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2022.記者メモ

2021.記者メモ

 

脚光バスケミュージアム

 

 能代市で今年、一躍脚光を浴びたことといえば、柳町通りにある「能代バスケミュージアム」だろう。コロナ禍やそれ以前は年間3~5千人程度だった来館者は1万5千人に激増。県内外はもちろん、海外からの来館者も500人を超えた。 
 呼び水となったのは昨年末に公開されたアニメ映画「ザ・ファースト・スラムダンク」である。描かれた高校バスケ界の王者「山王工業」のモデルとして能代工高(現能代科学技術高)が注目された。だが外国人のリピーターを生むほどの関心を集めるとは、いったい誰が想像したことだろう。
 開館翌年から勤務している小林尚子さんは「以前はイベントをやっても来てくれないこともあった。まさにスラムダンク効果ですね」と振り返った。SNSを使って情報を積極的に発信するなど、追い風をつかんだスタッフの才覚も大きい。市の施設ではこれまで見られなかったことだ。
 バスケミュージアムと能代科技バスケ部の練習見学は、ファン必見のコースになっている。「きっかけはスラムダンクでも、能代工に関心を持ってくれたり、能代科技のファンになってくれるのが何よりうれしくって」と小林さん。
 5月に能代カップ観戦を兼ね来館した韓国人女性5人組は、先の全国選手権大会の会場でも能代科技を応援した後、能代を再訪。「惜しかった」と熱く語っていたそうだ。能代科技のファンが海外にも広がっていることに、能代工元監督の故加藤広志さんもさぞ驚いていることだろう。
 全国選手権大会初戦で能代科技が惜敗した土浦日大(茨城)はベスト4に進出した実力チーム。館内で熱戦の録画を観たが、終盤の逆転まであと少しだった。「キャー!」とファンたちの黄色い歓声が響き渡っていた。

(2023.12.31 伊藤 仁)


 

歌い継ぎ、語り継いで

 

 8月のお盆前、帰省した幼なじみと能代市二ツ井町の飲食店に入ったら、女性2人が聞き覚えのある曲を歌っていた。能代市二ツ井町出身の伊藤豊昇さんと藤里町藤琴出身の市川善光さんのフォークデュオ「とんぼちゃん」(のちにとんぼ)のアルバムに収められた「スクリーン」だった。
 「とよ」こと伊藤さんが作詞作曲した。歌詞を変えて稲垣潤一さんが「月曜日にはバラを」として歌唱、それがカラオケにあり、とんぼファンは伊藤さんの歌詞で歌う。「スクリーン」を歌っていたのは伊藤さんのめいと、関東から訪れたというファンだった。
 その伊藤さんが3月8日に亡くなった。67歳。とんぼを解散後、ソロとして数年活動していた頃、学生時代にライブに何度も足を運んだ。
 その後しばらく音楽を離れたが、ファンの要望に応え20年前の秋、二ツ井で「とよを囲む会」を開き、県内外から集まった約40人を前に弾き語りし、きりたんぽ鍋を食べながら交流した。その様子を伝えたコラムを、スクラップブックで読み返し、伊藤さんと話をしたあの日を懐かしんだ。
 「よんぼ」こと市川さんは、仲間とライブ活動を続け、とんぼの曲を中心に歌っている。かつてのファンが望んだ「もう一度同じステージに」の願いはかなわなかった。
 伊藤さんの訃報を受け、インターネットのさまざまなサイトに惜しむ声や、青春時代に元気をくれたことへの感謝の言葉が寄せられた。そうした中で、二ツ井の囲む会に同行した星野荘一郎さんが、女性シンガーとのユニット「RABBITS MOON」として伊藤さんの曲を歌い継いでいたのを知った。
 今年も多くのアーティストがこの世を去った。残してくれた歌を歌い継ぎ、語り継ごう。

(2023.12.30 池端 雅彦)


 

ミス見逃さぬように

 

