2022五差路

2023五差路

 

何度経験しても

(2021.11.26

 異例の短期決戦となった衆院選、9年ぶり能代開催の県種苗交換会が終わったのもつかの間、編集局は来年1月1日に発行する新年号の制作に入った。
 元日の新聞は、各社とも郵便受けに入り切れないほどのボリューム。北羽新報の場合、普段の1週間分に相当する面数に上る。
 作業を開始するのに当たり今月12日夜、編集会議を開いた。支社、支局勤務を含む報道、整理部記者が顔をそろえたこの日、紙面構成などを確認、それぞれの取材担当を決めた。
 新年号ではその年に行われる選挙を取り上げている。来年は能代山本3市町の首長選と議会議員選、参院選と目白押しだ。また、恒例の市民アンケート調査の結果や、東部、南部、北部担当記者が地域の話題を掘り下げ取材した「ニュースの風」も例年通り掲載を予定している。さらには子どもやスポーツにスポットを当てた特集、正月にゆったり解いていただきたいクイズなども。
 詳しい内容は明かせないが、各記者が独自の発想や着眼点で取材、アイデア凝らした紙面を楽しみにしていてください。
 その制作作業は、これから佳境を迎える。毎日の新聞作りをしながら、世の中が休みで原稿量が減る年明け直後をカバーする記事や新春企画もこなさなければならず、師走の編集局は多忙を極める。
 増す仕事量に「できるだけ要領良く」と心掛けても、うまくいかないことが多く、気が抜けない日々は大みそかまで続く。それを乗り越え、完成した新年号を手にし味わう解放感は、何度経験しても気持ちいい。(工)


 

想定外の9年後

(2021.11.18)

 能代市を会場にした県種苗交換会は、新型コロナウイルス感染拡大防止で規模縮小を余儀なくされたが、本県農業の底力を結集し第144回目と歴史をつないだ。
 種苗交換会は県内9地区を輪番のように回り、能代市(能代山本地区)は9年ぶり。10年ならぬ「9年ひと昔」で地域の変遷を思い起こせ、前回開催された平成24年の年の瀬の「記者メモ」で、自身の子どもの頃からの交換会の思い出や取材を通し感じたことを記しながら、「9年後、能代はどうなっているだろうか」と締めくくっていた。
 しかし、能代がどうこうどころか、コロナ禍で世の中全体が大きく変わった。感染拡大防止で人流の抑制が叫ばれる中、主催するJA秋田中央会は昨秋の横手交換会同様、対策を講じながら開催を決断した。
 農産物出品点数の減少や農業機械化ショー、植木苗木市など恒例催事の中止があり、従来に比べると寂しい内容だったものの、1週間の会期で40万人以上が訪れたのは、伝統ある「農業の祭典」の存在感を示した。
 会場周辺の人出に、市民からは「能代にこれだけ人が集まるのはいつ以来だろう」との声が聞かれ、地元PRブースでそばを提供していた鶴形地区の女性たちは「久しぶりで、作り方を忘れてしまった。慣れた頃には終わってしまう」と笑顔で、注文に追われていた。
 市街地でも交換会に合わせイベントを企画し、にぎわいを創出していた。新型コロナの感染リスク回避をと行事の見送りも相次いだが、「どうしたらできるか」知恵を絞り、軌道修正しながらも前を向く動きが増えてきた。(池)


 

にぎわう街に感慨

(2021.11.6)

