「だおらだおら」になる前に

(8月28日)

 連日の真夏日、30度超え。県内では35度以上の猛暑日の地域も。熱中症の疑いで救急搬送される人が増え、秋田市では草刈り作業をしていた30代の男性が休憩中に意識を失い重体になったという。
 実はお盆期間中に、通路や庭にどんどん伸びた雑草を取った。涼しい午前中だったものの、日差しが強かったためすぐに汗が噴き出し、水分補給しながら作業を続けたが、疲れがどっと出てきて、小一時間でやめた。我慢せずにもっと続けたらどうなっていたか。秋田市の男性のニュースを知って、ぞっとした。
 同年代の女性が、知人の男性を心配していた。「だおらだおら、って歩いていた。大丈夫だったがヤー」と。暑い日中に歩く姿がどうにも頼りなく、見ている方が心配になってくることを語ったのだ。
 秋田の方言辞典によると、「だおらだおら・だおだお」は「撓(しな)う様子」のことで、長い物が揺れてたわむ、あるいはたるんでいる様を表すとのことで、女性の表現とは一致しない。
 一方で、冨波良一著の「採録能代弁」では、「だおらだおら」のほかに、「たおらたおら」があり、その意味を①か細くてひょろ長で、頼りない様②なよなよしてひ弱な様③いまにも倒れそうで危なっかしい様──と説明している。女性が見た知人男性は③に該当するが、能代弁では濁音になる言葉もあり、「たおらたおら」のより強い言い方として「だおらだおら」になったと解釈する。
 ふと、小欄で以前に書いた夏バテに当てはまる秋田の方言を思い出した。「よろける=衰弱する」と同義の「がおける」で、「我折る」からきているという。「我張る(頑張る)」の反対で、「意気喪失し、気を張って事に当たれない状態になること」と県教委の「秋田のことば」は説明している。他に衰弱する様を「ふくらふくら」とも言う。
 厳しい暑さはなお続きそう。今しばらく「だおらだおら」や「がおける」にならないように身を案じ、熱中症対策を万全にしたい。(八)


 

ミョウガ三昧の日々

(8月23日)

 AAB秋田朝日放送の情報番組「サタナビっ!」で22日、能代市の「白神みょうが」の収穫作業が中継された。
それを見ていた女子社員がミョウガ畑が「あんなふうになっているんだ」、ミョウガは「あのように生えているんだ」と物珍しいといった表情で語っていた。ミョウガ畑もミョウガの収穫もテレビを通じて初めて擬似体験したのだ。
 お盆入り前に、盆棚に供えるスイカを頼んでいた知人農家に寄ると、「スイカは後でいいから、ミョウガを採っていって」といわれ、1㍍以上も伸びた畑に入り込んで、なぎ倒しては底の根っこと稲わら近くにちょこんと顔を出したミョウガを摘んではまた摘んだ。暑く蒸す日で、5分も経たぬうちに汗だくになり、ミョウガの収穫の難儀さを多少なりとも実感した。
 彼は、農作業場に訪ねて来る人に、とくに若い世代に積極的に収穫体験させているそうで、ミョウガ畑の一部がすでに倒れていた。
 三種町ではジュンサイの摘み取り体験が行われているが、能代でも特産のミョウガの収穫体験・教室があってもいいのではと思った。
 何しろミョウガはさまざまな料理があって、どれもが美味(おい)しく、しかも、刺し身のツマや冷やしうどん・そばの薬味程度ではなく、産地ならではのどっさり・目いっぱい食べられるのだから。
 知人の畑で収穫した翌日、遠縁の高齢女性から野菜のお裾分けの電話が入り、出掛けるとビニール袋いっぱいのミョウガを渡された。
一番良質な畑近くの県道にクマが出没したそうで、屈強の知人を伴って急ぎ採ってきたという。「怖くて怖くて、もう畑に行けない」と泣きそうな顔をしていた。
それやこれやでお盆以降はミョウガ三昧(ざんまい)。ホカホカのご飯に生ミョウガのスライス、そこにカツオ節とバターに醤油(しょうゆ)を一回し。ツンとくる香りにシャキシャキの食感は絶妙の味だ。おひたしに油炒め、出汁(だし)醤油漬け、味噌(みそ)汁…。
 食欲増進、消化促進、血行良好、疲労回復のような気がする。(八)


