噂に振り回されず自衛を

(2月26日)

 新型肺炎の集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」がテレビに映し出されると、女性店主は首を傾(かし)げつつ「県南の人だったね」と話した。
 ウイルス検査で「陰性」と確認された日本人は順次下船、居宅に帰った。その中に県南部の70代の男性と60代の妻がおり、帰県したとの報道があった。県は乗船していた人の居住地は発表していないが、取材には認めたらしい。その他に乗船者を県は明らかにしていないが、確認できていないようである。
 冒頭の店主が意外そうな表情を見せたのは、自分が得ていた情報と異なっていたかららしい。「あれはデマだったのか」と思ったのか、情報を持ち込んだ人の顔が浮かんだのか、その話題は避けられてしまった。
 中高年のリタイア組にクルーズが人気で、横浜港発着で乗客乗員3700人余りのダイヤモンド号であれば、秋田県人が乗り込んでいる可能性はあり、感染が判明して横浜港で検疫が行われている頃から、県内テレビは秋田県人の乗客がいることを報じていた。
 それが、いつの間にかまことしやかに能代山本の特定地域だと話す人が出て、口コミやパソコンやスマートフォンを使った情報サービスによって拡散したらしい。
 1週間ほど前、なじみの店に寄ると、顔見知りの4人が飲食を楽しみ四方山(よもやま)話に花を咲かせていた。やがて新型肺炎に話題が移ると、ある男性が「クルーズ船にあの地域の人も乗っている」と話し、他の3人が「エーッ」と驚きの声を上げた。
 どこからそのことを拾ってきたのかは分からないが、それなりの立場の人だから、周囲は不確かな情報を確かなものと信じたようだった。それを聞いたのがおしゃべりな人だったとしたら心配を話題の種にして教えるかもしれない。そして別の人に別の人にと。
 過剰な反応は自制すべきだろうし、「陰性」段階の情報を詳しく発表するのは一考を要する。一方で「陽性」が判明した場合は、感染警戒のために一定の公開は必要である。
 感染の拡大で不安は日々募る。噂(うわさ)に振り回されず、自分でできる対策をしっかりとしたいものだ。   (八)


 

「火口のふたり」と釜谷浜の風車

(2月21日)

 「R18+」つまり映画倫理委員会が刺激が強いとして18歳未満が見ることを禁止している映画を話題にすることに対し、批判もあるだろうが、能代山本がロケ地になっていることに気付き、感想を報告する次第である。
 通信社から先日届いた「DVDあらかると」に「火口のふたり」があった。
 「白石一文の小説を脚本家でもある荒井晴彦が映画化。東日本大震災から7年、再就職先も倒産した永原(柄本佑)は、かつての恋人、直子(瀧内公美)の結婚式のため秋田に帰るが、成り行きで体を重ねてしまう。災害への不安感と、どうにもならない男女心理を突く」と紹介していた。
 白石の作品は直木賞受賞作の「ほかならぬ人」や震災後の生と死を鋭く問うた「幻影の星」など何作か読んでおり、そこに「秋田」が舞台と知り、がぜん興味が湧いて、インターネットで映画を検索して予告編を見た。
 すると、見覚えのある砂浜と風車の風景をバックに、主人公が流木に座ってしんみり言葉を交わすシーンが出てきた。三種町の釜谷浜に連なってそびえる風力発電所だった。
 人気俳優の山田孝之がプロデュース、阿部進之介が主演し、昨年公開された「デイ・アンド・ナイト」では三種町もロケ地に選ばれ、釜谷浜の風車が何度も映し出された。制作支援実行委員会も設立されロケにも協力した。
 しかし、「火口のふたり」で釜谷浜にロケに来ていたことは、予告編を見て初めて知った。
 原作では舞台は福岡県であったが、映画は秋田県に。そこでプロデューサーや監督が男女の心模様を描くのに効果的な場所を探し、秋田市の古い商店、羽後町の西馬音内盆踊り、釜谷浜の風力発電を選んだらしい。主演の柄本が「これからどうするべきか」と悩む場面の風景は能代港とはまなす画廊だった。
 ロケがほとんど知られなかったのは、主人公2人以外出演者がいないこと、濃厚な性描写のある作品のため遠慮したなどがあったと推測する。
 作品を見る見ない、評価はさまざまであろう。だが、遠くに男鹿の山々、砂浜、そしてゆっくり回る風車は揺らぐ人の心に重なる風景であった。 (八)


 