 先日、記者から上がってきた原稿を校正していると、「背部ロッド」の文字が目に留まった。「えっ!」「何だ?」と、読み返すと、前後の文脈から「ハイブリッド」の誤りだと分かった。
 こういうことは時々起こる。実際に今年あった幾つかを挙げると、「色行き間」「初夏以上」「園コク」「地方知事たい」「通樹霜会」「交通安全溶解」。これら正確には「医療機関」「主会場」「全国」「地方自治体」「通常総会」「交通安全協会」である。
 新聞制作する時に参考にしている「用事用語ブック」には、記事を書いたら、送稿する前に全文を読み直すこと。日付が間違っていないか、同音異義語の変換ミスはないか、誤字脱字はないか──とある。北羽新報の記者が使用する原稿用紙は、記事を書き上げた後で日時、場所、個人・団体名、連絡先、数字などの項目を確認し、チェックを入れるようになっている。
 しかし、自分も経験あるが、出稿を急ぐあまり確認がおろそかになったり、急かされなくても見落とすことだってある。そのため「間違いがない原稿はない」と心掛け、記事に目を通すようにしているのだが…。
 前述したような単純な変換ミスであれば、最初の校正段階で発見できるが、中には複数人の目を突破して新聞に載ってしまう間違いも。「見たはずなのに」「なぜ気が付かなかった」と悔やんでも後の祭り、失態に頭を抱えながら翌日付で訂正記事を出す。今年は何度あったか。読者、取材先に申し訳なく、深く反省している。
 現在、元日に発行する「新年号」の編集作業が大詰めを迎えている。今回も通常の約1週間分に相当するボリュームでお届けする。新たな年を幸先良く迎えられるよう丁寧な校正に努める。

(2023.12.29 工藤 剛起)


 

クマの駆除への抗議

 

 クマ被害が異常なペースで発生し、全国の人身被害は11月までに200件を超え、過去最悪。本県でもつい先日まで毎日のように目撃が報じられ、捕獲もすでに2千頭以上と聞くが、駆除したことに抗議が殺到したとも報じられている。
 数年前、阿仁マタギを日本遺産に登録するためのマタギシンポジウムが北秋田市で開かれ、狩猟文化を研究する大学教授らの講演と討論を聴いた。全国に狩猟文化がありながら、阿仁マタギが全国に知られるようになった理由は、阿仁マタギこそが捕獲したクマを市場経済に乗せて狩猟をバージョンアップさせ、それを他の猟師たちがまねた──といった見解にうなずいた。その中で印象に残る言葉も聞いた。
 「これより後の世に生まれて良い音を聞け」
 マタギが捕獲したクマの霊を送る際に唱えるマタギ、あるいは猟師独特の「ヤマコトバ」だという。「良い音」とは何かなど意味の解説はなく、調べてみると、魂の輪廻転生を信じる死生観や、命に対する感謝が込められていると解釈した。
 素晴らしい文化だと思う。だから、クマの駆除に対する抗議も分からないではない。とはいえ、人がクマの生息地である山に入って被害に遭うならまだしも、クマが駅前や線路沿いをうろついたり、作業小屋に立てこもる事態は尋常ではない。
 実は先日の夜、三種町から大潟村に向かう橋の上を車で走行中、クマと衝突した。衝突後、ヨロヨロと走り去るクマの姿に気の毒さを感じたが、車が破損したわが方も経済的に大損害。クマを「神様」と呼んで崇めながら、仕留めた命を悼み「後の世に生まれて良い音を聞け」と言葉を贈った阿仁マタギの先人たちも、よもやこんな時代がくるとは想像できなかったはず──と思わずにいられない。

(2023.12.28 岡本 泰)


 

「美しい国」の現状

 

