連評議会議長を歴任した財界人かつ文化人である。角界とのつながりも深い。
 随想を読むと、大正、昭和初期の角界争議で消滅の危機に瀕(ひん)した相撲協会を救ったのは錦島その人だったことが分かる。錦島の精神を受け継いだ能代潟が横綱玉錦に土を付けた生涯唯一の金星は、病床に臥(ふ)した親方の死出に捧(ささ)げた大一番であった。その場面を描く筆致は実にドラマチックだ。
 戦前、能代山本出身の2人の力士がいたとは知っていた。しかし、本紙に投稿をいただいた簗瀬均さん(湯沢市)、菅の孫の長瀬達郎さん(東京都)に教えていただくまでは、郷土の誇りというべき力士のことをよく知らないままでいた。郷土史に学ぶ大切さを痛感した。
 本紙の創刊者で俳人の島田五空とも親交があった菅は、能代にラジオ放送の普及がまだだった当時、「角力取の親分」と呼ぶ五空からの依頼で本紙の相撲記者となり、能代潟らの取り組みをせっせと打電していた。そのことにも少々驚いてしまった

(2021.12.31 伊藤 仁)


 

少しずつ日常に

 

 「そろそろそちらに伺ってもよろしいでしょうか」。首都圏でも新型コロナウイルスの感染者が減少した11月、テレビ番組情報を提供する東京都内の2社の担当者から相次いで電話があった。従来は年1、2回、定期訪問を受けていたが、コロナ禍で電話やメールのやりとりとなっていた。
 昨年も何度か打診されたものの、こちらは県境を越えた不要不急の往来は自粛していた時期であり、控えてもらう旨を伝えると、「秋田は厳しいですね」と言われもした。
 ワクチン接種も進み感染状況が全国的に落ち着いていたため、今回は訪問を了承し、11月下旬に両社の担当者が来社、久々に対面であれこれ説明を受け、情報交換した。県内の他の新聞社も訪れるが、山形県の会社にはこのたびも訪問を断られたという。
 両社のコロナ対策を聞いてみると、「3密」回避で在宅勤務を導入しているが、どうしても相手先や社内でのコミュニケーションが図りづらく、部署内の情報伝達も万全とはいかないなどの課題を挙げていた。自宅で仕事となれば、気持ちの切り替えが難しいとも。
 対面で話していると、マスク姿ながら、互いの表情から気持ちも感じ取れ、電話やメールでは伝わり切れない「対話」の大切さを再認識させられた。
 新たな変異ウイルスのオミクロン株で、コロナ感染者は徐々に増えているとはいえ、正月を古里で過ごそうという帰省者も多くなり、昨年よりは日常が戻りつつある年の暮れだ。
 高校バスケットボールの能代カップ、日吉神社の嫁見まつり、港まつり能代の花火など、来年はイベントを復活する決定も続々。牛歩の丑年から勢いのある寅年にリレーされる。「できる」を前提に前進しよう。


(2021.12.30 池端 雅彦)


 

最適な見出しを

 

 新聞を開くと、真っ先に目に入って来る見出しと写真。見出しを考え、写真を選び、紙面をレイアウトするのが整理デスクの仕事である。
 読者を引き付け、記事へと誘う見出しは、少ない文字数に情報を凝縮し、一目見ただけで内容が伝わらなければならない。右側の主見出しは8字前後、左の脇見出しは10字程度で、要約している。
 読者が熟考するようでは駄目。分かりやすい見出しをつけるため、行間を読み、自分が体験したかのように場面を想像する。中には、どこをどう探しても響いてこない原稿もある。その時は記事と写真を何度も見返しながら粘る。
 何とか、ひねり出したはいいが、凡俗な言葉選びに陥ることも多々。そこで、なるべく使用しないよう意識している言葉が幾つかある。
 その一つが「多彩」。例えば芸能発表会の記事だと「多彩な演目で魅了」、作品展では「自慢の力作 多彩に」、運動会だとすれば「多彩な種目で競い合う」といった具合に汎用(はんよう)性に優れ、さまざまな記事に応用が利く。間違いではないので、紙面に登場しても何ら問題はない。とはいえ、「果たして、これで読者の目に留まるのか」「もっと具体的に表現しよう」と、あえて避けている。
 また、注意が必要な言葉に「熱戦」や「白熱」がある。「熱戦を展開」「白熱の試合」などと、スポーツ記事で頻繁に見掛けるが、これらも非常に使い勝手がいい。しかし安易にチョイスすると、同じ日の紙面に多発、最終校正の段階で慌てて修正するという失敗を招く。
 ニュースの本質を捉え、正確かつ簡潔な言葉で、最適な見出しを読者に。時にセンス不足を痛感するも、日々そう心掛けて原稿と向き合っている。


