「かましメシ」はどんな味

(12月18日)

 「そういえば以前、その方言をこの欄に載せたよな」と思い出して調べると、17年前の平成15年11月に掲載していた。タイトルは「かますのを忘れた彼女へ」で、その一部を再掲する。
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 ちょっとした懇談で若い女性が「すっごくうっすい焼酎の水割り」を作ってくれた。それだけでオヤジは舞い上がったが、彼女が発した言葉がまたうれしい。「あっ、かますの忘れた。ごめんなさい」。
 「かきまぜる」あるいは「スティアする」と言うべきところ、無意識に「かます」という方言を使ったのだ。それで、オヤジはニコニコしながら心の中で「うん、許す」とつぶやいた。
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 「かます」を何から連想したかというと、一般社団法人あきた白神ツーリズムが、能代山本の飲食店と連携して開発した新たなご当地グルメを「白神の恵み かましメシ」と名付けたことからだ。
 完成した六つのメニューは「あわびメシ」「ちゃんぽんスタイルもんじゃ」「豚なんこつのタコライス」「プルドポークライス」「極み炭火焼きピビンバと白神スープ」「豚なんこつ御膳」。全品を紹介した本紙記事では、「地元食材をふんだんに活用、調味料やスープなどをかけて味を変えて楽しめるのも特徴」とあり、プロの料理の写真はたいそう食欲をそそった。
 「かます=かきまぜる」ご飯料理の「かましメシ」。すぐ浮かぶのは韓国料理の「ビビンバ」。野菜のナムルに味付きのひき肉、キムチなどを一気に豪快にかき混ぜる人もいれば、食材の味を確かめながら少しずつ交ぜる人とさまざま。
 能代山本の「かましメシ」はどんな味わい深さだろうか。辛味や酸味を加えると、どのように「味変」になり、旨(うま)さが増すのか。興味津々。
 18日から提供するという。県のコロナ対策のプレミアム飲食券が少し残って楽しむとする。
 そして、わが家でも地元食材を使って「かましメシ」を作ってみよう。
                                (八)


 

〝おばくたがれ〟にならずとも

(12月12日)

 日帰り温泉の脱衣場で、男性はあまり他の客の着ているものを気に留めない。よほどの突拍子もない格好をしている人以外は。ところが、女性は他の人がどんな服装をしているのかよく観察しているらしい。
 知人は、休憩室で居合わせた中高年女性が脱衣場で何枚も服や下着を脱いでいるのを見て、「寒くなったとはいえ、あんなに重ね着するものなのかしら」と驚いていた。比して自分は薄着なのか、もう少し厚着をしてもいいのかしらと思ったらしい。今のところ暖冬傾向であるけれど、やがて本格的な寒さがやってくるのだから。
 70代になったすらりとした体形の女性が「おばくたがれ。って言われた。久しぶりに聞いた、懐かしい言葉だよ」と教えた。近場の温泉に行ったところ、脱衣場で自分より10歳前後年上のお年寄グループの一人が話したそうだ。
 彼女は薄着で長袖の下着ではなく、またストッキングも履いていなかったそうで、そのことを「おばくたがれ」と表現されたという。初めて聞く方言で、「どういう意味か」と問うと、「きだふり、と同じようなもの」と答えたが、語源は知らないという。「きだふり」は見栄っ張りのこと。
 県教委の「秋田のことば」に「おんばくもの、おんばくこぎ=見栄っ張り、おしゃれな人」があった。「枉惑(おうわく)=道にはずれた事をして人をまどわすこと」に由来すると説明している。
 一方、工藤泰二著の「読む方言辞典・能代山本編」には「おばくたがれ」が載っており、「お晴着集(たか)れ、晴着、美服、姿を良くする人をいう。派手好き」の意で、「きだふり」より古い言葉かと推測している。
 彼女は子どもの頃、1日に何回も服を取り換えることがあり、近所の人に「おばくこぎ」とよく呼ばれたそうだ。枉惑より、晴着集れが語源にふさわしいかもしれない。
 何にしても、寒い冬は間近。「おばくたがれ」にならずとも、防寒はしっかりと。彼女に件(くだん)の年輩者は「何年かすれば、おらみたいになる」と。(八)


 

首長選、来年の今頃はどう

(12月7日)

