夢中になる「もじょこぐ」を

(11月27日)

 これから書き入れ時となる人に、彼の友人が忠告していた。「おめ、もじょ、なるなや」と。
 70代が見えてきた年齢、しかも春先に痛めた腰がようやく治ってきたのだから、仕事も適度にするべきと思っているらしいが、当人はこれまで忙しくなり収益も上がる時期は無理を押しても、時には不眠不休で働くものだから、心配が募って、「もじょ、になるな」と方言を使って諌(いさ)めたのだ。
 すると、彼は「俺、つい、もじょになってしまうものナー」と話し、続けて「いでもたってもいられねぐならたて」と「居ても立っても居られない」、つまりじっとしていられない状態になることを少し反省した。
 この場合の「もじょ」の意味は「夢中になる」である。
 その彼が酒席でよく口にするのが、「もじょ、こぐな」。親しき仲間が、若い頃の苦い思い出や最近の失敗談を脚色して面白おかしく語ることを止(や)めさせるために、「もじょこぐなでば」と叫ぶ。
 あるいは、とても無理と考えられ、周囲が同意や賛同しそうもない提案をした時に、「そんたらもじょみでなごど言ったって、誰も聞ぐもんでねぇ」と諭す。
 この場合の「もじょ」は「妄想」「戯言(たわごと)」の意で、「こぐ」は「付く」を表し、「夢中になって訳の分からぬことを言う」ことを指す。
 一方で、「もじょ」は「寝言」の方言でもあり、同じ言い方の「もじょこぐ」は「寝言・譫言(うわごと)を言う」ことにも使われる。「おめ、何夢みでだのが。ふと(一)晩中もじょ言ってだな」というような用例がある。
 県教委刊の「秋田のことば」によれば、「正しくない思いやみだりな考えの意から、わけの分からないうわごとや寝言の意に転じたもの」と解説している。
 人によっては「もんじょ」とも呼ぶ「もじょ」。「夢中」「妄想・戯言」「寝言・譫言」の3つの意味があり、それを使い分け・聞き分けできているわれら田舎人は、使い続けて若い世代に伝えたいものだ。
 特にも夢中の意味での「もじょ、になる」の実行を。沈滞気味で元気の足りない能代山本に求められているからだ。(八)


 

スマホながら運転の厳罰化

(11月22日)

 高速道路を運転中に胸ポケットのスマートフォンに電話が入っていることを知らせるバイブレーションなる振動があった。取り出しては危険なハンドル操作に陥るのでそのままにしていると切れた。
 しかし、数分後に再び電話に出ろといわんばかりにスマホがしばらく振動。それを無視すると、またもバイブレーション。つい車のスピードを緩めて、スマホを手にして誰からの連絡かを確かめると、表示の名前は急ぎの用事があるとも思えない知人。スマホを助手席に置いた。
 数㌔先にはサービスステーションがあるのだから、そこに駐車してゆっくり通話をすればいいのに、運転中に相手の名前だけでも知ろうとしたのは、スマホ依存度が高まっていて、「振動=確認」の行動パターンになったからかもしれない。
 右手にハンドル左手にスマホで相手と話し込むことは、事故につながりかねずさすがにためらわれたが、わずかでも操作したことは違反のはずで、12年間無事故無違反のゴールドカードの優良運転者としては反省しなければならない。
 しかし、街を車で走っていると、スマホや携帯電話で話しながら運転している人はいるし、それを警察官に見つかり反則切符を切られた知人もいる。また、赤信号で停止している間にメールを打ち込んだり、わずかの停止でも操作している若い人を見掛ける。多忙な保険代理業の後輩のようにハンズフリーヘッドセットを使っている例は案外に少ない。
 先日、町内の回覧板に近くの交番の広報が綴(と)じ込まれていた。「『携帯電話使用等違反』厳罰化!」の見出しの下に、改正道路交通法が12月1日に施行されるとし、携帯電話を使用または保持して自動車を運転した場合、違反点数はこれまでの1点から3点に、反則金は普通車が1万8000円でこれまでの6000円の3倍になると記していた。
 事故を起こしたり交通に危険を生じさせた場合は、違反点数が今の3倍の6点で、即免停で罰金に。
 会社の安全運転管理者からも先日、厳罰化になることの注意喚起を受けた。ついやりがちな「ながら運転」を戒めたい。

(八)


 

 

横手の高齢者夫婦の殺人に驚く

(11月15日)