あの人この人に戸惑いや不安

(2月16日)

 毎月1回は顔合わせする人が悩んでいた。正月休みも十分取れなかったので、夫婦で遠出の旅行をしようと提案したところ、奥さんが「どうしようか」と迷っているのだという。
 その理由は、中国・武漢で大発生し、日本でも感染者が出ている新型肺炎。主要な行き先の県では感染者は確認されていないが、外国人も訪れる有名観光地も含まれるので、「今の時期は」とためらうらしい。
 先輩が「大丈夫だべが。早く収束してけれればいいのに」と話した。神奈川県の中核都市に住んでいる息子からメールが来て、乗客乗員3700人で日ごとに感染者が増えている大型客船「ダイヤモンドプリンセス」が停泊する横浜港まで直線距離で20数㌔と知らされて、案じたのだ。
 「クルーズに乗る人、これから少なくなるのでは」と観光に詳しい人が予想していた。能代山本からも各地の港発で3泊4日、1週間、1カ月の豪華クルーズに参加する夫婦、リタイア組も少なくないそう。それが今回の感染の広がりによって、しばらくは取りやめるケースが増えるとの見方だ。
 外国航路ではないが、能代港には昨年、国内港を巡るクルーズ船が4隻入港しており、余波はあるだろうか。
 「どうなるかしらね」と話す人がいた。縁者が勤務するメーカーの製造子会社が新型ウイルスの影響で中国製部品の一部が調達困難になり生産ラインを一時停止したとのニュースに対して。昨年12月末には保釈中の前会長が国外に逃亡する騒動、さらに業績予想の下方修正が発表され、社長がリストラを示唆、心配が募るのだ。
 知人が「高くなったよ」とぼやいていた。仕事上、パソコンは欠かせず、本人自身もパソコンを趣味にしているそうだが、メモリーなるデータを記録する部品をはじめパソコンのパーツが値上がりしているという。生産工場の多い中国から入ってこないため、品薄状態となって価格がつり上がっているらしい。
 新型肺炎は沈静化する気配になく、むしろ拡大が懸念され、影響も見通せない。それゆえ能代山本でも、さまざまなところで戸惑いや不安、懸念が語られているのだ。(八)


 

秋田の方言で創作かるた

(2月11日)

 6日付小紙社会面の「言葉も絵もほのぼの」の見出しに引きつけられ、能代市文化会館に行き、ロビーで開かれている市中央公民館主催の創作かるたコンテスト作品展示会を見た。
 コンテストは4回目だが、今回は「秋田の方言」がテーマで、どんな方言が出てくるのか関心が湧き、初日に行くつもりだった。けれどスケジュール表に書き込んでおらず、失念してしまったのだ。
 読み札と絵札がセットになったオリジナルを募集したところ小学生から大人まで154点が寄せられた。読み札にそれぞれの心がこもっていて、その気持ちが絵札に上手に表現され、思わず微笑(ほほえ)んだり感心したりした。
 「『へばなぁ。』ばあちゃんとのサヨナラの合い言葉」。最優秀賞に選ばれた浅内小3年の大塚咲來さんの作品の絵札は、ニコニコ顔のばあちゃんが手を振ってバイバイしている姿で、背景には桜の花びらが舞っており、祖母と孫の情の通じが伝わってきた。
 「へばなぁ」については、一昨年9月の小欄でも取り上げている。能代市に住んでいた曽祖母が亡くなり、関東圏から葬儀に参列した小学3年の女児が、家族や親戚との交流で聞いた方言をノートに書き留め、お気に入りの言葉は「ひば」だったと祖母が語ったエピソードである。
 「へばなぁ」「ひばにゃ」と言う「へ(ひ)ば」は、別れのあいさつの「さようなら」の意味だが、「じゃあ、またね」と再会の機会が必ずある、絶対に会おうねの願望が強くあるように思う。最優秀賞の大塚さんも、方言をノートに書いた都会っ子も、そこに気付いているから、「ひば」「へば」に興味を覚えたのだろう。良い方言として残るはずだ。
 優秀賞の「け!一文字で伝わる最高の秋田弁」「ごんぼほりいい子にさせるなまはげさん」も方言を上手(うま)く使った作品。笑ったのはイラスト賞の「しゃっけぇシャケ喰(く)いたぐねぇ」。選には漏れたが、「んまいもの納豆にねぎまますすむ」。能代の特産に方言を絡ませ宣伝になる。
 コンテストが回を重ね、群馬県民がそらんじ大会が続く上州かるたのように、「能代かるた」が誕生することを夢見る。           (八)