 「21世紀の先進国の日本で、熱冷ましがないとか…。こんなものも手に入らない21世紀の日本なんでしょうか、と思う」と、能代市内の調剤薬局で働く薬剤師さんが、ため息交じりに話した。久しぶりに聞く「21世紀」という単語に軽くときめきを覚えつつ、享受する「当たり前」は存外にもろく、実は幻想かも知れない、との感を抱いた。
 後発医薬品を中心とする医療用医薬品の供給不安について、10月に能代山本の状況を取材した。「今さら?」と思う読者もいただろう。何せ、3年近く続いている現象だ。
 1製薬企業の法令違反発覚というドミノが一つ倒れたら、あれよあれよと十数社で不祥事が露見。日本製薬団体連合会が毎月公表する調査結果の5~11月分を見ると、9千品目前後の後発品のうち、全ての受注に応じられる「通常出荷」は3分の2程度にとどまる。供給不安が長引く原因は、少量多品目生産、共同開発・委託製造、薬価下落、赤字品目の増加、原薬や原材料の海外依存──などが挙げられているが、いずれも発生ほやほやの不具合ではない。
 平成19年、「『美しい国』へのシナリオ」の副題付きの「経済財政改革の基本方針」で「24年度までに数量シェア30%(現状から倍増)以上」と後発品の目標を掲げて以降、国は、ぐいぐいと使用促進してきた。積み重なった無理が疲弊や弊害を生んだとも言え、一朝一夕では解決しそうにない。
 お年頃もお年頃なもので、毎日服薬する。きょうも「薬をのむ」ことができるのは「当たり前」なのではなく、たまたま通常出荷の薬だったり、最前線の薬剤師たちが苦労して工面してくれるおかげなのだ。かくも、21世紀も「美しい国」も、ひずみと破綻をはらみ、綱渡りで、薄氷の上に成り立つ。
 それで、いいのか。

(2023.12.27 渡部 祐木子)


 

「税」は国民の怒り

 

 その年の世相を1字で表す「今年の漢字」は「税」。プロ野球・阪神の「虎」か、スーパースター・大谷翔平の「翔」あたりが有力かと思っていたが、それらを吹き飛ばす強烈な1字だと感じた。
 発表した日本漢字能力検定協会によると、「税」の選出は平成26年以来9年ぶり2回目。前回は消費税が5%から8%に引き上げられた年だが、今年も「1年を通して増税議論が活発に行われた」のが理由の一つという。急激な物価高騰もあり、国民が税やお金全般に敏感になった結果とも言えそうだ。
 税で言えば、10月から消費税のインボイス制度がスタート。軽減税率が導入された中で正確な消費税額の把握などが目的だが、「実質、増税だ」といった不満は能代山本の事業者からも聞かれる。
 影響を探る取材では「消費税は消費者からの預かり金という人もいるが、そもそも価格に税金を含めるも含めないも任意。預かり金でも何でもない」「円安で潤う輸出企業には消費税を還付し、零細業者からはしっかり税金を取るのは不公平だ」との切実な訴えも耳にした。怒りの矛先は国政・政権へと向いていた。
 そうした中で、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題が発覚。国民からの税金で賄われる政党交付金を受けながら、法の抜け穴を通した表に出せない金も組織的に作っていた実態が暴かれた。消費税率が上がったわけでもないのに「税」を選んだ国民の政治への不信感は、さらに高まりを見せている。
 政権与党の不正行為は、国民と国政との信頼関係の上に立つ税制度の根幹をも揺るがすものだ。自民党の「解党的出直し」は避けられない。そしてこの窮地を突破する力が、岸田首相にはあるのか。厳しい目は、能代山本からも注がれている。

(2023.12.26 平川 貢)


 

「能代モデル」模索を

 