 テレビニュースを見ていた顔なじみの女性が「えーっ」と驚いた声を上げていた。すると、別の女性が「はちじゅーろく、だって。考えられる?」と発した。
 12日未明に横手市の住宅で83歳の妻の首を絞めて殺そうとして、86歳の夫が殺人未遂で逮捕された事件。意識不明の妻は翌日未明、死亡した。夫は容疑を認め、「夫婦間でトラブルがあった」などと供述しているという。 
 冒頭の彼女たちは、近頃多い幼児の虐待死や、若い女性への陰惨な殺害の事件が報じられるたびに、「どうして殺さなければならないの」「嫌な世の中だね」と心を痛めていたが、80を超えた高齢夫婦の間で起きた殺人、しかも秋田県内ということに驚嘆したらしい。 
 記憶は定かではないが、20年前だったか県内で70代の妻が少し年上の夫を金づちで殴り、死亡させる事件があった。県内の事件史を振り返ればさまざまな殺人、傷害致死、殺人未遂があったが、70代夫婦の諍(いさか)いによるものは聞いたことがなく、関心を抱き、取材した知り合いの記者にいろいろ尋ねたことがある。妻の夫に対する不満が爆発したのだった。
 それから20年。人生100年時代、急速な高齢化の全国の先頭を行く秋田県で80代夫婦の殺人事件が起きたことは、これからの社会を暗示するものではないか、と危惧してしまった。
 横手の夫婦のトラブルが何であったのか、夫が切れてしまった出来事、言葉は何であったのか、妄想に取りつかれてしまったのか、それらは今後の捜査を待つが、その解き明かしは高齢社会の教訓になり得るはずだ。
 何年か前、能代市で開かれたイベントで80前後の夫婦が会場に入る際、戸惑っている夫に妻がいろいろ指示・注文すると、夫が「うるしぇ、おなごだな」(うるさい女だ)と切れ気味に叫んだ。妻にも夫にも言い分はあるだろうが、鬱憤(うっぷん)がたまっていると感じた。
 また、長く夫を在宅介護した女性が、自分も高齢で体力も気力もままならないのに、毎日が辛(つら)いことから、冗談ながら「手をかけようと思ったことがある」と内緒で教えた。
 それらを横手の事件から思い出した。他人事(ひとごと)ではないのだ。

(八)


 

「紅葉のトンネル」を通って

(11月9日)

 奥まった山村集落に行くアスファルト道路から見える里山、渓流の紅葉・黄葉がこんなにも見事だとは、と息をのんだ。
 シーズンは終わりだが、微風を受けてハラハラ、サワサワと舞う落ち葉もまた風情があった。ナラやカエデ、モミジなどが織り成す「紅葉のトンネル」を通ったときには、こんな自然を独り占めしていいのだろうかとぜいたくに喜んだ。
 能代市二ツ井町の田代地区と小掛地区に30数年ぶりに出掛けた。田代は国有林の冬山伐採、小掛は揚石集落の皆さんの協力を得て冬の貴重なたんぱく源であったウサギ料理の取材以来である。ともに冬場であり、晩秋の訪問は初
て。
 二ツ井の仁鮒地区から県道を南下、Y字路を起点にして東側先の田代地区を通って日本一のノッポ杉近くの駐車場までと、西側先の旧濁川小学校跡地周辺までを往復した。
 集落の過疎化、空き家とススキ原に化した耕作放棄地を見るのは忍びなかったが、かなりの量の杉丸太が土場に積まれていることや、伐採の作業員の車が多数駐車しているのを見て、秋田杉林業の地が持続していることを知り、安らいだ。そして、美しい紅葉の風景が間近にあることもまた。
 遅ればせの紅葉ドライブをしたのは、斉藤滋宣能代市長のインターネット上のブログに5日、「紅葉」と題した日記が書かれていたのに触発されたから。
 市長夫人がコーラス仲間で田代地区の住民から「私は奥入瀬へ紅葉を見に行く必要がない。田代の紅葉は奥入瀬に負けないから」と言われたそうで、そこで市長夫婦が田代に行って来て、「素晴らしいの一言の景色」と書き込んでいたのだ。
 それを、奥さんが仁鮒地区出身の後輩夫婦に教えると、「確かにそう。一度行ってみたら」と薦められた。
 知人夫婦も市長も推薦した田代と小掛への分岐点の仙ノ台周辺が見どころだが、さらに進んで行けば、さまざまではっとする地元住民の自慢の「秋色に染まる」に出合える。
 ほかの能代にも、三種町、八峰町、藤里町にも案外に知られていない紅葉のスポットがあるはずだ。過疎地からもっと発信していい。来年は探そう。

(八)


 

公園でコスプレに出会って

(11月5日)

