昭和の男の「みどりの日」

(4月28日)

 ブナがいつの間にやら一気に小さな薄い葉を広げた。辺りに赤茶けた抜け殻のようなものがいっぱいに落ちており、かがんで見てみると、葉を包んでいた芽の鱗片だった
 20年ほど前に旧峰浜村の「海と川と空の塾」が実施したブナの植樹に参加した折にプレゼントされた世界自然遺産の白神山地の遺伝子を持つ実生の苗木がわが家の庭で成長、眠りから覚めて劇的に葉を開いたのだ。その凄(すご)さに驚くとともに、新緑の季節がやってきたことを実感した。
 「自然と人間の共生」を掲げて毎年6月に水沢山や高峰山でのブナ植樹は、全国から参加者が集まるほど広がりをみせたが、運営スタッフの高齢化で所期の目的を果たしたとして昨年2月に塾を解散、23年にわたる活動に終止符を打った。
 けれど、小欄が植えたのも含め約1万4000本が育っているから、やがて緑豊かな森となるはず。再訪して、緑のシャワーを浴び癒やしのセラピーを受けたいものだ。
 そんなことを思っていたら改元10連休となって、あす4月29日。昭和の時代は天皇誕生日で休日。昭和天皇は植物を慈しまれたことを思い出した。そして、庭の雑草を侍従たちが気をきかせ刈り払い、それを説明したところ、「雑草という草はない」と話したというエピソードも。雑草にも名前と役割があることを諭したらしい。
 その後、ご逝去により、29日は「みどりの日」の休日に。昭和天皇が植物と自然を愛したことから「みどり」がふさわしいと名付けられたという。
 それもあってか、今は亡きアウトドアの師匠らと年に1回の山菜採りは、何となく「みどりの日」が定着、続いている。白神山地の麓で渓流のせせらぎと野鳥のさえずりを聞き、そろそろの新緑を楽しみ、山の恵みをほんの少し頂く。
 そのことは「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」の「みどりの日」の趣旨と一致する。
 29日は平成19年に「昭和の日」、「みどりの日」は5月4日となったが、われら昭和の男たちはなお29日が「みどりの日」で、今年も山菜採りへ。令和の時代もまたきっと。(八)


 

桜のスポットも栄枯盛衰か

(4月23日)

 北秋田市森吉地域の国道105号を通ると、風景が変わっていた。桜のトンネルの名所として知られた「松栄(まつさか)桜並木」が消えていたのだ。
 そういえば、と思い出した。ソメイヨシノの老化が進んで枯れ枝が通行の妨げになり、またテングス病の影響で花がまばらになってきたことで地元から伐採の要望が出ていて、去年の8月に姿を消したというニュース。
 66年前に大野台地区に入植した若者たちが15本の桜を植えたのが並木の始まりで、旧森吉町は93本を文化財記念物名勝に指定、約800㍍の両側に咲くさまは壮観。車をゆっくり走らせて見物したことがある。それが、失われた現実を目の当たりにして残念に思った。
 同時に、わが能代山本の桜はどうなるのかと案じた。
 かつて杉苗の床替えの取材に訪れた能代市朴瀬の旧能代営林署苗畑事業所は桜の景色が映えていたが、事業所も桜もとうの昔になくなった。少年期に過ごした木材の街の工場や作業所にあった桜も面影を残すのは1本だけ。
 ある所のアスファルト路面に花びらがいっぱい落ちて風に舞うのが美しい桜は健在だが、植えられている会社は破綻し、この先どうなるのだろうか。
 一方でまた、学校の桜は廃校も含めて花を咲かせ懐かしさを運んでくる。能代市役所の南側の旧渟城第二小の桜は保存され、「さくら庭」としてイベントが行われ、若者や家族連れを誘い、また高齢者施設の利用者が観桜を楽しみ、新たな桜のステージに生まれ変わった。
 能代工業団地、八峰町八森の御所の台ふれあいパーク、米代川堤防など平成に入って成長した「桜のスポット」もある。まだ小さく細いけれど、枝垂れ桜が風流な花を咲かせる民家も見掛ける。
 思い出の地を歩き、わが地域をドライブして桜も名所も栄枯盛衰なのだと知った。そして、維持していくことの難しさもまた。
 好天に恵まれた21日の日曜日、能代公園での花宴に参加した。車座になっているのは2組だけ。桜を眺めた誰かが叫んだ「ちょっとしょぼくない」と。皆が同意。桜は目立たず、出店もなし、ぼんぼりもなしでは…。(八)


