冬、歩行も運転も安全を

(12月25日)

 初夏に仲間と遠出の旅を楽しんだ時のこと。レンタカーで高速道を使って山脈越えして県庁所在地に向かう間、強烈な雨が降ったり止んだりの天候で、運転していた友人は「ハイドロプレーニング現象に気を付けなければ…」と自分に言い聞かせていた。
 自動車学校で学んで以来、ほとんど聞くことのない用語だった、ハイドロプレーニング現象とは、車が水たまりなどを走った際に、滑ってハンドルやブレーキが利かなくなること。その危険性を察知して、彼はスピードを落とし慎重運転に徹した。
 先日、しばらくぶりに会った後輩が「ブラックアイスバーン、怖いスナ」と話しかけてきた。転勤族の彼は今は大館市に通勤している。今月の10日、自動車専用道の大館能代空港インターチェンジから大館市方向に走行すると、山あいを切り開いた場所辺りでノロノロ運転が続いたという。
 雪道でも時速50〜60㌔が出そうと思われるのが20㌔。「路面が見事なまでツルツルだった。とにかく滑るんです」と。長いトンネルの出入り口前後が凍り、トンネル内は滑らずでスピードを出す。その運転の切り替えに注意を払わないと危ない、とも話した。
 アイスバーンは積雪した路面が凍った状態。一方、ブラックアイスバーンは路面に薄い氷が張った状態のことで、アスファルトが黒く濡れているように見えることからブラックがついた。彼は「何でも着氷性の雨が降ったためだそうで、かなり事故が発生したらしい」と述べていた。
 大館市の北鹿新聞は11日付で、大館郷土博物館学芸員で気象予報士の鳥潟幸夫さんの説明を載せていた。「上空からの雨が地表に着くまでに冷やされて氷点下の水に変化し、地面にぶつかった衝撃で凍る着氷性の雨。国内では珍しい雨」。滑走による事故や転倒による救急搬送が相次いだ。
 気象変化による道路の状況をしっかり把握して、歩行も運転も「ゆっくり、安全に」である。
 平野部や海岸部もクリスマスにふさわしい雪となったが、急いている軽四輪はブレーキが利かず、交差点内で止まっていた。(八)


 

ヨルダンが身近になってきた

(12月20日)

 観光案内や展示されている写真にあった石造りの遺跡を何かの映画で見たと記憶が浮かんだ。しかし、加齢によるものかなかなか思い出せず、しばらくイライラしていた。
 しかし、講演した女性大使(53)がスライド画面で遺跡を紹介しながら「インディアナ・ジョーンズ」と英語で言ったことから、瞬時、ハリソン・フォード主演の「インディ・ジョーンズ」シリーズの「最後の聖戦」であると分かった。30年も前の映画でインディーの父親役でショーン・コネリーが出ていたことが鮮明に浮んだ。遺跡はキリストの聖杯が隠されていた場所として出てきた。
 ヨルダンのペトラ遺跡の宝物殿であった。2000年以上も前に定住した勤勉なアラブ系のナバデア人が切り立つ岩壁を削り大都市を建設、宝物殿は廟であったという。
 能代市が来年夏の東京五輪・パラリンピックでヨルダンのホストタウンになったことを記念したフェアが19日、文化会館で開かれるのに興味を覚え、リーナ・アンナーブル大使の講演や市民や高校生との質疑を聞いたり、ヨルダンの料理を試食したりしてきた。
 展示されていた男性の民族衣装を見、それを着た人がフェアの冒頭であいさつし、またも映画を思い出した。「アラビアのロレンス」(1963年)。ピーター・オトゥール演ずるイギリスの陸軍将校が似た衣装を着ていて、作品を通じてオスマン帝国からのアラブ独立運動という歴史を学んだ。そのロケの大半がヨルダンだった。
 娯楽大作の「インディー」と不朽の名作の「ロレンス」、遺跡や砂漠の美しさと歴史が強く印象に残る2つの映画がヨルダンを舞台であったことから、その国により関心が及び、親近感も湧いてきた。
 それで、アメリカのフォークソング集のCDに「ヨルダン川」という歌があったはずと探すと見つかり、カーステレオで久しぶりに聴いた。乗りのいい曲で元気をもらえた。
 来年、ヨルダンの選手が能代に事前合宿にきたり、交流事業が行われる。五輪もパラリンピックも応援する国ができることはうれしい。「アハラン・ワ・サハラン」(ようこそ)と迎えよう。   (八)


 

「たろっぺ」知っているようで

(12月15日)