(2021.12.29 工藤 剛起)


 

初心を忘れずに

 

 この春まで取材することの多かった町の課長が、新年度から同じ職場で再雇用になった。後日、その「再就職ポスト」として窓口業務に就いていることを知り、少なからず驚かされた。
 国機関がどうなのかは知識不足だが、県市町村の役場庁舎はたいてい部課長クラスは奥まった所にデスクを構える。窓口で来客や電話に対応するのは新人か、若い職員が中心。来客対応を学ぶのも、多くの職種において新人期の貴重な業務訓練だと受け止めていたので、あまり不自然だとは感じていなかった。
 しかしこの元課長は「総合相談窓口」の看板を掲げてカウンターに就く。定年退職後の再雇用は珍しくないが、多くは陰で全体を支えるというイメージがある。聞くと、「前々からこういう役割(業務全般に通じている職員が一手に来庁者に対応すること)が必要だと感じていた」のだそう。窓口対応は多種多様なニーズがあるゆえに業務が煩雑になると想像できるが、迅速な町民サービスのために蓄積してきた知識を生かそうという考えや姿勢は、見習わねばと思った。
 「初心に帰る──」と言葉にするだけで自己満足しそうなところだが、実際はどれだけ初心を忘れずに日々仕事ができているか、惰性で毎日を過ごしていないか等々の思いが交錯し、何かたしなめられたようで気恥ずかしさも感じた次第。
 厚生労働省は先日、2040年に65歳を迎える人のうち、女性の2割が100歳まで、男性の4割が90歳まで生きるという推計を発表している。長寿が当たり前の時代になり、90歳、100歳まで生きるとしたら、40代、50代、あるいは60代になっても「初心に帰る」気持ちを常に持っていなければならないと教えられた気分だった。


(2021.12.28 岡本 泰)


 

 

おらほの農業ショー

 

 9年ぶりに能代市で開かれた県種苗交換会。見学だけのつもりが、フルーツ王国・横手のお姉さんのセールストークに乗って、シャインマスカット1房3千円を奮発。一緒に筋子も勧められたが、生ものゆえに遠慮を申し上げ、所期の目的である「おらほの農機展示会」へと足を向けた。
 新型コロナウイルス感染が収束せず、イベント企画は軒並み中止、中止、中止。「第5波」に見舞われ、ともすれば中止が当然とばかり思考停止に陥りそうな中で、いかにすれば開催できるかを考えた事業の筆頭ではなかったかと思う。
 個別に見れば中止された定番の協賛行事はある。その一つが農業機械化ショー。メーカー一押しの、大型の、最新の、格好のいい、非常に値の張る、ぴかぴかの、農業機械がずらりと並び、大勢のプロ農家を集める催しだ。「おらほの」と冠した企画に興味を抱いた。
 展示されていた農業機械は、「働く車」もとい「さっきまで働いていた車」が、畑から、田んぼから集まってきたかのようで、ちょっとさびているのも乙であり、わくわくしながら、でも何かが足りない気がしたまま、ぐるっと回って出口に差し掛かる。目に入った看板は出展者を紹介していた。そうか、その人たちに会いたかったのだ。
 美術展のギャラリートークよろしく、出展した農家が農機の使い方や、その農機が活躍する作目、作業、自身の経営をとくとくと語ってくれたなら。その農機を使って作業している様子を撮影した写真パネルも一緒に展示されたなら。地域の農業を知り、その最前線に立つ農家と、その仕事が「かっこいい」ことを知る「おらほの農業ショー」を見せてもらえたら、地元の農産物は一層いとおしくなる。と、思うのですが。いかがでしょう。


(2021.12.27 渡部 祐木子)


 

洋上風力入札の驚き

 