 「言葉にできないですね…」。能代市の能代駅前~畠町通りで先月30日開催された歩行者天国イベント「第1回のしろいち」を主催した能代駅前商店会の事務局、阿部誠さん(42)=お仏壇の千栄堂=は、大勢の人でにぎわう会場の様子を感慨深げに見詰めていた。
 のしろいちは、畠町通りに昭和以来のホコ天を復活させ、中心市街地のにぎわい創出を狙った企画。広い車道や歩道、空き店舗を有効活用しながら、手作り雑貨などの「市」、屋台・キッチンカー、ハロウィーンパレード、ダンスやバンドのステージ、3x3バスケ体験など、多彩な催しを繰り広げた。
 午後1時の開始とともに、屋台やキッチンカーの前には順番待ちの長蛇の列。人気のダンスステージは黒山の人だかりができた。県種苗交換会の協賛イベントとして市外からも相当数が来場したとみられ、「これぐらいの人を見るのはコロナ以降、初めて」「能代にも、こんなに人がいたんだ」との声があちこちで上がっていた。
 阿部さんは、駅前の空き店舗をリノベーションしたマルヒコビルヂングを拠点に、周辺の空き店舗と開業希望者を結び付けようと取り組む合同会社のしろ家守舎(やもりしゃ)の一員でもあり、今回のイベントには、中心市街地がまだまだ可能性のある場だとアピールする狙いもあった。阿部さんは「目指してきた光景を今回、つくり出すことができた。これを弾みに、空き店舗で新しいことを始める『仲間』を増やし、街なかを変えていきたい」と語る。
 のしろいちは今後も第2回、第3回と続ける予定。それが街なかにどんな「化学反応」を起こしていくのか注目だ。(平)


 

「一票を大切に」呼び掛け

(2021.10.30)

 「選挙のめいすいくん」をご存知でしょうか。明るい選挙のイメージキャラクターで、なかなか愛らしい。ご当地キャラもあり、本県は「なまはげめいすいくん」。「推しキャラ」なのだが、なかなかお目にかかる機会が、ない。特に、着ぐるみの…もとい動く「なまはげめいすいくん」には。
 「めいすいくん」は平成12年4月誕生。投票箱がモチーフで、頭部には投票用紙の挿入口を表す2本の縦線、背中(お尻?)には錠前も。背中の羽は、明るい選挙の実現に向かうため、なのだそうだ。ご当地めいすいくんは郷土色豊かで、例えばお隣の青森県は、はねとめいすいくん、いたこめいすいくんなど。遮光器土偶が出土したつがる市は「しゃこちゃんめいすいくん」。
 本県版の「なまはげめいすいくん」は、ナマハゲの赤い面と「ケデ」を着けている…というよりは、ナマハゲのかぶり物か着ぐるみを着ているふうで、ふっくらしてかわいい。左手には桶。投票用紙を持った右手を高く上げるポーズは「みんなの一票を大切に」と呼び掛ける。イラストは、衆院選の選挙公報にも掲載され、新型コロナウイルス感染対策も注意喚起する。
 で、思うのだが、選挙の啓発活動というものは、もっと日常的で、もっと身近で、もっと積極的であっていいんではなかろうか。津々浦々に姿を現し、老若男女と触れ合った「スギッチ」並みに、とはいかないかもしれないけれど、子どもの頃から「明るい選挙」の大切さに親しむ環境づくり、主権者教育のきっかけづくりのためにも、活動してもらえないものだろうか。衆院選の投票日はあす31日。大事な一票を、大切に。(渡)


 

紙面作りの難しさ

(2021.10.14)

 記者たちは出社すると、クリップボードに当日の出稿予定を書き、それぞれの取材先へと出掛けて行く。その内容や本数を見て、さらにはストックしてある原稿を考慮しながら翌日の紙面をイメージしている。
 各面のトップ、準トップ記事までめどが立てば、一安心だが、当てにしていた記事に肩透かしを食うこともしばしば。また、突発的な事件事故が飛び込んで来ることもあり、イメージは突然、しかも簡単に崩れていく。
 昨年からの新型コロナウイルスは、紙面作りを一層落ち着かなくしている。感染拡大防止のためイベントや行事は中止や延期が相次ぐ。それを周知する記事が出稿されるたびに気が重くなる。「原稿が足りなくなるのでは…」と疑心暗鬼になるのだ。実際に「どうやってスペースを埋めようか」と切羽詰まった状況がこれまで何度かあった。
 一方で、どっと押し寄せる原稿に「あふれる」と焦ることも。そうなった場合、紙面にどれを入れ、外すか、となるのだが、優柔不断な性格のため取捨選択に迷う。残った記事は、できるだけ早く掲載したいと考えてはいる。しかし、積み重なった「在庫」に対処し切れずにいると、取材先から「いつ載るのか」と問われ、出稿した記者には「早く載せてほしい」と催促されてしまう。
 原稿は多くても、少なくても苦労する。バランスが取れた出入りが理想だが、流動的なニュース量ゆえ対応が難しい。こちらの思い通りには運ばない作業に頭を悩ませつつ、きょうも紙面を「整理」する。(工)


