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2021.記者メモ

2020.記者メモ

 

議場にいない議員

 

 千葉県市川市議会は、今年の9月定例会から議会中継用のカメラで議席に座る議員を映すようにしたと知り、動画サイトのユーチューブで本会議の模様を見てみた。
 報道によると、きっかけは議場で居眠りする議員や本を読む議員らの姿がテレビで報じられ、市民から「ちゃんと仕事しろ」と抗議が殺到。市議会として市民の信頼を取り戻す必要に迫られた。議会中継は、それまで質問に立つ議員や市長ら当局の答弁者を撮影していたが、カメラの向きを適宜動かして議席側も撮影。こうでもしなければ襟を正せないものかと情けない気持ちになった。
 能代山本の議会取材の経験から申すと、確かに目を閉じて微動だにしない議員、いびきを響かせる議員はいた。そうした呆れた行為は、傍聴席から見えるし、中継カメラでも監視は可能だ。しかし、議場以外の場所にいる議員は、何をやっているのか確認のしようがない。「議場にいない議員」って奇妙かもしれないが、能代市議会にはいるのだ。 
 新型コロナ感染対策で密を避けるため、能代市議会は定例会一般質問の議場出席をほぼ半分ずつの交代制にし、それが常態化している。議員の半分が議場に出席し、そのほかの議員は控え室にいる。一昨年の6月定例会から感染拡大の波にかかわらず続き、今年の12月定例会もそうだった。
 控え室では、議会中継をモニターで見ているそうだが、第三者の目は届かない。何やら好ましくない話も聞く。市長の提案説明や付託、議決の時は議場に全員がそろうのに、なぜ一般質問だけがそうなのか。長時間に及ぶなら、日程調整をすればいいことだ。それとも同僚議員の一般質問は、議場で聞くほどのものではないということか。私は、とてもおかしなことだと思う。

(2022.12.31 伊藤 仁)


 

連載企画の「お蔵入り」

 

 昨年の今ごろ、新型コロナウイルス感染者数が少し落ち着いてきたので、年明けにそれぞれの現場でコロナ禍を乗り越えてきた様子を伝える連載を企画し、何人かは紙面掲載の準備ができていた。しかし、1月に入るとこの地域で感染が広がり、状況を見ようと先送りし、その後も収束の見通しはなく、企画は「お蔵入り」となっている。
 「コロナ禍で人々は…」と題し、対象は医療、福祉、企業、飲食店関係者などを予定、自分は葬祭業と美容業界の取材を担当し、原稿を仕上げていた。
 ジェイエイ山本葬祭センター長の保坂昭子さんは、感染拡大防止のため、遠方の親族が葬儀に参列できなかったり、人数が制限され、知人の別れの場面に臨めなかったりしたことを憂い、「早く、みんながきちんとお別れができるようになってほしい」と願った。
 県美容生活衛生同業組合能代支部長の加藤妙子さんは、成人式や年祝い、結婚式など「晴れの日」の催しがなくなったこと、着付けなどで関わる日吉神社の「嫁見まつり」が中止されたことを残念がり、「早く不安がなくなる日がくれば」と語った。
 思い通りにとはまだ言えないが、葬儀は望む人がその場面に立ち会えるようになり、成人式や嫁見まつりも復活した。いつか、また2人に補足取材し「コロナとの戦い」の苦労を紙面に掲載できたらと思う。
 ここにきて感染者がまた多くなった。対策を講じていても、いつしか陽性になっていたケースも多く、コロナが身近にあることを痛感させられた。
 行動制限もなくなり、この年末年始は多くの帰省者でにぎわいそうだ。コロナ禍ではあるが、少しずつ日常が戻ってきている。新年は、「ウイズコロナ」の時代をしっかり捉えていきたい。

(2022.12.30 池端 雅彦)


 

ルビーのルビは

 