 

ノートルダム寺院の火災と能代

(4月19日)

 若き頃、フランスのパリを訪れた能代の女性は、ゴシック建築の代表作で後に世界遺産になったノートルダム寺院を見物した。「ただただ上を眺め、首が疲れた」が印象に残っているそうだ。
 それでも、寺院を舞台にしたビクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」と、美術品や文化財に詳しいのは、「百聞は一見に如(し)かず」によって知識を深めたためと見た。
 パリで料理の修業をした能代の男性は、下町のアパートと勤め先の間にノートルダム寺院があり、朝に夜に街の象徴で高さ約90㍍の尖塔(せんとう)のある大聖堂を見上げた。どんな思いで望んだのかは聞き漏らしたが、甘く切ない青春を彩る風景と想像する。
 こちらは、テレビの旅行番組や映画のシーンで見ただけだが、17日朝に飛び込んできた火災の映像、特に燃え盛った尖塔の崩落には呆然(ぼうぜん)とした。実際に見てきた冒頭の彼と彼女をはじめパリを周遊してきた能代山本の人々にとっては、遺産の風景が無惨となったことに衝撃を覚えたと思われる。
 ヨーロッパは石の文化で、石造り・レンガ造りの建築物がほとんどと理解していたが、それはこちらの浅学で、美しい三角屋根や高さを追求した建物には木材が使われていることを、今回の火災で知った。
 見学してきた人からは大聖堂の木材を聞かされなかったが、骨組みにはオーク材を入り組んで使って空間を取り、「森」と呼ばれていたそうだ。
 それをもって、火災が広がり、消火が難航したのは木材を多用していたためとの幾つかの報道があった。そうかもしれないが、何かしら違和感を覚えた。かつて木都と呼ばれた能代に生まれ育ったためか、またも「火災=木材の悪」の説の流布に木造の家に住む者として不快感が湧いたからか。
 同じことを能代木産連の情報収集・発信委員会が指摘した。「850年ほど前に建てられた歴史的建造物でフランスの観光名所。木材を多用していたことが責められるでしょうか。用い方によって材料は選ばれるべき」と。
 新国立競技場も県内の道の駅も木材を活用した優れた建物。何よりも防火だ。   (八) 


 

10連休の対応・対策あれこれ

(4月13日)

 「家賃の振り込みがどうなるのかと思ったら、延びてラッキーだったわ」と能代市内の夜の社交場の女性経営者が話していた。
 家賃の支払い期日は毎月末。今月は日曜日。天皇陛下の30日の退位と皇太子殿下即位の翌5月1日を含めて27日の土曜日から5月6日の振替休日を含めて世の中は10連休。振り込みする日は前倒しになるのか気をもんでいたが、7日になったとの連絡が入って安堵(あんど)したらしい。
 と同時に、「いつ休んだらいいかしら」と考えを巡らしていた。能代火力3号機の建設の波及効果はあったのかどうか、地場経済の景気も芳しくなく店が暇な日もあるだろう。そこに10連休。なじみの客は近場でも行楽に出るだろうから、店に寄りつかない恐れなしとしない。
 一方で、長期の休暇を利用して白神山地の周辺地域に遠出の旅行客が能代に宿泊する可能性もなくはないし、県外から帰省する人も多いはず。そこらあたりを見込んで、店の営業と自分の休みを見極める時期が近づいたわけである。
 帰省客をがっちりつかめ、連休後半の高校バスケの能代カップのにぎわいの恩恵を受ける居酒屋の休みは、「暦通り」。つまり日曜だけ休んで、後は通常通り。別の店は「月曜休業」で、連休明けに2日ぐらい特別休業を予定しているという。
 書き入れ時かもしれないが、飲食業をはじめサービス業の「休めない」「10連休は無縁」に同情を禁じえない。
 東京に所要の折、ビジネス街にある小料理店に張り紙があった。ゴールデンウイーク営業の案内で、「平成時代を振り返ると共に、改元を寿(ことほ)ぎ、お客様と一緒に新しい時代をお祝いしたい」として、30日から3日は午前11時から午後11時まで営業、特別コースを設け、振る舞い酒を準備してお迎えするとあった。都会から人が外に出る超大型連休への妙策とみた。
 かかりつけ医で会計を済ませると、「休みのお知らせ」を渡された。2日と6日は通常通りの診療とあった。しかし、連休中に生活習慣病の薬が切れて、27日前に受診に行かなければならないと分かった。連休対策を急ぐべきと知った。(八)