 

「少年時代」流れる残暑見舞い

(8月19日)

 ピアニストが弾き語りをするFMラジオの番組から、懐かしいメロディーが優しく流れてきた。シンガーソングライターの井上陽水の「少年時代」。自然と口ずさんでいた。
 ♬夏が過ぎ風あざみ/誰のあこがれにさまよう/青空に残された私の心は夏模様(略)夏まつり宵かがり/胸の高なりに合わせて/八月は夢花火私の心は夏模様…。
 同時に、この曲が主題歌となった30年前の同名の映画を思い出した。
 作家柏原兵三の小説「長い坂」を藤子不二雄Ⓐが漫画化し、それを篠田正浩監督が映画化した。太平洋戦争末期に東京から富山に疎開した少年と地元の少年の友情と葛藤を描きながら、子どもの目から戦争を問うていたようにも記憶する。そして、本紙社会面に連載中の能代山本の住民が語る「戦後75年 私と戦争」と重ねた。
 その井上陽水の「少年時代」の歌声をバックにした動画がスマートフォンを通じて、ラインという仲間内の通話に今は山陰地方に住んでいる同級生から送られてきた。残暑見舞いであったが、情報通信技術の高い人は手書きのはがきではなく、ラインなのだ。けれど、これが思いがけなく心に響いた。
 映像は深緑の森、その中に注ぐ木漏れ日、鋳物の風鈴、かき氷店の暖簾(のれん)とイチゴミルク、夏空と雲の連なり、砂浜で戯れる男の子、打上花火の大輪、夜空を流れる天の川、雲海の上に浮かぶ太陽、青い湖沼、揺れるピンクや白の花々…。そこに「お元気ですか」から始まる残暑見舞いの文章。
 東南アジアで働いた頃の友人から来たのを転送したそうで、出所は分からないが、ふるさと能代に送る文章にも思えた。
 「長い梅雨があけて猛烈な暑さになり、マスクや手洗い、ステイホームで今年は例年以上の厳しさですね。連日のニュースに暗い気持ちになってしまう事もありますが、きっと大丈夫。乗り越えられると信じています。希望を持って日々を過ごそうと思っています」。
 こちらもそういう心持ちとする。(八)


 

東京から届いた「やばいよ」情報

(8月13日)

 テレビに出演する若いタレントがやたらと「やばい」と発する。それが影響してか能代山本の子どもたちも「やばいよ、やばいよ」と叫ぶ。
 それも、ランチやデザートを食べて一般的には「おいしい」と言うところを「やばい!」と。誰かが面白い動作や表情をすると、「やばいよ」と。
 本来は「不都合である。危険である」ことを言い表すが、この頃は喜怒哀楽の驚きの表現として何でもありで使われている印象がある。それを嘆かわしいことと話せば、年寄りが戯言(たわごと)を抜かしていると難じられるか。
 知人に東京都内に住む能代出身者からメールが届いた。「東京の暑さはやばいよ」と。コロナ禍でお盆帰省は控えたが、連日の猛暑。幼い子どもを抱え、一日中エアコンを付けて暮らしているが、買い物や息抜きに散歩に出掛けることがあり、炎暑の厳しさにうんざりするらしい。
 メールが送られてきた11日は、群馬県の伊勢崎市と桐生市で最高気温が40・5度、東京都内では青梅市や八王子市で39度台、都心でも37度台。体温を上回る暑さで、熱中症で搬送される人が相次いだ。「ちょっと外に出たけれど、焦げる感じ」とも伝えてきたという。
 コロナが終息していれば、故郷に帰って、熱暑であっても時折爽やかな風が吹く能代で避暑気分を味わえたはずなのに、と40度超えの群馬県に数年居住していた知人は言う。
 環境省と気象庁は11日に続いて12日も、熱中症の危険性が極めて高くなるとして、東京や千葉など1都7県に熱中症警戒アラートを発令した。アラートとは「警報・警告」のこと。
 小池百合子都知事が盛んに呼び掛けていたコロナの警戒情報「東京アラート」は、なぜか使われなくなったが、感染の再拡大でコロナもアラート、そこに熱中症のアラートである。
 田舎の親は、都会で暮らす子に二重のアラートを心配しているだろう。マスクを多用する今夏、「体調への気配りを十分にして」と。(八)


