春花の風景 2025能代山本⑫

岩子地区の桃(八峰町) 手塩にかける

鮮やかに咲く桃の花が、春の青空に映える(1日撮影、八峰町峰浜の岩子地区で)
鮮やかに咲く桃の花が、春の青空に映える(1日撮影、八峰町峰浜の岩子地区で)

 八峰町峰浜の岩子地区周辺で、桃が鮮やかに花を咲かせている。家々の庭先や畑などに植えられた桃と、スイセンや枝垂れ桜、モクレンなどが共演する様子は、山里を色彩豊かに貫く「花見ロード」のようで、住民やドライバーの目を楽しませている。
 岩子地区は、江戸時代の紀行家、菅江真澄が「武陵桃源のものがたりに似たり」と記した手這坂集落へ向かう途中にある。桃の花園へと誘うように、桃の木を植えている民家が少なくなく、赤やピンク、白の花を咲かせる。
 同地区の田崎春美さん(77)、蕗子さん(77)夫婦宅は、20本ほどの桃の木が庭や畑を彩る。手這坂の住民から1本の桃の苗木をもらって植えたのが最初といい、この1本から種が落ち、芽が出た。「1本だと寂しいし、せっかくだから植えた。やり始めたら、やめられなくなった」と春美さん。実生の苗木を大切に育てては植え、本数を増やしてきた。
 夫婦で丁寧に手をかけてきた庭をゆっくり眺めようと、春美さんは大工の腕を生かしてテーブルやベンチを作った。今年は桃が鮮やかな赤い花をたっぷりと咲かせた。梅や枝垂れ桜、八重桜といった花木も植えられ、スイセン、菜の花、シバザクラ、シラネアオイも彩り、「今年はいっぺんに咲いたね」と顔をほころばせた。

(渡部 祐木子)

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