 職場が「たろっぺ」で盛り上がったというか、驚きや戸惑いが広がった。
 能代山本教育研究会国語部会が発行している年刊詩集の作品審査会が開かれたことが話題となった。詩集のタイトルは「たろっぺ」。デスクが「たろっぺ」の意味を分かっていない人が案外いるのではないかと思ったらしく、居合わせた同僚に「たろっぺ知ってるか」と聞いたのだ。
 すると、皆が「はい」と答え、20代の女性2人は「詩集です」と力強く解説してみせた。いやそうじゃなくてとデスクは、「つらら」の方言であることを理解しているのか尋ねると、40代、50代は分かっており、30代の半分はあやふや、20代は「そうなの」と戸惑いの表情。そこで50代は「エーッ」と驚いたのだ。
 能代山本の小学校、中学校に学んだ誰もが、授業で詩作に励み、作品を応募した経験がある。だから、「たろっぺ」と聞くと、詩集名が浮ぶのは当然だが、「たろっぺ=つらら」の認知度は年代によって違いがあり、50代は方言理解の世代間格差を感じたようだ。一方で50代でも「たろっぺ」の語源については理解が怪しく、「何であったか」とつぶやいていた。
 「たろっぺ」は「垂氷(たるひ・たりひ)」に由来し、雨・雪などの水滴が凍って垂れ下がった「つらら」を指す方言。詩集は1951(昭和26)年に小冊子で発刊され、6号の時に「たろっぺ」と名付けられた。
 自身も「たろっぺ」刊行にかかわった元校長の故工藤泰二さんは、著書「読む方言辞典─能代山本編」で次のような文を載せている。
 「『たろっぺ』と名付けたのは地方色を表すため。会議で『たるひ』『たろっぺ』『たろんぺ』などいろいろな意見が出たが、結局語呂も考えて『たろっぺ』に決まった」。
 冬に刊行されることも背景にあったと思われる。軒先のつららのように、言葉の水滴がひとつまたひとつと固まって、子どもたちの豊かな感性がにじみ出た一編の詩になることを願って。
 毎年楽しみな詩集は、今年度で68号になる。工藤さんは「継続は力なり。有難いことだ」とも記している。
 「たろっぺ」をいつまでも。方言も。(八)


 

臭い、匂い、香り、かまり

(12月12日)

 臭い、匂い、香りの感じ方、好みも嫌いも人それぞれで、その感想にいちいち同感したり、茶々を入れたりするのもどうかとは思うが、このごろ「何かヘン」と感ずる。
 やたらと「臭みを消す」にこだわる料理を教える番組、それを食べて「臭みがな~い」と喜んで叫ぶ、もはやグルメとは言い難いリポーターが出る番組が目に付くからだ。そのことを嘆くと、何人かの仲間が同意した。「乳臭さのない牛肉って牛肉なの?」「ラムやマトンの臭みを消して羊を食べるとはどういうことか」と。
 熟成の度が過ぎて腐臭がするのはいかがとは思うし、臭みが強い獣肉は一定の臭いを抑えることは必要だが、牛肉は牛肉の、羊は羊の、それぞれの味を楽しみたいのに。
 中国の内陸地を視察して夜の屋台村に繰り出し、名物の羊肉の串焼きを注文したが、辛くて刺激の強い香辛料が勝って肉の味がよくしなかった。また、都会のこ洒落(じゃれ)たレストランで出てきた牛肉料理はハーブに漬けたのか、その味が強く、肉本来の旨味(うまみ)をあまり感じなかった。ガーリックの味が強烈な豚肉のソテー、炭火の焼き具合の強い焼き鳥もあり、「肉を味わう」から遠かった。
 テレビのローカル情報番組で先日、タラが取り上げられ、その臭みをとる方法としてパットの上に置いた切り身に砂糖を振りかけ、ある程度の時間を置くと紹介していた。それを見ていた一同が「えーっ」と驚きの声を上げた。
 魚に塩を振ることはよくあるが、砂糖は聞いたことも見たこともなかったからだ。砂糖の浸透圧を使ってタラの水を引き出すと臭いが抜けるという。理にかなったことなのだろうが、旬のものをそこまでするべきなのか疑問が浮かんだ。
 肉と同様に魚も臭いが嫌われているようだ。サバもイワシもサンマもホッケも、独特の臭いがあってこそ、その魚種らしさがあるのであって、焼き立ては「臭い」ではなく香ばしい「匂い」である。
 好漁が続くハタハタ。八森の番屋に激励に行くと、いかにもの臭いが広がっていた。漁師は「ハタハタかまり、するべ」と言ったが、「かまり」は豊饒(ほうじょう)の匂いであった。  (八)