 

能代の選挙「中田・能登時代」の終焉

(4月9日)

 能代山本の県議選の結果の分析はさまざまあろうし、詳細は選挙戦の現場を駆けずり回った本紙の取材班の特集「激戦回顧」に解説を譲るが、昭和50年代からこの地域の選挙を見てきた一人として、改めて「ある終焉(しゅうえん)」に感慨を覚えた。
 昭和30年代から60年にわたって旧能代市に続いていた「中田・能登」の選挙の様相が消え、長い親子の政治の一時代が完全に終わったことと、前回に表れた政治の萌芽(ほうが)が着実に開いたことである。
 平成27年の選挙で、3期を務めた中田潤氏が落選。2位で6選を果たした議長経験者の能登祐一氏はその2年後に急逝、補欠選で能登氏の長女が出馬したが、今回トップ当選の吉方清彦氏に敗れた。
 その時、吉方氏は中田陣営の支持を得、「中田・能登の戦い」は続いたが、能登氏の長女の落選によって、中田潤氏の父親の初雄氏、能登祐一氏の父の直助氏の市議・県議の時代を含め旧能代市の政治の舞台から「中田」「能登」の名字が消えた。
 今回、その2つの名字が候補者擁立で出ることはなかった。能登家の最大のよりどころとなっていた土木会社が一昨年秋に倒産、中田潤氏は中田建設社長に本業復帰したからだ。
 そして選挙。中田家につながる人が吉方氏を熱心に応援したものの、会社組織や協力企業の集まりに支援の指示はなかったという。落選した自民党の後藤健氏に回った関係者もいた。
 一方、能登祐一氏と長女を支持してきた有力者の中には、祐一氏が長く率い、後藤氏が掲げた「能代自民」を離れ、同じ自民党でも旧二ツ井町の高橋武浩氏、三種町の佐藤信喜氏に代えた。山本郡では前回の能登、中田氏支持から郡内候補に旗幟(きし)鮮明にした人もおり、高橋、佐藤の両氏の当選につながった。
 奇(く)しくも、長く中田家の選挙に主体的にかかわってきた70代と、同じく能登家に関係してきた80代が、強力なライバルであり時に陣営が反目してきたことを振り返り、「中田・能登の時代は終わった」としみじみ述懐。今回の選挙に潜んだ一面を言い表したのだと感じた。
 補選の勢いに乗って圧勝した吉方氏、革新系・労組の砦(とりで)を守った薄井司氏、自民の高橋氏と佐藤氏、現職4人が「令和」の新時代に選挙と政治をどう築くのだろうか。新たな視点を持つとする。(八)


 

新元号「令和」からのイメージ

(4月3日)