 原稿を校正していて、悩むのが漢字のルビの扱いだ。
 北羽新報の記者が参考にしている「用事用語ブック」(時事通信社)には、「言い換え、書き換えが難しい語は、平仮名で読みを入れる」とある。例を挙げているが、知りたい全てが網羅されているわけではなく、「これは難読」と思われる漢字、または固有名詞などにルビを振る、振らないは自ら判断しなければならない。
 ルビは、宝石の「ルビー」が由来。19世紀後半のイギリスでは、活版印刷に用いられる活字は大きさでダイヤモンドやパール、エメラルドといった名前が付けられており、日本で振り仮名に使われていた活字の大きさと、ほぼ同じだったルビーがルビと呼ばれるようになったという。
 宝石が語源とはいえルビを、あまりにちりばめ過ぎると見た目が美しくないし、親切のはずが字が小さくて読みづらいのではないかと心配する。かといって漢字を平仮名に開いてばかりだと、読者を下に見ているようで気が引ける。
 用事用語ブックによると、読みが必要なのは「安堵」「画竜点睛」「百花繚乱」「醍醐味」「爬虫類」「鬱積」「辣腕」「汎用」「冶金」「要塞」…。書けなくても読める漢字はあるし、読めなくても文脈から何となく理解できるものだってある。
 そのため、ルビを添えたり、平仮名にしたりする必要があるのかなと思うような漢字も多い。例えば、この時期の原稿によく登場する「ハタハタ寿司(ずし)」「大晦日(みそか)」「干支(えと)」など。
 しかし、自分にとって簡単で当たり前でも、それが皆一緒ではない。読者の中には子どももいるだろう。そう考えながら、原稿と向き合うものの、何とも悩ましい感じ。ちなみにルビーは「紅玉」と書く。

(2022.12.29 工藤 剛起)


 

移住者に手厚く

 

 普段取材している相手が、実は元地域おこし協力隊員だったということが増えている。都市部から地方に人材を招き、可能なら任期終了後もその地域に定着を──という狙いは少しずつ達成されているのだと感じる。加えて、地域おこし協力隊とは無関係に、能代山本に移住してきた人も意外に多いとも実感している。
 その中で特に興味を引かれたのは、収穫されないままの柿を持ち主に代わって収穫して商品化しようという、「畑のない農家」の男性。本紙でも紹介したが、家主が高齢になったため放置されたままの柿、道路脇に立つ木など、手付かずの柿の実を、所有者に代わって収穫して加工品として販売しようというもの。収穫できないのであれば、獣を呼び込むよりはと提供する所有者も多いという。
 事業を始めた農家本人も、商売になるにはまだまだと話すように、将来これが軌道に乗るかどうかは不透明。ただ、どういう結果になるにしろ、アイデアを持って行動しようとする人には力を貸してやりたい。そしてその前に、それを「面白い」と思う土地柄であってほしいとも願う。
 先日、ANA(全日空)の機内誌に、ドイツに移住した日本人女性の手記が掲載されていた。それによると、ドイツ人は移民・移住者に対して、行政手続きや職探しなど、時には自己主張が強いほど世話を焼くのだとか。
 ひるがえって我がふるさとはどうか。国策レベルの移民政策を進めているわけでない。その代わりといってはなんだが、移住者にもっと手厚いサポートがあってほしいと思う。それは行政が用意する各種支援とは別の、地域の気風だったり、寛容さなどであってもらいたい。「土地柄」こそが、そこに移住し、定着する決め手になると考えるから。 


(2022.12.28 岡本 泰)


 

街なかの草木に思う

 

 緑から深紅へとグラデーションを描くように色づいたツタ草が、秋の陽光を浴びてそれはそれは艶やかで鮮やかであった。「あでやかだなあ、きれいだなあ」とちょっと感動した──のだが、果たして、そう思っていいのか、迷った。街なかで、紅葉スポットを探していた時のこと。
 それは、明らかに、営む人を失った空き店舗。住む人のいない空き家。ツタ草は、その建物を這うように上り、壁一面を覆い、屋根にも届く。ある一軒家では、軒から壁伝いに下り、玄関ドアを覆い始めていた。ツタ草の元気ぶりからして、ドアを開け閉めした形跡はうかがわれない。
 郊外や能代港方面に車を走らせた時に見かけた、ツタ草にすっかりくるまれた柱状や直方体の物体は、何かの支柱であったか、看板であったのか。恐竜っぽいシルエットのそれは、もしや街灯だったのだろうか。
 ツタ草に限らず。国道など幹線道路沿いの緑は目に鮮やかでドライブをより楽しくさせた。が、年々、もっさり感が増し、うっそうとし、トンネル化さえしているような…錯覚だろうか?
 野山の草木のたくましい自生とは趣を全く異にする、件のツタ草の勢いや、緑の「もっさり」に共通して感じたのは、ひとけのなさ。周りには住家も店舗もあり、車はぶんぶん走り、人々は近くにいるのだけれど。街の草木が人の暮らしになじみ、潤いとなるには、世話をし、管理する人の手があってこそと、今さらながらに気付く。人から放置され、何とも物悲しい草木になってしまってはいないか。
 ところで。毎年毎日、街路樹の落ち葉掃きをしてくださる沿線のお宅の皆さん、ありがとうございました。街を慈しむ市井の人の手で街は維持されているのだと思います。