 所要までの時間潰しに訪ねた北秋田市の県立北欧の杜公園の3日昼。雨が上がって、パークセンター前の広大な広場の芝生のグリーンがまぶしく、またさまざまな広葉樹の黄や紅の色づきが鮮やかで、さらに森吉山の山容もとらえることができて心が洗われた。
 子どもの歓声が聞こえてきたので、わんぱく広場の方に向かうと、親子が楽しそうに遊具に興じており、触れ合いを微笑ましく見ていた。すると、場違いな若者5人が現れた。
 背の高い女性は、薄紫に染めたロングヘアに、薄いブルーのセーターと若草色のミニスカートで、前髪を顔の前に垂らしていた。お化けかホラー映画の主人公を真似(まね)ているのか。傍らに付き添うようにしていた女性は白いソックスにホワイトの襟つきの濃いグレーのドレスで、「何とか坂」の付くアイドルグループのメンバーのような格好だった。
 幽霊っぽいスタイルの女性の仕草(しぐさ)を1人の男性が盛んにシャッターを切って、写した写真を別の男性2人が「いいじゃん」などと褒めそやして盛り上がっていた。場所を移動して再び、それに出会った。
 「今どきの若者は」とは言うまいと心に収めつつ、こんな遊び、休日の過ごし方もあるのだと時代を感じ、帰路に就こうとしたところ、休憩所から野外ステージの方向に4人の若い女性がはしゃいで進んでいた。
 うち3人は、スカイブルーの軍服のようなスカートの制服を着て、同じ色の帽子をかぶっていた。残りの1人は本格的なカメラをぶら下げていた。
 コスチューム・プレーの略語「コスプレ」なる言葉を思い出した。漫画やアニメなどのキャラクターを再現して着飾ることらしく、大都市でのイベントや先日のハロウィーンでの映像では見たことがあるが、田舎の秋田の公園の目の前にいるとは驚いた。
 3人はさまざまなポーズをとり、カメラの女性は早送りのシャッター音を響かせていた。「いつもやっているの?」と聞くと、にっこりしながら「時々ですーぅ」と甘えた声。
 北欧の杜が「コスプレの聖地」になるのだろうか。ちょっぴり気になった

(八)


 

大館で種苗交換会見て歩き

(11月1日)

 会場に入ると、色鮮やかで豪華、あるいは可憐(かれん)、楚々(そそ)の花卉(かき)が、入場者を歓迎するかのように展示されていた。ひときわ目を引いたのがダリアで、女性たちがスマートフォンで盛んに写真に収めていた。
 農林水産大臣賞は、大館市の女性が出品した切花のダリア「MASARU(マサル)」。本県のオリジナル「NAMAHAGE(なまはげ)ダリア」シリーズとして今年度デビューした新品種で、「大きくカーブした花弁と白地に中心から入るアプリコット色の花色が特徴」だそう。
 ふわふわした感じが楽しく、色合いが心和ませた。「マサルよマサル」という人がいた。それで気付いた。女子フィギュアスケートで五輪金メダルに輝いたロシアのザギトワ選手に贈られた秋田犬のマサルの毛の色に何となく似ていて、かわいらしさもあるから、品種名になったのだと。
 「MASARU」の近くに同じナマハゲダリアで紫色の花をつけた1等賞があった。品種名「コウセイ」。去年の甲子園で準優勝した金足農高のスクールカラーに似た色で、エースで活躍した吉田輝星(こうせい)選手を彷彿(ほうふつ)とさせるイメージから命名したと推測した。面白いなあと、ダリアに似つかわしくないオヤジはつぶやいた。
 土日は大混雑だろうからと31日、大館市で開かれている県種苗交換会に出掛けた。
 1週間の期間中、観覧者が100万人前後の交換会の難儀は足である。主要会場が分散し、しかも中心街と郊外に離れるケースが多いからである。大館の場合、農産物展示の主会場の樹海体育館と農業機械化ショーの樹海ドームが歩いて5分程度で、その間に植木市や飲食や物販の出店街を設けるという設定であるため、会場を回遊しやすかった。近くのイオンショッピングゾーンに駐車、シャトルバスの混雑を我慢しながら利用した。
 交換会見物はほぼ毎年、昼食は地元農協女性部の食堂でが決まり。大館といえば「きりたんぽ」で、注文しようとしたが、正午にもかかわらず完売。岩手県訛(なま)りの男性から「自分の家で作ればいいっぺ」と言われ、「それもそうだ」と思い、天ぷらそばを食べた。大館特産のヤマノイモを土産に家路に。(八)