 国が洋上風力発電の促進区域に指定し公募した「能代市・三種町・男鹿市沖」など三つの一般海域で、三菱商事の共同事業体が発電事業を行うことが24日に決まった。国内外の大手入れ乱れての入札で、一つの事業体が総取りすることは大方の関係者も予想できなかった。提示した電力の供給価格も想定外の安さ。競合を圧倒する結果に、次の公募に挑む事業者は戦略の立て直しを迫られそうだ。
 「次元が違い過ぎる」。3市町沖の公募に参加した事業者は三菱との評価点の違いを見せ付けられ、「高校野球にメジャーリーグが乗り込んだようなもの」と脱帽するしかなかった。
 三菱は満点240点のうち208点を獲得。落選した4事業者(127~160点)に大差をつけた。中でも関係者を驚かせたのが電力の供給価格。1㌗時13・26円で上限の29円を大幅に下回る。陸上風車より安い価格だ。評価点から計算すると、他の事業者は17円、18円、22円、27円となり、大きな開きがあったことが分かる。ある関係者は「コスト削減にも限界がある。どんなウルトラCを使ったのか」と舌を巻く。
 ラウンド1と呼ばれる今回の公募が終わり、次は八峰町・能代市沖などで事業者を選ぶラウンド2に舞台が移る。同沖の入札にも三菱が応札するとみられるが、ある事業者は「勝ち目のない相手に時間も金もかけられない」と参加見送りを示唆。別の事業者も「相手が大き過ぎてかなわない。ラウンド2は誰も寄りつかないのでは」と言う。
 三菱の事業体の協力企業には米アマゾン・ドット・コムも名を連ねる。三菱が発電し、アマゾンが電気を消費してサービスを提供する。日本が変わって行く中、能代山本地域も変化の波を見極めなければならない。


(2021.12.26 若狭 基)


 

人手不足どう対処

 

 仕事を探す人(求職者)1人につき何件の仕事(求人)があるかを表す「有効求人倍率」。ハローワーク能代管内の10月末時点の有効求人倍率は2・01倍で、6月以降2倍を超える状況が続く。
 2倍ということは企業側にすれば、1件求人を出しても見込める応募は0・5人。求人は2028件と新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻ったものの、求職者は地域の人口減などもあり、半分の1008人しかいないのが現状だ。
 働きたい人にとっては仕事を選びやすい環境に見えるが、実際はそう単純ではない。例えば10月は建築関係技術者で87件、看護師・保健師で98件、社会福祉専門職で59件の求人が出ていたが、これらの仕事を求めたのは順に7人、34人、16人。いずれも資格が要る仕事であり、長年人材確保のネックにもなっている。
 逆に事務は求職者169人と人気だが、求人は81件止まり。また製造・加工は、パートが倍率0・50倍と「狭き門」なのに対し、それ以外の一般は3・86倍と真逆の状態だ。こうした求人側と求職者側の意向の不一致から就職が進まず、人材不足も解消されないというのが、能代の労働市場の基本構造だと理解している。
 能代の求人倍率を押し上げたイオンタウン能代はまだまだ人手が足りず、11月の開業後も3桁台の募集を続けている。来年以降は能代に進出する国内製材最大手・中国木材の採用活動も本格化する。そうなった時、現状でも深刻な能代の人手不足はどんなレベルまで進むのか、最悪事業の縮小や廃止に向かう会社も出始めるのではないか──。最近そんなことを考えては、暗たんたる気持ちになっている。
 来年は能代山本3市町で首長選挙。地域の人手不足に行政はどう対処していくのか、姿勢を示してほしい。

(2021.12.25 平川 貢)


 

マスターズ甲子園

 

 現場で見てみたかったと思う、夢のあるイベントだった。元高校球児が阪神甲子園球場で試合を行う「マスターズ甲子園」に今月4日、能代高OBが初出場。御所実OB(奈良)に敗れはしたものの、元プロ野球阪急で通算284勝を挙げた山田久志さん(73)が先発し、サブマリン投法で打者1人を空振り三振に仕留めた。元オリックスの高橋功一さん(50)も4回から登板し、1イニングをぴしゃりと抑えた。
 チームの代表を務めた伊藤康夫さん(55)によると、レジェンドである山田さんの登板は大会事務局や相手チームとの申し合わせの上、1球だけの予定だった。「1球目(ボール)でバッターが動かず、またバットを構えた。そして山田さんもまた振りかぶった。『どうなるのかな』と思って見ていた。よもや、よもやの展開でした」と伊藤さん。御所実のバッターが大会最高齢の86歳だったことも相まって、大会のハイライトになった。
 冬晴れの甲子園球場は「神々しく輝いて見えた」と言うのは、途中出場した相原公英さん(50)。「グラウンドの土はふわふわで、いい感触だった。あの舞台に、現役の後輩たちもぜひ行ってほしい」と、平成4年夏以来遠ざかる母校の甲子園出場に期待を寄せる。
 その伊藤さん、相原さんもそれぞれのチームで活躍する北羽新報社主催の400歳野球大会は今夏、拡大傾向にあった新型コロナウイルス感染防止のため2年連続で延期となり、再開を待ちわびる実年選手たちの声も聞いた。選手も観客も、制限なくスポーツを楽しめる状況が、来年こそ、1日も早く戻ることを願う。そしていつか。地元・能代で山田さんの投球(始球式?)が見てみたい。1球だけでなく、もっと投げてくれるかもしれない。 