 

中高年のスマホの学び方

(2月6日)

 昨秋、スポーツに一汗かいて、チョコレートやらお菓子をみんなで食べ合う「もぐもぐタイム」で、仲間の女性がスマートフォンをいじりながら、隣の人に誘いをかけていた。スマホの使い方を互いに教え合いする場に参加しないかと。勉強会はまだ続いているだろうか。
 先日、近場の温泉に行き、とりあえず休憩室でくつろごうとすると、先客の3人の中高年女性がいずれもスマホを手にして、無料でメールを楽しめるラインなるサービスを使って、「友達になった」とか「あの人ともつながった」と話し、着信音を聞いて「来た来た」とはしゃいでいた。
 こちらが風呂から上がって部屋に戻っても、まだ使い方の「教え合いっこ」を続け、「これはどうすればいいのか」「スタンプは送るにはどうするの」などと解決法を探っていたが、3人とも初心者らしく、うまく事が運ばない様子で、ようやく重い腰を上げて、風呂場に向かった。
 多機能のスマートフォンは、若い人であれば使用方法の取得が素早く上手に使いこなしているが、中高年はどれほど対応できているだろうか。息子娘や職場の若い人に教えてもらう人もいるが、それとて時間が限られるし、息子の嫁さん、娘の婿殿からは覚えが悪いのであきれられることなきにしもあらずだ。
 本を取り扱う店にはスマートフォンの「超入門」や「完全マニュアル」などの初心者にもよく分かるように説明する書籍が並んでいるが、周囲にはそれを購入して学んでいる人はおらず、そこまでの意欲は湧かないらしい。
 結局、同世代の気心の知れている者同士が、乏しい知識と操作を教え、ちょっとずつ補って、技術を向上させていくということになっているようだ。
 小欄のスマホに登録していない番号からショートメールが届いた。内容は「お宅様宛にお荷物のお届けがありましたが不在の為持ち帰りました。下記よりご確認ください」で、接続を求めていた。友人に尋ねると、宅配業者を装って情報を流出させる不正なものだと指摘を受け、消去した。
 さまざまな手口でスマホから誘う犯罪の防止策こそ学びたい。冒頭の女性たちも。(八)


 

新型肺炎の不安広がるが

(2月2日)

 体のだるさは正月疲れと思っていると、鼻水が出て、また咳(せ)き込むことが多くなった。11月にインフルエンザの予防接種を済ませているので大丈夫だろう、体を温めて睡眠をしっかり取れば治まると2日間放置したが、治る気配はなかった。
 予防接種をしてもインフルエンザに罹(かか)るケースがあるということで、仮にそうなったら5日間家に閉じこもらなければならなくなり、仕事に穴を開けては大変と思い、ようやくかかりつけ医に駆け込んだ。10日前のこと。
 体温計は37・3度と表示。看護師からインフルエンザの検査キットで鼻の奥をほじほじされた後、少しして「陰性です」と言われ、ほっとした。診察の結果は「普通の風邪」。喉が腫れているようだと家人に言われたが、触診では何ともなし。薬局で熱を下げ、鼻水・鼻詰まり、咳を改善する顆粒(かりゅう)と錠剤を5日分朝昼夜飲むように指導された。
 その頃、中国の湖北省の省都で人口約1100万人の武漢市でのコロナウイルスによる新型肺炎を話題にする人は周囲にあまりいなかった。むしろ、正月明けから広がって学級閉鎖や病院・介護施設での面会制限をもたらしたインフルエンザに関心が高まっていた。
 それが、今では中国武漢発の新型肺炎に移った。日に日に感染者と死者が拡大、世界に広がり、日本でも感染が確認され、武漢からチャーター機で帰国した日本人が2週間程度ホテルや国の施設に滞在される事態となり、それをテレビが朝から深夜まで報ずるから、黙っていても情報通になってしまうのだ。
 そこから、どうすれば防御できるかを学ぶことは大事だが、知人のように「能代はどうなる」と、東北の地方都市や田舎にまで感染が広がるのではないかとの心配を募らせたり、県内に武漢ではなくとも中国から帰って来た人がいるのではと推測する人がいたりで、不安が広がってきた感じだ。
 普通の風邪が完治して、外出先から帰れば手洗いを今まで以上に丁寧、うがいもこまめになった。マスクも準備した。正しい情報と日本の医療があれば、地方はしのげると信じるのだが。 

                                (八)