 昨年12月に能代市の能代港で運転開始した国内初の大型洋上風力発電に各地から視察が相次いでいる。二酸化炭素の排出抑制が業種を問わず求められる中、有効策の一つである洋上風力への関心が高まっているためだ。しかしここで作られた電気が地元に還元されていないことは、思いのほか知られていないようだ。
 再生可能エネルギーの切り札として期待される洋上風力だが、足元では関心が低い。電力が地産地消されず、恩恵が建設業などごく一部にとどまるためと考えられる。同市では海底を改変して洋上風車が建設され、保安林を伐採して陸上風車が立ち並ぶが、作られた電気は大都市などに流れ、収益は大手中心の事業者が得る。市はエネルギーのまちを掲げるが、再エネを使った融雪道ができるわけでも、住民の電気料金が安くなるわけでもなく、地元を潤す構図にはなっていない。
 新たな展開もある。県は能代西高跡地で再エネで賄う新工業団地の整備を構想している。過去に能代工業団地に風車を建てて立地企業の電気料金を安くする試みを計画したが、法的な絡みもあって頓挫しており、これを教訓としてほしい。
 八峰町・能代市沖の洋上風力では、発電した電気の買取りを国が保証する今までのFIT制度に代わり、事業者が売電先を確保するFIP制度が導入される。売電先はクリーンな電気で企業PRしたい大手が想定され、ますます電気が大都市に流れ、大企業の成長を後押しすることになる。
 人口減少で電力需要が細る傍らで再エネが急拡大し、能代火力発電所のような石炭火力は出番が減っていく。再エネ普及の陰で深刻化する地方と都市圏の格差問題。市で洋上風力の電気を買って活用するなど、地元にも有益な「能代モデル」を模索すべきだ。

(2023.12.25 若狭 基)


 

何事も「フルスイング」

 

 能代山本の「実年の球宴」として弊社が主催している400歳野球大会。自分も参加できる年齢基準(45歳以上)をすでに超えた。今夏の大会では、中学や高校で共に汗を流した同期生や先輩、後輩が活躍し、紙面を飾ることも少なくなかった。懐かしい顔を見ながらの編集作業は楽しいものだったし、はつらつと打って走って守る体力を今なお維持していることに尊敬の念を抱いた。
 今年、「自分もそういう年になった」と改めて自覚した出来事がもう一つ。母校の能代南中創立40年に当たり同窓会が発足、8期生の私も役員の一人になった。1期生の先輩が中心となり組織の立ち上げに奔走、10月に能代市文化会館で設立記念式典を行った。
 式典後は、力を入れているという生徒たちの合唱を学年ごとに披露。どれだけ鍛えてきたか分かる、その力強い歌声に涙腺が緩んだ。続いて開かれた陸上自衛隊第9音楽隊によるコンサートでは指揮者体験コーナーもあり、各学年の代表生徒がステージに上がり、タクトを振って行進曲「威風堂々」の一節を指揮。客席の生徒たちが、緊張を和らげてあげるようにステージに声援を送り、盛り上げていたのが印象的だった。
 全校生徒177人は、私も在籍していた平成3年当時(459人)の半分にも満たない。縮小を続ける地域社会を反映した少子化の現実は厳しいけれども、生徒たちは今も昔も変わらず元気で、その姿は頼もしかった。
 この夏、グラウンドでうらやましいほどのエネルギーを放ったかつてのチームメート、この秋ステージで立派な姿を見せてくれた後輩にも負けていられない。仕事の都合上、400歳野球には出られなくても、何事にも「フルスイング」の心構えで行きたい。
 

(2023.12.24 菊地 健太郎)


 

ハタハタ水揚げ願う

 

 身近な冬の味覚だったハタハタが、高根の花になってしまった。今月中旬、県内のあるスーパーで売られていた八森産は、メス1㌔で税込み約6500円。年末年始は家族手製のハタハタずしを楽しみにしてきたが、今年は漬け込みを諦めたという。
 県によると、21日時点の漁獲量は沖合14㌧、沿岸82㌧の計96㌧。序盤が特に低調で、自主禁漁明け以降の最少だった平成7年漁期(143㌧)を下回る可能性がある。
 県は過去の漁獲状況から、ハタハタには15年ほどのサイクルで資源の増加と減少を繰り返す周期があるとみている。不漁要因の一つに、この資源循環の「谷底の時期」に当たることを挙げる。
 県内の漁業者は一昨年から水揚げ日数を制限し、増加サイクルに転じるのを待って厳しい状況に耐えてきたが、海水温の上昇が資源回復への期待に影を落としている。この3年間、県の調査では若い1歳魚の数が減少。ハタハタは冷たい水を好むため、稚魚が順調に育っていない可能性があるという。
 県は、昨年から岩館地区に海水温の測定装置を設置するなど、水温変化の観測を強化し、海域・水深・時期ごとのデータを積み重ねる方針。稚魚の生育に与える影響を分析して対策の足掛かりにしたい考えだが、水産振興センター担当者は「かなりの時間が必要」と対応の難しさもにじませた。
 八森、岩館地区の沿岸漁は19日に計13㌧余りを水揚げし、ようやくまとまった漁獲量を記録した。例年なら漁の終盤に差し掛かる時期だが、八森漁港で刺し網漁を行う男性は、接岸が続くのであれば、年内は操業を続けるという。「帰省客に八森ハタハタを味わってほしい」という言葉に、漁のラストスパートが続くよう願わずにいられない。
 