(2022.12.27 渡部 祐木子)


 

3年ぶり復活に思う

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で2年連続で中止になっていた能代山本の多くの夏祭り行事が今年、3年ぶりに復活した。7月の「能代の花火」、8月の「こども七夕」、「能代七夕・天空の不夜城」をそれぞれ取材。各種感染対策は余儀なくされながらも、コロナ前の元の形に戻る第一歩を踏み出せたことに関係者は皆、感慨ひとしおの様子だった。
 ただ3年というブランクは運営側にとって思いの外、影響が大きかったようで、天空の不夜城関係者からは「初めて運行に関わるスタッフも多く、一から作り上げるようなものだった」との声が聞かれた。
 またこども七夕は、休止を重ねる間に各子ども会で少子化がさらに進行したり、灯籠の製作技術を持つ大人も不在となったりしたことで、参加辞退が続出。エントリーした灯籠数は12基と、3年前の24基から半減した。
 それでも主催するNPO法人青年クラブのしろは、「今年も中止では、こども七夕の伝統と文化自体が失われてしまう」との危機感から、中止要請が行政側から出されない限り開催すると事前に決定した。関係者は「すべては子どもたちに楽しい夏の思い出を提供するため。灯籠は少なくても、来年以降も開催していく」と前を向く。
 人口減少、少子化で地域が「縮小」を続ける中、夏祭りもさまざまな苦難に直面している。祭りへの参加者だけでなく、運営側も人手不足・人材不足の問題を抱えており、継続には体制の強化、担い手確保が急務だ。
 祭りは見る人の心に、地域社会に「潤い」をもたらす大事な文化。危機に対し、当事者以外が「傍観者」でいては、その灯はいずれ消え去ってしまう。開催継続、伝統の継承に、さまざまな「支援」が広がっていくことを願う。


(2022.12.26 平川 貢)


 

複雑なエネルギー情勢

 

 東北電力は一般家庭向けの「規制料金」と、オール電化の家庭や企業などが契約する「自由料金」を来年4月から値上げする。国の認可が必要な規制料金については、平均33%の値上げを経済産業省に申請済み。自由料金は燃料費調整制度の価格上限を12月分から撤廃しており、電気の使用量が増える冬期とも重なり家計に重くのしかかる。
 値上げの理由は、ロシアのウクライナ侵攻や円安などで燃料費上昇分を料金に反映させる燃料費調整額が上限に達し、東北電の経営を圧迫したため。是非に揺れる原発の再稼働を織り込んで上昇幅を抑えたという。
 3割強の値上げは、物価高に苦しむ一般家庭にとって簡単に許容できるものではない。コロナ禍で疲弊した地域経済への影響も計り知れない。すでにこれまでの値上げ分だけで事業所は悲鳴を上げている。政府は電気料金の負担軽減策として月約2千円を支援するというが、焼け石に水である。能代市内の店には隙間用テープや湯たんぽなどの節電グッズが並ぶが、いくら節約しても努力ではどうにもならない切迫した状況が予想される。対照的に莫大な燃料費で潤う中東産油国の富裕ぶりを見ると何ともやり切れない気持ちになる。
 原発事故後、国内の電力供給は火力発電に依存してきたが、脱炭素化や電力自由化の流れで火力発電の廃止が相次ぎ、供給力が低下。政府の方針転換により原発を動かし火力の燃料が減れば、中東などから買う高額燃料への依存度が下がり、国民負担は軽減される。だがそうなると経済効果の大きい能代火力を含む石炭火力の退出論が再燃するだろう。能代山本沖で事業が進む洋上風力は生産拠点が海外にあり、地域波及効果は未知数だ。エネルギーをめぐる情勢は複雑で、矛盾をはらんでいる。


(2022.12.25 若狭 基)


 

「3年ぶり復活」の年

 