 

河川被害の多い街、能代3位

(8月7日)

 本紙の記事やコラムを読んだ感想と疑問を時折伝えてくる顔見知りの80代の男性が先日、本社を訪れ、小欄宛に1枚のコピーを置いていった。
 週刊朝日の8月7日号の1ページ。二つの表が載っており、一つは「10年間で河川被害がなかった主な街」、もう一つは「河川の被害が多い街ランキング」だった。
 そこで、二つの表に目を凝らすと、驚きの表示があった。「河川の被害の多い街」のランキングの東日本の部で、能代市が何と3位だったのだ。
 能代市では1972年7月の米代川の堤防決壊による水害、二ツ井町では1979年4月の同川の融雪洪水をはじめ、悪戸川や桧山川など米代川流域でしばしば河川被害が出ているが、各地の河川の大規模な氾濫・越水の情報を得ているからか、能代が全国上位になるほどではないと感じていたので、何かの間違いではないかと思った。
 週刊朝日によれば、ランキングは国土交通省の「水害統計調査」の2009年から2018年分を基に作成したとのこと。能代市はその10年間の全部の年で被害があり、被害額の合計は8億4000万円。
 千曲川が流れる長野県上田市、多摩川沿いの東京都世田谷区も10年連続の被害があったが、被害額の順で1位が上田市(49億3000万円)、2位が世田谷区(24億6000万円)となり、能代は3位に。
 ちなみに県内都市は鹿角市が6位(被害9年・11億3000万円)、大仙市11位、秋田市15位、大館市18位で被害額合計はいずれも能代市を大幅に上回っており、能代の場合は被害規模が小さいことがうかがわれる。
 データに一抹の疑問もあったので、国土交通省のホームページから水害統計調査の市区町村別水害被害を調べると、確かに能代市は10年間連続して宅地や農地に被害があり、納得した。
 コピーを届けてくれた知人は、能代の歴史とデータを踏まえ、「水害に備えよ」と警告していたのだと理解した。(八)


 

根性なしは初日あきらめ

(8月2日)

 「根性がないね」とあきれられるだろうが、とりあえず初日はあきらめた。能代市が1日から販売したプレミアム商品券「のしろ地域振興券」の購入を。
 同振興券は、コロナ禍で冷え込んだ消費意欲を喚起する施策で、額面1000円の13枚セット(1万3000円分)が1万円で販売、限度は1世帯3セットまで。9年前の東日本大震災の年の7月、12月をはじめ、振興券は過去何度か発行されているが、特典のプレミアムは大概が10%。それが今回は30%と大幅アップ。
 ぎりぎりの生活を強いられている人も年金暮らしのお年寄りも、子どもに何かと出費の多い世代も、お金を買い物に各種サービスに使わざるを得ないのだから、1万円が1万3000円になる振興券は魅力的である。 
 というわけで、購入引換券と3万円を持って、職場近くのコンビニ「ファミリーマート」に出掛けたが、販売開始の午前10時の15分前だというのに100人以上の列にびっくり。その後、続々と人が集まり、販売時間には自分の後にさらに100人が並んでいた。商品券とはいえ現金と同格であるから、慎重に扱っているのだろう。列は遅々として進まなかった。
 すると、振興券は24時間販売するとのチラシが貼られ、また市役所の担当者が市内の全世帯の8割に行き渡るよう用意しており、慌てて買い求めなくても手当てできる旨を口頭で説明した。それを機に何人かが列を離れ、自分も帰ろうとしたが、知人女性に「帰るんですか」と驚かれ、己は並べない根性なしと知った。
 昼すぎ、同じ店に寄ると、外の列は10人ぐらいだったが、店内は長蛇の列。別のファミマは新たな手当てがつく午後5時からの販売とあり、初日退散となった。
 人が並ぶ、早く購入しなければ─そうした心理も働いて初日の騒動となったが、市民が地元の店に目を向け、沈滞している地域の経済が循環していくことを期待して、2日目に並ぶ。(八)