(2023.12.23 川尻 昭吾)


 

ゴール見えない議論

 

 議論がこうも長引くとは。タブレット端末の導入を話し合う能代市議会改革調査特別委員会を取材して、いつも思う。
 特別委は昨年12月に設置され、各会派の議員7人が所属。改選前に結論が出なかった「タブレット端末の活用」と「政治倫理の確立」を協議しているが、タブレットは9月、10月、7回目の今月11日と3回連続で意見集約できず、来年3月定例会に持ち越された。
 導入自体は各会派で一致。ただ、本体代や3年分の通信費など1千万円以上の見積もりが示される中、議員が自分の端末を使うか、公費で揃(そろ)いの端末を用意するかといった点で意見が分かれる。自己負担派の主張は「多額の費用に住民の理解が得られない」、公費派は「共通の端末の方が操作が容易。当局の人的資源を有効活用できる」など。
 議論の白熱は良いことだが、どうも進め方に疑問がある。
 各会派が意見を出したはずなのに何回か後の会議で再び同じような意見を確認したり、序盤の協議ではなく5回目で「見積もりを出して検討すべき」との意見が出たり。公費か私費かの採決を取った後に「決め方を決めていない」という趣旨の異論が出て、決定が白紙になったこともあった。
 特別委は基本的に定例会ごと(3カ月に1回)のペースで開くが、もっと集中的に開けないか。他市の状況や導入費用などの調査を事務局に指示しては次回確認する流れがあるが、必要なデータを序盤にまとめて指示・確認できなかったか。議論の筋道と「ゴール」に向かっている実感が欲しい。
 一方、12月定例会では、議員の期末手当を0・1カ月分引き上げる条例改正案が提出。一部議員の反対はあったものの、賛成多数でスムーズに決まった。タブレットとのギャップを感じた。
 

(2023.12.22 山谷 俊平)


 

再訪される魅力を

 

 人は感銘を受けた時、その体験を再び求めたり、または深めたいと考えたりして行動に移すと思う。旅に例えれば、再訪という動きも当てはまるかもしれない。
 10月中旬、台湾の旅行会社が催行した東北周遊ツアーで台湾から約20人の旅行者が能代市の旧料亭金勇、藤里町の田苗代湿原や岳岱自然観察教育林を訪れた。
 ツアーが実現した背景には、訪日外国人旅行者(インバウンド)の誘致による地域振興を目指す一般社団法人・あきた白神ツーリズムが台湾で取り組んできた能代山本に関する情報発信、現地の旅行会社関係者を招いた視察旅行などがあった。
 台湾からの旅行者は黄葉期を迎えていたブナなどの森を歩き、何度も写真を撮影していた。旅行会社の担当者は「静かで、空気が澄み、美しい自然環境が見られる場所を求める台湾の人は多い」と、白神山地を行き先の一つに選んだ理由を教えてくれた。一行を案内した、あきた白神認定ガイドの1人は「別の季節にも遊びに来てもらいたい」と売り込みを忘れなかった。
 この秋、能代山本も行程に組み込んだ台湾の旅行会社は来年の秋も同様のツアーを企画しており、ホームページで白神山地について、《享受自然生命的感動》などと紹介している。
 白神山地は今年で世界自然遺産の登録から30年の節目を迎え、改めて関心が向けられる年でもあった。
 麓に位置する能代山本は「また行ってみたい」と再訪を望まれ、選ばれる土地なのか。地域資源の価値を認識し、魅力として的確に伝えられているか。今後、どのように歩むのか。思いを巡らせれば尽きない。当地に暮らす者の悩みであり、責務なのかもしれない。今年、白神山地に関する取材で、改めて考えさせられた。  
 