 1年を3カ月ごと4回に分けて、その年の主な出来事を写真とともに振り返る「ニュースダイジェスト」をまとめるのが年末の仕事の一つになっている。今年も28日から掲載予定。またたく間に過ぎていった今年も、実にさまざまなことがあったと感慨にふけっている。
 この地域の今年の「10大ニュース」を選ぶとするなら、1月の記録的な大雪や8月の大雨、明るい話題では能代松陽高の11年ぶり甲子園出場は欠かせないだろう。5月の高校バスケ「能代カップ」をはじめ、8月には能代七夕「天空の不夜城」や「能代の花火」が3年ぶりに復活。流行3年目の新型コロナウイルスが依然として収束しない中で、中止に追い込まれていた行事が感染対策を取りながら復活の動きを見せた。通底しているのは「この地域を盛り上げたい」という関係者の熱意だと思う。
 今年は私自身もコロナに感染し自宅療養生活を送ったが、痛感したのはマスク着用など基本的な対策の重要性だった。現在も第8波の流行真っただ中。感染状況に翻弄(ほんろう)される生活には本当にへきえきしてしまうが、コロナ禍の難局を乗り越えようとする地域の人たちに寄り添い、励ますことができる紙面づくりに貢献できたらと思う。
 大みそか恒例の行事として、わが社の担当記者が恐らく1年の最後に取材することになる能代市浅内の「ナゴメハギ」も、3年ぶりに復活するとの知らせが届いた。幼い頃、大泣きしながら親にしがみついて「ナゴメハギ」の来訪を受けた記憶が懐かしくよみがえる。伝統をつないでくれている先輩・後輩に改めて感謝しつつ、年明けの紙面を飾ってくれることを楽しみにしている。お面越しの勇ましい雄たけびで、コロナ禍を吹き飛ばしてほしい。


(2022.12.24 菊地 健太郎)


 

地域の線引きなく

 

 新米の季節は、小腹が空いた夜中に悪魔の誘惑に駆られる。炊飯器に残ったほかほかご飯で作る塩むすび。こんな時間に…と思いながらも、かぶりついたら止まらない。この秋、県産米新品種「サキホコレ」が本格市場デビューした。プチ贅沢としてわが家も購入。炊いた日の夜は、もれなく悪魔のささやきに屈した。
 「コシヒカリを超える極良食味米」をコンセプトに掲げる。今年の出荷分は店頭価格が県内外とも2㌔で1200円ほど。ブランド米のつや姫(山形)、新之助(新潟)と同程度といい、品種開発した県は「順調なスタートを切った」と受け止める。来年は作付面積を2倍近い1349㌶に拡大し、集荷量も倍増の7700㌧を目指す。
 「秋田米のブランド力向上のけん引役」との位置付けで、PRも華々しかった。明るい話題だったことは確かだが、複雑な思いも拭えなかった。現時点で、能代山本では作付けができないからだ。県が設定する「作付け推奨地域」は県央と県南の15市町村で、県北はすべて対象外。晩生種の品種特性から、品質を確保するために一定の気象条件が必要と説明する。
 推奨地域への繰り入れ可否は、昨年からJA主体で取り組んでいる栽培試験の結果次第。能代山本でも複数の圃場で来年まで行われる。県が収量や食味など3年間のデータを検討して適否を判断するが、良好な結果が得られても、作付け可能となるのは6年産以降だ。
 「ブームに乗り遅れてしまった感が否めない」。今年10月、農家と農政担当者が集った会議で、北秋田市の男性農家がこぼした。能代山本の農家も同じ歯がゆさを感じているはずだ。サキホコレの投入で秋田米ブランドの再構築を目指すなら、地域の線引きを解消する方策も必要ではないか。


(2022.12.23 川尻 昭吾)


 

フロントランナー

 