 

きりたんぽ鍋さまざま

(2021.10.3)

 実り、行楽、食欲と「秋」をまとめて満喫できるのが野外できりたんぽ鍋を囲む「なべっこ」だ。いよいよその季節だが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「車座」で盛り上がるのは当面、我慢せざるを得ないようだ。
 大館市で毎年10月に開かれてきた県内最大級のグルメイベント「本場大館きりたんぽまつり」は、コロナ禍で昨年に続き中止となった。しかし、「本場の味」を楽しんでもらおうと、今月9、10、16、17日の4日間は大館樹海ドーム駐車場で予約者に、ドライブスルー方式で「食べ比べセット」を各日400セット提供するという。関係業者、消費者双方を思いやっての工夫だ。
 きりたんぽ鍋は、通信販売のセットを見ても、大館では糸こんにゃくを入れない業者があったり、能代では油揚げを入れたりと、具材は地域により微妙に違う。キノコも、今は多くがマイタケだが、能代のキンダケのように、地域でこだわりがある。
 大館に伝わる「山田流きりたんぽ鍋」はサトイモが入り、鍋が出来上がると、辛味ダイコンの絞り汁を加え、菊の花びらを散らして食べる。これは人によって好みが分かれるが、「話の種」として試してみるのもいかがか。
 その大館で十数年前、小学校の「なべっこ」を取材した時、1人の女子児童が鍋に入れたきりたんぽを見て驚いたのを思い出した。たんぽを通常の「輪切り」でなく、縦に包丁を入れたものだった。「うちのお母さんはいつもこう切るよ。この方が食べやすいって」と真顔。確か転勤族だった。こちらはさすがに試したことがない。(池)


 

知事から見た能代山本

(2021.9.24)

 「能代地区は上下関係、すごいんですよ、変な話」──。発言の主は、秋田の「殿」こと佐竹知事。今月8日に能代山本地区の若手経営者らとオンラインで開催した「知事と県民との意見交換会」で突然放たれた。
 知事は、地域に新たな風を吹かせている若者たちの活動を「非常に楽しく聞いた」と評価した上で、「こんなこと言うと悪いけど、能代は全県で見ると今まで一番若者の動きが少なかった」と指摘。続けて出てきたのが冒頭の言葉だ。
 知事が真っ先に言及したのは、イベントなどの際の「政治家のあいさつ」。いわく、秋田市の成人式は政治家のあいさつは市長だけで終わるのに「能代はどんな会議、イベントに行っても、延々と序列で政治家のあいさつが続く」。これを「ものすごく保守的」とも表現し、そうした空気とか慣習とかが、地域の変化や若者の挑戦などを妨げているように見えていたらしい。
 知事はほかにも「角館(仙北市)では祭り(やま行事)に関わる若い人が(他の祭りなどを)全部見て歩いて、いいところを勉強し、同時に売り込んでいる。能代の人は意外と出歩く人が少ない感じがする」とか、「三種、八峰、藤里の人は、能代を自分たちのエリアの中心と思っていなかったりする。能代はまず、周辺市町とぜひネットワークを作ってほしい」などと語りつつ、今後の若者たちの奮闘、ひいては能代の「変化」に期待を寄せた。
 率直な物言いは知事の代名詞であり、時に物議を醸すこともあるが、今回の発言は能代に暮らす者として思い当たる節がないわけではない。「放言」というよりかは貴重な「忠告」と受け止めた。(平)


 

多様な隣人忘れずに

(2021.9.11)

