
原発、洋上風力巡る議論
先月30日に開かれた能代商工会議所の新春講演会は、政策アナリストで元経済産業省職員の石川和男さんの持論に対し、異論や質問が投げ掛けられ活発だった。原発の安全性や洋上風力発電の推進方法、地域活性化につながる企業誘致など、従来の考え方とは異なる視点で議論が深められた。
原発、洋上風力ともに反対という八峰町議は、化石燃料より原発が安いという石川さんの意見に絡み、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の安全性について質問。処分場選定の調査が行われた北海道寿都町と神恵内村の地域振興アドバイザーも務める石川さんは、原発はシステムとして安く、処分場の安全性も世界共通の技術標準で「99・9%安全」と断言した。脱炭素のための再生可能エネルギー利用については「人類の技術発展の材料に使うぐらいの考えでいいのでは」と述べた。
原発、洋上風力ともに賛成の能代市議は、能代など洋上風力発電の関係自治体で構成する協議会が国に洋上風力を電源立地交付金の対象とするよう求めていることについて意見を求めた。
石川さんは、洋上風力を交付金対象とするには国に強く訴える必要があるが、再エネFITに加えて交付金があるのは支援が手厚すぎることを指摘。水力に交付金があるのは「声が大きかったため」と理由を説明した。企業誘致にも言及し「今は人手不足なので、雇用を生まない業態を模索すべき。洋上風力は技術が国内になく、サプライチェーン(供給網)の構築が難しい。再エネは歯が浮くような言葉で広がり過ぎた。一歩下がってクールにやる方がうまくいく」と従来の雇用創出型の企業誘致の考え方と異なる視点を提供した。
石川さんの専門知識に裏打ちされた率直な発言が参加者の意見を引き出し、深い議論へと発展した。「99・9%安全」との主張には実際はリスク評価など議論の余地があると感じたが、重要なのは単なる「賛成」「反対」の枠を超えて、具体的な課題に踏み込んだことだ。地域経済の在り方を考える上で重要な示唆を与えてくれる講演だった。
(若狭 基)