 かかりつけの医院に2日、生活習慣病の診察に行くと、待合室の話題はやはりというべきか新元号だった。
 眼前のテレビは、新元号の選定作業で政府が示した6つの原案すべてが明らかになったと報ずるNHKのニュースで、新元号に決まった「令和(れいわ)」以外の原案は「英弘(えいこう)」「久化(きゅうか)」「広至(こうし)」「万和(ばんな)」「万保(ばんぽう)」の5つの案だったと伝えていた。
 80代の女性が「やはり令和がいい」と言えば、同年代の別の女性は「そのうち慣れてきて、納まりがよくなるはず」と話し、「万葉集からとったものだもの」とつぶやきが聞こえた。高齢者にとって概(おおむ)ね好感の持てる元号なのかもしれないと思った。
 前日、出会った30代の女性が新元号が決まるまでとその後のテレビの過剰とも言える報道に、「そんなに大騒ぎするものなの」と冷ややかであり、また「西暦でいいじゃん」と元号に否定的であったのとは対照的であった。
 「令和」の「和」からは誰もが願う平和を思い浮かべるが、「令」はイメージがさまざまのようである。
 広辞苑によれば、「令」の意味は①神のお告げや君主・役所・上位者のいいつけ②おきて。お達し③よい(よし)。清らかで美しい④おさ(長)⑤遊びごとのきまり⑥命令する──などと良いことと厳しさがあり、天皇制と神のお告げ、安倍政権1強体制と統制の強化をつなげたり、「令室」「令嬢」から尊んだ呼び方を想像したりと、人それぞれである。
 小欄は昭和の女優団令子さん(昭和10年─平成15年)が浮んだ。先日、NHKのBSで放送された黒澤明監督・三船敏郎主演の「椿三十郎」(昭和37年)に出演、若い武家娘役を演じ、その愛くるしさとはつらつさに何とも言えぬ親しみと希望を感じたからだった。
 そこから、人々がはつらつとして、世の中が穏やかな新しい時代であってほしいと「令和」に重ねた。
 新元号の出典は「万葉集」巻五、梅花の歌三十二首の序文で、引用文は「初春令月、気淑風和」(初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぐ)。近所の5本とわが家の1本の梅の木が小さな紅の蕾(つぼみ)をつけている。やがて咲き誇り、新時代を彩る。(八)


 

架空請求詐欺メールが届く

(4月1日)

 スマートフォンなる携帯電話を開くと、メッセージ機能に次の便りが入っていた。 
 「ご利用料金の精算確認が取れておりません。本日ご連絡がない場合、法的手続きに移行します。DMM CS 0368121602」
 何のこっちゃ、と思った。何かを使ったことの支払いが滞っているのか全く見当がつかない、それなのに今日中に示されている03の東京都内の番号に電話をよこせ、そうしなければ訴訟を起こす─事務的な文章の中に脅しが潜んでいた。
 「DMM」とは何ぞや。インターネットで調べると、「DMM・comグループ」というネット上でゲームや英会話、動画などを販売するサービス会社があったが、それらを利用した記憶はない。無料で遊べる麻雀ゲームをしたことと、ユーチューブで音楽を楽しんだことはあるけれど。
 2年前、ショートメールに「有料動画閲覧履歴があり未納料金が発生しております。本日ご連絡なき場合、法的手続きに移行します」と英大文字3つの社名の相談室から連絡があったのと同じ類いかと思った。
 あの時、周囲に話すと、怪しげでいやらしい画像を見たためだと疑惑を目を向けられたが、そのようなことはなく、若い人から「無視すること」と助言を受けたので、今回もそうすることにしたが、やはり気になった。
 そこで、ネットで再び調べることにし、「DMM CS」を検索すると、「ご注意、問い合わせしちゃダメ」や「怪しい登録トラブルに要注意!」という文言のある表示が並び、「DMM・com」とは一切関係のない不特定多数に送られてくる架空請求詐欺のメールであることが分かった。
 どんな手口で騙(だま)してくるのか興味を覚え、問い合わせしてみようか、仮に面倒事になったら相談所や警察に連絡したり、知り合いの弁護士に仲立ちを頼もうとも思ったが、やはり忠告どおりに電話連絡はやめた。
 名前や電話番号を知られては、当選やアンケート、偽情報伝言、ワンクリックなどのスマートフォンを狙う詐欺メールが頻繁に届きそうだから。
 無視から1週間。督促の偽装メッセージは届いていない。 (八)