(2021.12.24 菊地 健太郎)


 

リーダーの言葉

 

 県政担当になってから、1日の多くの時間を県庁内で過ごしている。議会や会見、会議を取材し、記者室で原稿を書いて写真のデータとともに本社へメールを送る。県庁の敷地内で1日の仕事が完結する日もある。
 能代山本の各所に車を走らせる本社勤務より行動範囲は狭くなったが、歩数は増えた。スマホのアプリで確認すると、本社時代は1日3~5千歩にとどまる日が目立つのに対し、今年は7、8千歩が多く1万歩を超える日もある。
 庁舎間の移動に加え、佐竹知事の「ぶら下がり取材」も歩数増の一因になっている。議会や会議を終えてエレベーターに乗り込むまでの数分間。県庁詰めの記者たちが張り付き、質問を重ねる。率直な物言いを自認する佐竹知事の場合、思わぬ発言が飛び出すことが少なくない。県紙や通信社がすぐさまネットで配信、反響を呼ぶ。各社の“知事番”は気を抜けない。
 「物言う知事」の言葉は、公の場でも物議を醸す。11月の定例会見。衆院選秋田2区で野党候補が勝利、与党候補が比例復活した結果の受け止めを問われ、国へ政策的な要望や提言をする上で「野党のパイプはいらない」と述べた。
 12月県議会で、野党県議がこの発言を問題視。知事は各省庁の中枢と直接折衝する上では、与党系国会議員のパイプこそ必要だと“真意”を説明したが、「発言は行きすぎでは」という県議の指摘は、意に介していないように見えた。
 知事の飾らない人柄に「好感を持つ」という声や、新型コロナウイルス感染防止対策への協力を、自分の言葉で呼び掛ける発信力への評価があるのも確かだが、だからこそ忘れないでほしい。リーダーの言葉の重みは、県民が寄せる信頼や尊敬の上にこそ生まれることを。 

(2021.12.23 川尻 昭吾)


 

母さんたちの漬物

 

 先日、スーパーでカブが安かったので、市販の漬物の素を買って漬けてみた。しかし、何だか酸味がきつくていまひとつ。今度は市販の白だしで漬けたが、やっぱりピンと来ない。産地直売所の“母さん”の味には到底かなわなかった。
 産直の漬物は各店にとって看板商品。「あの人のあの漬物が好き」と、各会員、各商品に固定客が付いているが、その漬物が今、転換期を迎えている。
 食品衛生法の改正で、漬物製造業が今年6月から許可制となり、産直会員も専用の加工場の確保など基準に沿う対応が求められることになった。3年間の猶予があるとはいえ、高齢になった会員が設備投資をしてまで製造を続けるかどうか、各店の課題、漬物ファンの関心事となっている。
 三種町のある産直では60、70代の会員約10人が漬物を販売し、年間500万円以上の売り上げがあるが、専用の加工所を持っている人は一人もいない。年齢を重ね、新たに自前で加工場を構えるのは難しいと考える人が多い。また、店側で加工場を整備したとしても「なかなか新しい会員が入らない中、どれだけ漬物をそろえ、経費をペイできるか不安がある」。
 秋田の食文化を代表する漬物。同産直の役員は「年を取った会員は、これで漬物作りを終えてしまうんだろうな。地域の文化が無くなってしまうのなら寂しい」と打ち明ける。
 1店舗の約10人で500万円以上を売り上げる漬物。能代山本全体、県全体で見れば相当の販売額があり、文化でもあり、産業でもあろう。県農業経済課は「産直の皆さんの声を聞き、支援の在り方を検討しているところ」と言う。市町村は県の動きを見守るだけでいいのか。母さんたちの漬物を残し、味わうため、“あの手この手”を期待したい。 

(2021.12.22 山谷 俊平)


 

「変化」に触れる

 