 コロナ禍で「ひまわり号」が中止になった。障害児・者、高齢者、ボランティアがJR能代駅から五能線の通常ダイヤの列車に乗り、青森県深浦町の十二湖へ行く日帰りの旅。障害のある人もない人も、老いも若きも、一緒にいることは、ごく当たり前な社会の姿なのだよと、再確認できる大切な機会だった。
 そう思い返したのは、東京パラリンピックの選手村で8月26日、トヨタの自動運転の電気自動車が、視覚障害がある選手に接触する事故があったから。同社の発表(30日)によると「道路を横断してきた当該歩行者をセンサーが検知し、自動ブレーキが作動、オペレーターも緊急ブレーキを作動させた。ただし、車両が完全に停止する前に車両と歩行者が接触した」。
 事故翌日、豊田章男社長がネット上の自社番組で原因に関して語った。「じゃ、なんで事故が起きたのか。パラリンピックという特殊な環境の中で、目の見えない方もおられれば、いろんなところが不自由な方もおられる。そこまでの環境に対応できなかったということはいえるんじゃないのかな」。
 どうにも「そうですね」とはうなずけない。さまざまな障害のある人が道路を歩いている状態は、対応できないと言われるほどの「特殊な環境」なんだろうか。自動運転技術うんぬんという以前に、まさかと思うが、車が走る社会に「障害者がいること」を想定していなかったのだとすれば、残念至極。
 健常者だけの社会が、もしあるとすれば、それこそ「特殊な環境」だと思う。普通の社会に暮らす一人として、障害の有無も含め、多様な隣人がいることを忘れないようにしたい。 (渡)


 

戦争記憶の継承

(2021.9.3)

 「あの光景が、記憶に残る兄さんの最後の姿でした」「死んだ人が山のように積み上げられて」「これからどうやって生きていけばいいのか」──。北羽新報は「終戦記念日」の8月15日から今月2日まで「戦後76年 語り継ぐ戦争」を連載した。戦禍によって人生が翻弄(ほんろう)された人たちの証言は心を打つ。
 三種町の藤原ツワ子さん(80)は、戦争で父を亡くした。小学2年の時に母が再婚、義父にはひどく邪険にされたという。中学2年になると義父と母、新しくできた3人のきょうだいは家を出て行った。母は「お前は親がいなくなっても育つ歳になった。ごめんな」と。
 その後、祖父母と暮らした藤原さんは言う。「ただただ、父を奪った戦争が憎い。経験していない若い人たちは本当に幸せだ」。経験していない一人として、今回の連載企画は、どう戦争を記録し、語り継いでいったらいいのか、問い直す機会となった。
 戦後生まれが日本の人口の8割以上となって久しい。登場した17人の平均年齢は88歳だ。戦争が遠くなったからこそ、歴史に学ぶ姿勢を大切にしなければならない。しかし、体験した当事者に直接、話を聞くことは、年々、難しくなっている。取材した記者からは「記憶の風化を感じた」との声も聞かれた。
 連載中、うれしいことがあった。小中学生の姉妹が「『語り継ぐ戦争』を欠かさず読んでいる」というのだ。2人の母から連絡をいただき知った。「戦争は繰り返してはならない」。次代への継承を願う証言者たちの訴えは、どのように伝わっただろうか。(工)


 

「夢とロマンの土笛の里」

(2021.8.23)

 東京パラリンピックの聖火の採火式は、能代山本各市町が特色を出し、三種町は縄文人の火おこしの様子を取り入れた。昭和57年に同町鹿渡にある縄文時代の高石野遺跡から全国的にも珍しい土笛が発掘されたことにちなんだ趣向だった。
 希少な縄文の楽器が見つかったのを受け、旧琴丘町教育委員会は同59年度から2カ年の文部省指定「青年地域づくり活動調査研究事業」で、これを生かし若者たちによる町活性化に立ち上がった。
 縄文人が高石野の高台から琴の湖(うみ)=八郎潟=に向かって土笛を吹き、恋心を伝えた──とエピソードも添え、土笛の製作体験や複製品の販売など活動を展開した。新聞記者として駆け出しの頃、「縄文ネタ」の取材に追われたのを思い出した。
 若者たちを後押ししたのは、当時町教委派遣社会教育主事で後に小学校長などを務めた山木正俊さんと、町教委社会教育係長でその後に町教育長となった大山廣子さん。2人とも亡くなったが、「夢とロマンの土笛の里づくり」は脚光を浴び、取材や視察などに慌ただしく対応していた姿が懐かしい。
 当時は「町おこし」が叫ばれ、全国各地が競い合うように知恵を絞っていた。「縄文の里・琴丘」を掲げた活動は裾野を広げ、後に野外劇「縄文ページェント」も開かれるようになった。
 折しも北海道・北東北の遺跡群の世界文化遺産登録で注目される縄文遺跡。考古学的な価値はさておき、高石野の土笛がブームを呼んだのは、珍しさに加えロマンの音色を響かせたというストーリー性が大きかったとみる。(池)