 「他に負けないぐらい能代市はいろいろやっている。知られていないから、うまく情報発信しないと」。子育て支援策について、斉藤市長や幹部職員からよく聞くセリフだ。本当にそうだろうか。
 確かに、市の妊娠・出産・子育てサービス一覧を見ると41項目がずらり。不妊治療費の助成や、保護者の病気の際に子どもを施設で預かる事業などもある。
 ただ、予防接種などやって当然な事業が含まれ、市独自とする誕生・入学お祝い金などは他市町が先駆けて実施。子どものマル福は10月に全高校生を対象としたが、助成内容は半額助成で自己負担あり。8月時点で県内20市町村が全額助成しており、能代市は後発組で助成割合が少ない。
 担当課に「市が他市町村に先駆けている施策は」と尋ねたが、正確に答えるのは難しいとのこと。保護者にとって負担感のある学校給食費や医療費への支援で後れを取りつつ「いろいろやっている。あとは周知だ」でいいか。
 市議の若返りが図られたせいか、給食無償化など子育て支援策の充実を問う議員が増えたが、当局の答えは大抵、財政負担を踏まえ「支援策全体の中で検討」。12月定例議会では議員が給食の無償化を行えば「パイオニアになれる」と詰め寄ったが、斉藤市長は「パイオニアになるならないはどうでもよい」とかわした。
 市長が「日本のフロントランナー」と自負する洋上風力発電事業が進み、製材最大手が進出する能代。子育て支援も全国の最先端を走れれば、移住・定住の推進力にもなり、パズルのピースがハマる気がしないか。
 市長は給食の無償化に「子育て中の皆さんにプラスになるか考える必要がある」と答弁した。
 お答えします。もちろん、プラスです。


(2022.12.22 山谷 俊平)


 

人の思いを伝えて

 

 今年もさまざまな言葉を聞き、考えさせられた。
 全国高校野球選手権大会に出場した能代松陽。本県高校野球界をけん引する存在だが、夏の甲子園は現校名では初、能代商時代を含めると11年ぶりだった。
 部員にチームの強みを問うと、「落ちているごみを拾ったり、スリッパが乱れていればそろえたりと、日常生活をきっちり過ごすことだと思います」と返ってきた。日頃から身の回りの状況を観察したり、人の気持ちを考えたりした上での行動は勝負の場面で生きるとのことだった。爽やかな伝統は確かに引き継がれていると実感した。
 観光は波及効果の裾野が広い産業と言われる。能代山本は、来年で世界自然遺産登録30年を迎える白神山地を核に訪日外国人旅行者(インバウンド)の誘客による地域振興を目指している。
 10月、当地の視察に訪れた台湾の旅行会社関係者は「ガイドは通訳が容易に理解できる話し方、技術が求められる」と言った。日本語が堪能でない外国人に地域の魅力を端的に伝える難しさを考えさせられると同時に、ガイドが果たす役割、言葉の大きさに触れた。
 三種町の下岩川地区で今年度、県立大が人口減少や過疎化を抑制して持続可能な農村地域の構築を目指す研究を始めた。
 研究活動では学生が地元住民とも交流。住民同士の関わりや食文化などを下岩川地区の貴重な資源に挙げる学生もいた。住民からは「私たちが日常と思って過ごしてきたものが魅力と感じてもらえるのはうれしい」「資源に恥じないように、今後は生かすための“探しもの”をしたい」との声が聞かれた。難題に立ち向かう時こそ、足元を見詰め直し、歩み出すことが必要と改めて感じた。
 来る年も人の思いを受け止め、伝えたい。

(2022.12.21 宮腰 友治)


 

センバツ出場に期待

 

 8月10日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われた第104回全国高校野球選手権大会1回戦。能代松陽が11年ぶりの〝聖地〟に挑んだ。敗れはしたが、3年生を中心に意地を示した。そして先輩からバトンを受けた1、2年生が秋に快進撃。来春のセンバツ出場に期待が高まっている。
 甲子園初戦で能代松陽は聖望学園(埼玉)に2─8で完敗。悔しさがにじんだ一方、心地よい球音が響く甲子園に、巨人ファンながら「いい球場だな。また来たい」と感動を覚えた。
 2年生の保護者に「来年の夏、また甲子園で会いましょう」と声を掛けると、「春がありますよ!」との返答。はっとさせられた。能代市勢にとって未知のセンバツだが、能代松陽は夏も春も甲子園を目指している。
 そんなチームは秋も強さを発揮。9月の県大会で優勝、10月の東北大会では強豪私学を次々に破った。2勝してたどり着いた準決勝は、夏の甲子園で東北勢初の頂点に立った仙台育英(宮城)と対戦。全国トップレベルの実力校と渡り合い、1─2の惜敗だった。
 来年3月18日開幕のセンバツは第95回記念大会で、一般選考の出場枠が拡大。東北地区は2校から3校に増える。
 東北大会準決勝のもう1試合は東北(宮城)が聖光学院(福島)に6─2で快勝。決勝は仙台育英が6─3で制した。ベスト4唯一の公立校が優勝チームと接戦を演じ、センバツが有力視される。
 第90回記念大会で東北地区から一般枠で3校が選ばれた平成30年の春。能代松陽は前年秋の東北大会4強ながら惜しくも落選した。あの時の悔しさは忘れられない。
 来月27日の選考委員会で代表36校が決定する。「NOSHO」の2季連続の甲子園切符獲得を期待しながら、吉報を待ちたい。