 

幸福度ランキングの最下位

(12月6日)

 経済雑誌やビジネス書を出版しているダイヤモンド社から5日朝にスマートフォンに届いたニュースに興味を引かれ読んでいくうちに、だんだん落胆してしまった。そして「それは本当なのか」とも思った。
 都道府県「幸福度」ランキング2019!3位福井、2位熊本、1位は?──の見出し。その1位は宮崎県で、幸福度は「西高東低」の傾向にありとのことで、順位に目をさらすと、40位宮城、43位青森と福島、46位岩手と下位に東北地方が並び、何と秋田は47位、全国最下位だった。
 ランキングは、ブランド総合研究所が今年初めて実施した「地域版SDGs調査」によるもの。SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、調査は住民の視点で地域の課題を明らかにするために行ったそうだ。
 アンケートはインターネットで7月に実施。各都道府県から約340人の回答を得た。「あなたは幸せですか」という問いに、「とても幸せ=100点」「少し幸せ=75点」「どちらでもない=50点」「あまり幸せではない=25点」「全く幸せではない=0点」の5段階から一つ選んでもらい、全回答の平均を「幸福度」としたという。
 トップの宮崎は72・4点、対して最下位の秋田は60・5点で、11・9㌽も差がある。南国の暮らしに幸せを感じ、東北は北国の辛(つら)さが重いのか。ちなみに東京は63・3点で45位、神奈川は64・5点で41位で、大都会の生き辛さがあるのかもしれない。
 秋田では「まったく幸せではない」の回答が20代が1・5%、60代が4・3%と少なかったが、40代は14・4%で全国で最も多く、30代も12・8%で、「働き盛りの世代で幸福度が低い傾向にある」との分析である。
 秋田は満足度と定住意欲度も47位と最下位、愛着度も45位、逆に住民1人当たりの悩みの個数を聞いた「悩める住民が多い都道府県ランキング」では4・26個で1位だそう。
 ランキングにいちいち過剰反応するのもどうかとは思うが、県民に不満が重層的にたまっていたり、郷土に愛着が薄れてきたとすれば由々しき事態である。座してばかりではいられない。  (八)


 

店舗内店舗という銀行支店統廃合

(12月1日)

 「能代どうなるんだ」と最近よく聞かれる。どうなるもこうなるも、少子高齢化による急速な人口減、地域経済の縮小、それを背景にして多くの業種業態が対応に迫られているから、厳しい状況は続くと思うが、そう言ってしまえば気分が落ち込むので声にはしない。「うーん」とうなるだけである。
 北都銀行が店舗網の効率化の一環で二ツ井支店と能代駅前店を能代支店に移転し、ブランチ・イン・ブランチとして運営すると発表したとの記事が本紙30日付に載った。その情報を知って、「どうなる」と思った。
 ブランチ・イン・ブランチとは聞き慣れない用語だが、店舗内店舗とも呼ばれ、複数の店舗を1カ所に集約、複数店舗として営業を続ける手法だそう。従来の統廃合では、顧客が店番や口座番号などを変更することがあったが、店舗内店舗になれば、店番も口座番号も変わらず、通帳もカードもそのまま使えるという。
 しかし、二ツ井支店は来年3月19日、能代駅前支店は5月22日をもって店舗営業が終わり、「空き店舗」になるとのこと。事実上の廃合ともいえる。ネット社会に順応できる若い人はまだしも、高齢者は困るのではないのかと案ずる。
 二ツ井、能代駅前の両支店は秋田相互銀行、秋田あけぼの銀行をルーツに、羽後銀行との平成5年の合併で北都銀行の支店となった。能代駅前店はその名のとおり、駅前の顔的な金融機関で、地域経済を支えてきた。
 二ツ井店もまた駅通り商店街の一角を占め、二ツ井藤里商圏を支援してきた。昭和46年に移転新築されたが、日本を代表する建築家の一人の故宮脇檀(まゆみ)氏の設計で、存在感のある建物である。 
 今回の店舗内店舗化という統廃合は、地方経済の停滞に加え、長引く超低金利の影響で、全国の地方銀行の経営環境が厳しいことがあると思われる。
 能代では6年前に秋田銀行能代支店が能代駅前店を統合して、新築した店舗に移転している。
 金融機関も変わらざる得ない時代にあることを今回の北都銀行の店舗集約で肌で感じたが、能代の経済の盛衰を映し出しているようで、寂しく思う。

(八)