 「変化」に触れる年だった。
 能代伝統「役七夕」は、柳若組が1年越しの運行を目指し、新型コロナウイルス感染症の動向を注視しながら検討を重ねた。「運行を諦めるのではなく、可能なことを模索したい」「運行そのものに理解を得られるか分からないこそ、徹底した対策が求められる」──。運行を断念する若があったのも事実だ。
 コロナ禍にあって、関係者は「運行人員の確保や財政面は厳しさを増した」と口をそろえた。そのため、通常の城郭灯籠でなくとも、シャチ灯籠や高張ちょうちんのみなど各若が実情に応じた運行を展開した。「格式を保ちながらも、身の丈に合った運行を考える機会を迎えているのではないか」という関係者の言葉が今も胸に残る。
 三種町議会では、懸案だった「任期問題」に解決の見通しが立った。同町は平成18年の旧3町合併時に議員に在任特例を適用したため、任期満了日が6月30日となり、5月に実施されてきた町議選で当選した新人が選挙直後の6月定例議会に臨めない状態が続いていた。
 4年前にも現職の任期を短縮して問題の解決を図ろうとしたが、議論が深まらず、棚上げとなっていた。今年は5月から話し合いを重ね、来年5月31日付で現職が総辞職することで、新たな任期が6月1日から始まるように答えを導き出した。
 議員に話を聞くと、「現状の任期に違和感を抱く町民もいる。問題解決という形で応えなければならない」「議会の〝環境整備〟によって議員の成り手確保にもつなげたい」などと町民と向き合う姿勢、町の将来に対する思いも感じられた。
 変改するには、必ず背景がある。言うまでもなく、十分な論議は欠かせない。来る年も地域の動き、声を丁寧に見聞きしたい。

(2021.12.21 宮腰 友治)


 

コロナ禍の育児

 

 今年4月、能代山本の母親たちで組織するおらほの産科小児科を守る会主催の座談会「おしえて助産師さん」が50回を迎えた。2カ月に1度、乳幼児を育てる母親や妊娠中の女性が、産前産後の悩みを助産師に気軽に相談したり、参加者同士で不安を吐き出し、子育て情報を共有、交流する場として親しまれてきた。
 初めて取材したのは10年ほど前。当時から、赤ちゃんの発育状態や寝かしつけの仕方、授乳や離乳食、卒乳、上の子のフォロー、仕事と子育ての両立──といった悩みに、助産師や先輩ママたちが助言してきた。「専門家や育児の先輩のアドバイスは参考になる」「悩んでいたのは自分だけではなかった」という声が聞かれ、晴れやかなママたちの表情を見ると、改めて必要な場所だと感じた。
 長く続く会の活動がある一方、今夏、三種町に能代山本初の助産院が誕生した。出張専門で産前産後の心身のケアをはじめ、帝王切開を学ぶ会といったイベントを開くなど、母親たちに寄り添う新たな試みを展開しており、地域に密着した活動に今後も注目したい。
 コロナ禍が続くこの2年間、妊娠・出産、育児の現場も不安に包まれてきた。産院での出産時の立ち会い禁止や入院中の家族の面会制限、自治体の乳幼児健診の延期、子育て世代向けのイベント中止など、親子の孤立が心配される状況があったように感じる。自治体や産院、関係機関では、自粛とのバランスを図りながらコロナ禍の支援や活動の在り方を模索してきた。
 子育て関係の取材のたびに聞いたのは「コロナ禍でも赤ちゃんは生まれるし、育児は止まらない」という言葉。なかなか先の見えない時代だが、この地域で子育てする母親の一人として、周りのサポートに感謝しながらコロナ禍を乗り越えていきたい。

(2021.12.20 成田 結子)


 

漁業者に感謝

 

 八峰町を担当して早速、ハタハタ漁の取材に奔走している。資源量の減少が叫ばれる中、季節(沿岸)漁はピーク。地元の海で揚がるハタハタは、やはり美味だ。
 漁業者は「気性が荒そう」とのイメージから、当初はびくびくしながら行った漁港。漁師の口調は少々荒めで、現場は専門用語も飛び交う。たびたび頭の中を「?」が駆け巡るが、ほぼ毎日漁港に足を運ぶ。
 そんな中、海の男たちの優しさにも触れる。慌ただしい作業の様子にレンズを向けると、「モデル料、たけぇぞ!」と冗談(だと思う)を言われる時もあるが、「今だ!ハダハダいっぺー撮れ!」「撮ったが!1面に載せれ!」などと応じてくれる。ハタハタ漁の現状や展望を真剣に話してくれる人もいる。
 浜の母さんは母性にあふれ、朝一番で訪れた時は「毎朝、八森まで遠いのにお疲れさま」と笑顔を見せてくれた。お忙しい時に優しく対応していただき、ありがとうございます。
 漁師の仕事は命懸けだ。海で大けがを負って漁師を辞めた知人から事故当時の話を聞き、想像を絶する世界に驚いた。豪快な印象の漁師だが、危険と隣り合わせで生計を立てている海の男たちは真剣に海と向き合っている。
 平成4年9月から3年間の全面禁漁が明けた7年漁期以降、ハタハタ資源対策協議会は自主的に漁獲枠を設けてきた。しかし漁獲量の減少が続く現状を受け、今季からハタハタの資源量維持と漁のコスト削減を図ろうと、操業日数を制限する方式に切り替えた。
 この判断の成果は、もう少し先にならないと分からないだろうが、漁師は、きょうも冬の日本海と戦っている。荒波にもまれる漁業者に感謝しながら、海の幸をいただきたい。

