再エネ、地元に恩恵を

 能代市浅内の「能代船沢発電所」で発電した再生可能エネルギー由来の電力が、リケンNPRグループ企業に売られることになった。能代産の電力が20年間にわたって、本県を除く東北エリアに全量供給される。「電力の地産地消」は理想だが、再エネの価値と市場原理によって地場産の電力が市外へ流出しているのが現状だ。

 大手企業が二酸化炭素排出量削減のために風力発電などの再エネ電力を求め、東北電力がそのニーズに応える形で能代でつくられる電力を県外に販売するのが今回のケースだ。地元資本の同発電所は長期間安定した収益を得て、リケンは脱炭素の目標達成のため多少高くてもグリーンエネルギーを確保できる。東北電は両社の間に入って手数料を得るとみられる。ビジネスとしてはウィン・ウィン・ウィンの関係だが、地元で生まれた電力が地元で消費されないジレンマがある。

 再エネの「地消」には地元で購入できる仕組みが必要だが、市場原理と制度設計がそれを阻む。再エネ電力は環境価値が上乗せされ高値で取り引きされるため、結果的に資金力のある大企業に流れやすくなる。一方、県内企業の多くは追加コストを負担できず、再エネ利用のインセンティブが乏しくなる。

 日本の再エネ政策は固定価格買取制度(FIT)から市場連動型のフィード・イン・プレミアム(FIP)に移行しており、これが「地産地消が進まない問題」に関係している。

 FITは送配電会社が電力をすべて買い取る仕組みで、誰が使うかに関係なく全国の送電網に流れる。しかし消費者が負担する再エネ賦課金の増大を受け、市場価格にプレミアム(補助金)を上乗せするFIPに移行した。再エネ事業者は電気を売る相手を自ら探す必要が生じたため、高値で買う大企業との直接契約が増え、地方の地産地消が進まない要因となっている。

 八峰町・能代市沖の洋上風力発電プロジェクトでもFIPが導入されるが、このままでは「風車が増えても地元に恩恵がない」という不満が残る。行政は再エネを推進するなら、もっと地元への利益還元を考慮すべきだ。再エネ発電地の優位性を生かしつつ、「地元で使える仕組み」を整えることが本当の地域活性化につながるのではないか。

(若狭 基)

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