(2023.12.21 宮腰 友治)


 

美術を通した「居場所」

 

 コロナ禍が落ち着いた今年は、地域で「居場所づくり」が活発だった。高齢者が集うサロンや趣味のサークル活動、不登校や引きこもりを支援する活動などを取材する機会が多く、人が集まることが避けられてきた昨年までとは対照的な光景に、多くの人がつながりを求めていると感じた。
 取材を通して、印象的な居場所に出合った。多摩美術大出身で、能代市内などで絵画教室を開いている富樫知里さん(42)=同市坊ケ崎=による居場所づくり活動「美術ノマド」だ。「美術を通していろいろな世界をのぞいてほしい」という思いを込め、生きづらさを抱えた人や保護者、その支援者を含めた集いの場として、今年6月に市内の古民家を活用したフリースペースで始めた。
 月1回の講座には、絵やものづくりが好きな人が足を運び、富樫さんの日本画の制作活動を見学したり、自由に絵を描いたり、アート作品を作ったりして過ごす。初回の講座を取材した際、訪れた人たちが絵を描く富樫さんを囲み、笑顔あふれる和やかな雰囲気がとても温かかった。
 講座のほか、県内外の美術作家の絵画などを集めた展覧会や即興パフォーマンスイベントなども企画し、幼児から高齢者まで多くの人にアートの世界の入り口を開いている。「世の中にはたくさんの表現があふれていることを、子どもたちや若い人たちに知ってもらいたい」と富樫さんは話す。
 生きづらいと感じることは、何も特別なことではなく、誰もが多かれ少なかれ悩みを抱えて生きていると思う。絵や音楽、芸術には人を救う力があり、つらい時には心のよりどころになることもある。言葉以外のコミュニケーションで新しい世界を体感させてくれる「美術ノマド」を来年も、のぞいてみようと思う。

(2023.12.20 成田 結子)


 

「公立の星」輝き放つ

 

 3月28日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で能代松陽高が能代山本の球史に刻まれる激闘を演じた。第95回記念選抜高校野球大会の3回戦で、全国屈指の実力校・大阪桐蔭と大接戦。三塁側アルプススタンドから緊迫の投手戦を見詰めた。
 1月27日に出場36校が発表され、能代勢初の吉報が届いた。3月18日の開幕までできる限り能代松陽を取材し、チームや選手の家族、地域住民ら誰もが春の甲子園を心待ちにしていた。
 3月21日の初戦の2回戦で21世紀枠の石橋(栃木)にエース・森岡大智君(3年)が被安打2本、12奪三振の快投。3─0で大会第1号の完封勝利を収めた。
 3回戦は春夏通算9回の甲子園優勝を誇り、史上初の2度目の春連覇を狙った大阪桐蔭と激突。地方の公立校は、強豪私学と互角に渡り合った。
 無四球の初戦から一転、森岡君は4四球を与えたが厳しいコースを突いた裏返しでもあり、被安打はわずか2本。バックは2試合連続の無失策で、打線は相手を上回る4安打を放った。工藤明監督の「公立校の星であってほしい」との思いが教え子に伝わり、選手は輝きを放った。
 大阪桐蔭は春夏通じて26回目の甲子園で最少の2安打に抑えられた。それでも能代松陽は0─1で惜敗。ワンチャンスを生かされ、善戦にも甲子園常連の壁を感じざるを得なかった。
 2年連続の夏の甲子園を目指した秋田大会は準々決勝で延長の末に2─5で敗れて3季連続の甲子園に届かず、勝ち続ける難しさを体感した。秋の県大会もベスト4目前で涙をのんだ。
 「NOSHO」はこれまでも敗戦を糧に成長してきた。センバツで得た経験も生かし、厳しい練習に打ち込むナインの巻き返しに期待したい。