(2021.12.19 山田 直弥)


 

スポーツ取材担当

 

 先月に急きょ担当が代わり、スポーツ分野を受け持つことになった。この時期は東北・全国大会に出場する選手の取材などが多いほか、今後は能代科学技術高が出場する高校バスケットボールのウインターカップの取材も控えているなど、慌ただしい日々が続いている。
 正直なところスポーツ取材はあまり得意とは言えず、担当変更後すぐにウインターカップという大きな大会の取材に向かうことになり不安が募る一方で、今までのように画面越しではなく、初めて現地で試合を見られることに対する期待感もある。
 今月中旬には、ウインターカップ出場チームの紹介記事を書くため、能代科技バスケ部の取材に初めてうかがい、真新しくなった校舎に入り練習会場の体育館へ向かった。
 私は能代工高出身なのだが、新校舎になってから初めて体育館に入り、通っていた当時とほとんど変わらない内装を見て懐かしい気持ちになったほか、取材をする中で部員から能代工の伝統を引き継ぎ全国で通用することを証明したいとの声を聞くこともできてうれしかった。
 ウインターカップでの初戦は大会2日目の24日で、対戦相手は桜丘(愛知県)。長身の外国人留学生選手がいる手強い相手だが、対策を考えながら勝利に向けて練習に励んでいる部員たちの士気は高い。ぜひ伝統の堅守速攻で初戦を突破するとともに、そのまま勢いに乗って勝ち進み、新たな校名を全国に知らしめてほしい。
 大舞台での取材を前に緊張しているが、能代科技の勇姿をしっかりと目に焼き付け、またその活躍の模様を地元に伝えられるような記事を書くため、精いっぱい頑張りたいと思う。

(2021.12.18 小林 佑斗)


 

ありがとう大高さん

 

 「だいたい1カ月弱、病院に〝収監”されてくるよ」。にこやかな表情で会場を後にしたのが、今生の別れになるとは思いもしなかった。先月12日に病気のため77歳で亡くなった渟美会会長の大高孝雄さん、生前は大変お世話になりました。
 さまざまな芸術団体や個人の発表会や展示会を取材してきたが、これまで会った方の中で一、二を争うほど楽しく取材させてもらった。郵便局勤務の傍ら、能代市出身の洋画家、宮腰喜久治さん(故人)に師事して絵を学んだ過去、絵画の技法や鑑賞のポイントなど多くのことを聞いた。
 3年前の展示会で作品を見た時、八峰町八森の海辺を題材に描いたものと直感で分かったが、「確かにそうだけど、実はこの絵と同じ場所はないんだよ」と大高さん。「風景を描く時は自分の前にある風景だけでなく、ぐるっと周りを見ることが大事。周りの造形物を作品に入れることでアクセントになる」とのこと。さまざまな視点から物事を見る大切さを学ばせてもらった。
 生前は能代市への美術展示館の建設実現を強く願っていた。作品を飾ったことがある青森県の深浦町美術館と比べ、「能代ができないことはないと思うのだけどなぁ…」と嘆き、昨秋の「大原省三生誕100周年展」では、作品を見て「しっかりとした施設で保管していれば、こんなにぼろぼろにはならなかっただろうに」と惜しんでいた。
 それらの言葉に、出身大学で文化政策を教える教授の「文化の発展なくして、地域の発展なし」という口癖が頭をよぎった。芸術文化の創造性を生かしたまちづくりが地域の魅力アップにつながるという考えだ。クリエーターの活動を支え、先人が遺した〝地域の宝〟を未来につなぐ拠点、環境の整備が待ち遠しい。

(2021.12.17 藤田 侑樹)