(2022.12.20 山田 直弥)


 

天災は忘れる前に

 

 今年の夏、能代山本は大雨に見舞われる日が多かった。特に8月は線状降水帯や停滞する前線の影響で記録的な大雨となり、三種川の氾濫、米代川支流の越水などによって建物や農林業への多大な被害が発生、防災について改めて考えさせられる年となった。
 8月を振り返ると、3日は日本海上の低気圧から伸びる前線の影響で線状降水帯が発生、能代山本では河川の増水による道路や田畑の冠水など被害が各地で発生し、一部地域には「大雨・洪水警戒レベル」のレベル4に当たる「避難指示」が出された。
 その後、停滞する前線の影響で9~12日は記録的な大雨に見舞われ、三種町下岩川地区などでは三種川が氾濫して住家・非住家の浸水被害が相次ぎ、最も危険なレベル5に当たる「緊急安全確保」が発令された地域もあった。同市二ツ井町では、米代川の支流・内川の越水によって小掛地内の県道が決壊し、田代集落と濁川集落が孤立した。
 10日昼すぎに下岩川地区で大雨被害の取材に当たっていた。長面では三種川の氾濫によって道路が冠水、時間が経つにつれて水位は上昇。浸水した小屋の壁が剝がれてさまざまな物が流されていくなど凄惨な光景が広がり、天災の恐ろしさを目の当たりにした。
 自宅がある同市中川原では、50年前に米代川堤防の決壊によって洪水が発生し、全域が浸水被害に見舞われた。当時はまだ生まれていなかったが、自宅1階の天井付近には被害の跡が残り、幼い頃から洪水の話を聞いていた。
 堤防が改修されたことで現在までに洪水の発生はないが、近年は「天災は忘れる前にやって来る」とよく言われる。過去に学んで事前の備えを徹底し、もしもの時は自助・共助に取り組めるように頑張りたい。

(2022.12.19 小林 佑斗


 

列車は観光資源

 

 鉄道開業150年の今年、能代山本を通るJR奥羽本線では、さまざまな臨時列車が走り抜けた。機関車が客車を引く「客車列車」では、急行「津軽」や「DLレトロよねしろ」、団体ツアー客を乗せる豪華寝台列車「カシオペアクルーズ」が運行。沿線各地には列車を一目見ようと、県内外から多くのファンが訪れた。
 秋田地区の客車列車は、普通列車で使われる701系電車が平成5年にデビューするまで現役。その後も寝台特急「日本海」や「あけぼの」などが行き来したが、26年までに定期運行を終えた。
 現在でも、東日本エリアでは「鉄道産業文化遺産の保存と活用」を掲げる東武鉄道の「SL大樹」(東武鬼怒川線ほか・栃木県)をはじめ、JR東日本の「SLぐんまみなかみ/うすい」(上越線、信越線・群馬県)や「SLばんえつ物語」(磐越西線・新潟、福島県)、津軽鉄道、秩父鉄道、真岡鐵道といった私鉄各社でも運行しており、世代を超えて人気を集めている。
 各社や沿線自治体では、列車を単なる「移動手段」としてではなく、「観光資源」として価値付け、駅構内の転車台や車庫が見学できる広場、資料館を整備したり、ツアー商品や鉄道古物のオークション販売、イベントの開催などを展開。観光客が目的を持って駅に降り立ち、地域を観光できる取り組みを進める。
 一方で、全国有数の観光路線の五能線と、起点の能代市はどうだろうか。日本海の絶景だけではなく、「能代の○○を見たい、楽しみたい」と、東能代駅や能代駅で下車する観光客はどれほどいるか。今夏の大雨被害を乗り越え、23日に深浦─鯵ケ沢駅間の運転、24日には「リゾートしらかみ」が全線で再開する予定。これを機に、「鉄道ツーリズム」を含めた観光の在り方を見詰め直したい。

(2022.12.18 藤田 侑樹