(2023.12.19 山田 直弥)


 

爆発の瞬間捉える

 

 今年も残りわずか。1年を振り返ると、さまざまな取材に携わったが、とりわけ印象に残っているのは能代市浅内のJAXA(宇宙航空研究開発機構)能代ロケット実験場の爆発事故だった。
 7月14日、同実験場でイプシロンSロケットの第2段モータの燃焼試験が行われた。同年6月6日に実施した第3段モータの試験はトラブルなく終えていたため、今回も予定通りに終わるだろうと安心し切っていた。
 天候にも恵まれ、順調に作業は進んで午前9時ごろに点火。真空燃焼試験棟からはごう音とともに炎と白煙が吹き出し、「予定通り進行して良かった」とほっとしたのもつかの間、燃焼開始から1分弱で爆発音が響くとともに、試験棟の屋根などが吹き飛んで燃え上がり、モータの破片のようなものも飛び散った。幸い、けが人はなかった。
 事故の後、テレビ局などが続々と集まり、ヘリコプターから撮影を行う様子も見られた。
 衝撃的な光景に頭の中は真っ白だったが、カメラのシャッターは切り続けた。振り返れば、同実験場での燃焼試験に毎回足を運んでいたこと、取材対象から目を離さなかったことが決定的瞬間の撮影につながった。
 その後の調査で、点火装置の一部が溶融・飛散し、モータケース内面の断熱材を損傷してしまったことが爆発の原因だと特定された。
 イプシロンSのモータ燃焼試験は第2段が終われば全て完了する予定だっただけに残念だったが、ここで終わったわけではない。JAXAは来年度下半期の打ち上げを目指しており、得られたデータを基にロケットが完成し、宇宙へ飛び立つ日が来るのが楽しみだ。時間がかかるとは思うが、試験棟も再建され、「宇宙のまち」を代表する施設として活躍することを願う。 

(2023.12.18 小林 佑斗


 

護衛艦「のしろ」に乗る

 

 6月30日に能代港へ初入港した海上自衛隊の護衛艦「のしろ」。これまでさまざまな艦に乗り、見学したことはあったが、古里・能代にちなんだ艦名ということもあり、感慨はひとしおだった。
 同艦は日本周辺海域の警戒監視のほか、海中の機雷の探索・除去なども担う「FFM」といわれる新型護衛艦「もがみ」型の3番艦として、1年前に就役。同じ名の艦としては、日本海軍の巡洋艦「能代」、海自の護衛艦「のしろ」に続く3代目。
 母港は長崎県の佐世保基地だが、7月の「のしろみなと祭り」での一般公開に合わせて能代港に来航。入港後の報道公開に、縁あって参加できた。
 第一印象は「のっぺりした艦だなぁ…」。角張った上部構造物、角のようなアンテナ、背の低い艦橋。プラモデルであれば部品が少なく簡単に組めそうなデザインだ。「これまでの艦以上にステルス化が図られているのですよ」との担当士官の言葉に納得。時代と技術の進化に感心させられた。
 各種システムの統合で乗員数は先代の半分程度の約90人。リストバンド型のセンサーで乗員の位置や体調などが分かるというハイテクぶりだった。食堂では乗員が昼食タイム。この日は金曜日で、海自名物「カレー」が提供されるかと期待したが、チャーハンで少し残念。機会があれば、ぜひ食べてみたい。
 自衛隊秋田地方協力本部の担当者の話では、「のしろ」目当てに県外から訪れたファンも多く、四国から追い掛けてきた人もいたという。「のしろ」をきっかけに「能代市」との縁ができればうれしく思う。
 取材後、「乗員に九州出身が多い艦ですが、能代との縁を大切にしていきたい」と担当士官。「のしろ」の安全な航海、そして来年の〝里帰り〟を願っている。 

(2023.12.17 藤田 侑樹