 任期満了に伴う知事選挙の日程が決まった。来年3月18日告示、4月4日投開票。これに合わせて秋田市など9市町の首長選も4月4日投開票になる見込み。
 知事選は、現職の佐竹敬久氏(73)が4選を目指して出馬することを県議会で正式表明、前衆議院議員の村岡敏英氏(60)が立候補を検討中とのことで、対抗馬として誰が名乗りを上げるのかが焦点となっている。
 知事選に刺激されてか、来春行われる市長・町長選挙の出馬への動きが加速している。秋田市は現職の穂積志氏(63)が4選を目指して、同じく4選に向けて北秋田市の津谷永光氏(69)、由利本荘市の長谷部誠氏(69)が出馬の意向を固め、近日中の各市議会で表明する見込みだという。秋田市ではすでに市議の武内伸文氏(48)が出馬を表明しており、選挙戦は確実な情勢だ。
 湯沢市は、かつて共産党公認の県議で、市長は合併前を含め通算3期の鈴木俊夫(70)が引退を表明、元市職員(52)のほかに、副市長(57)が立候補の見通しでこちらも選挙戦が濃厚らしい。男鹿市は現職の菅原広二氏(69)が再選に向け表明済み。
 こうしたニュースを得てか、知人が聞いてきた。「能代の市長選はいつだったけか」と。能代山本は市町村合併が遅れたことで、三種町と八峰町も含めて知事選とは重ならず、その翌年。「再来年の春」と答えた。
 来年どころか、再来年のことを言うのは、鬼に大笑いされてしまうが、彼は気になるのだろう。それは少子高齢化と急速な人口減、経済の縮小で地方の体力が弱くなっている中で、自分の住む地域の将来の姿を案じて、リーダーを誰に託すべきか、思いをめぐらしているからだろう。
 斉藤滋宣氏(67)が次も出るとすれば、能代市政の過去にない5選を目指す選挙である。多選が指摘されることは避けられない。意欲ある若手の挑戦、擁立はあるのだろうか。
 来年12月の今頃は、うごめいているはずだ。(八)


 

「ごしゃがれる」で「きまげる」

(12月2日)

 先日、仕事をしながらテレビニュースを聞いていた70歳を少し過ぎた女性が、「わいーっ、ごしゃがれで、きまげだべが」と声を上げていた。
 先月26日午後、行方不明になっていた東京都世田谷区の小学6年生の男子が、神奈川県横浜市のコンビニ店で無事保護されたという報道。少年は3日前の23日未明に自宅を出たまま戻らず、家族が警察に届け出て、顔写真を公開して情報提供を呼び掛けていた。
 冒頭の女性の言葉は、少年が兄弟げんかをして親から注意され、両親が就寝中に外出したとみられる、と報じられたことに対する感想だった。
 「ごしゃがれる」は「怒る」の秋田弁である「ごしゃく」の受動態で、「怒られる」と意味する。「きまげだ」は「怒る」あるいは「腹立つ」を言い表す「きまげる」の強調形。
 つまり、親に叱られて腹を立てた少年がこっそりと家を出たのではないか、そして帰るに帰れない状態になったことを案じ、無事の知らせにほっとしたようだった。
 「ごしゃぐ」も「きまげる」も案外出る方言だが、語源は分からなかったので、県教委の「秋田のことば」で調べると、「ごしゃぐ」は「後世を焼く」あるいは「五臓を焼く」が転じて訛(なまった)った可能性があるとしている。「きまげる」は「肝焼ける」の転訛とみられる。「五臓」も「肝」も焼けるほど心を悩まし怒ることを指すのだろうか。
 「後世を焼く」の「後世」は生まれ変わった後の世のことで、怒りや恨みが起れば後世を焼き尽くしてしまうので、これを慎むことを求めた仏教用語だという。
 少年と親の間にどんな言葉のやりとりがあったのか、家出するに至る切実の思いは、親の不安と心配はいかばかりであったのか。
 この能代山本でも過去に、親とのいさかいで子どもや若い女性が家出したり、冒険が過ぎた迷子があり、周囲を心配させてきた。そのことを思い出しながら、「ごしゃぐ」「きまげる」も必要ではあるけれど、慎重にと思った。

       (八)