 

東京五輪、感動の一方で

(2021.8.14)

 7~10日、少し早めのお盆休みを取得した。予定されていた子どもの野球の練習試合等が諸事情で中止になり、かと言ってこのご時世どこかに出掛けられるわけもなく、ほぼステイホームだった。もっとも連日ゴロゴロは自分ばかりで、この間も世の中は動き、テレビ三昧・スマホ三昧の身にもさまざまなニュースが届いた。その中から引っ掛かった出来事を二つ三つ。
 8日、東京五輪が閉幕。この17日間、日本選手団の活躍には拍手を送りっ放しだったが、最終日は男子マラソン・大迫傑選手が圧巻。30㌔すぎに一時8番手に置かれたものの、そこから6位に順位を上げ、メダル獲得の期待まで抱かせた。
 ゴール後は、終わったばかりのレースを冷静に振り返りつつ「100点満点」と言い切った潔さに感動。そのコメントでもう十分と思っていたら、インタビュアーはさらに何をか引き出さんと質問を続けた。事前に用意したものをぶつけ切りたいのは同業者として分からなくもないが、少々しつこく映った。彼の「あんまり泣かせないでください」の切り返しに、はっとした。
 IOCのバッハ会長が五輪閉幕の翌9日に「銀ぶら」していたことに、丸川五輪担当相が10日、「不要不急の外出かはご本人が判断すること」と発言、ネット上に非難の声があふれた一件。国民に外出自粛を強いている側として、事実上バッハ氏の行動を容認したのはさすがに迂闊(うかつ)。今後のさらなる感染拡大にもつながるのではと心配。
 テレビ局の五輪番組担当社員らが8日夜に打ち上げの飲酒会合を開き、女性社員が誤って2階から転落しけがをした。論外。(平)


 

五輪閉幕を機に自問

(2021.8.10)

 8日閉幕した東京五輪は、世界のトップ選手の真剣勝負、日本勢のメダル獲得に沸いた。しかし一方、その間に、新型コロナウイルスの感染拡大は、加速。「新たに○人の感染確認」と速報が入るたび、果たして最後まで大会を行うことができるのか、ハラハラした。だが、期間も終盤になった頃、気付いた。ハラハラしなくなっている。
 感染者数の累計は、五輪期間中に全国で100万人の大台に乗った。本県は、47都道府県の中では少ない方だが、新たな感染判明が途切れず、何より、ただ快癒を願うばかり。感染判明日で数えると、8月は、8日までに75人。7月131人、6月132人、5月が最多の278人、4月195人、3月16人、2月8人、1月118人。昨年は初めて陽性者が確認された3月から12月末までで143人。
 自戒を込めて、改めて自問。「緊急事態宣言」とか「新たに○人」と耳にするのに慣れてきていないか。「誰が感染しても、おかしくない」という緊張感が、「仕方がない」との諦めにすり替わっていないか。手洗いがおろそかになってないか、マスクも外してしまいがちになっていないか。1人ひとりができることは限られる。でも、それを積み重ねるしかないのだろう。それにつけても、政府の対策って、人心に響かない。
 閉会式で聖火が消えた時、なぜか、6月の晴れた日に、トーチを掲げて能代市内をリレーしたランナーたちの晴れ晴れとした表情が思い出され、無事閉幕したのだと、ひとまず安堵(あんど)した。今月24日には東京パラリンピックが開幕予定。聖火になる炎は、能代山本でも採火される。(渡)


 

ランクインで悦に

(2021.7.16)

 今年も半分が過ぎた。相変わらず新型コロナウイルス関連の話題が目立つが、この間、さまざまなニュースを報じてきた。
 小欄で1月、北羽新報社など地域新聞12社が加盟する全国郷土紙連合のウェブサイトを紹介した。各地のニュースを毎日更新しており、「積極的な情報発信に努めたい」と意気込んだサイトへの記事掲載は、前年を上回るペースで続いている。
 話題性や地域性などを考慮して選び、一押しと掲載した記事だけに、その反応が気になり、アクセスランキング(週間、月間各上位5)をチェックするのが日課だ。
 この6カ月余りで、週間ランキングに入った能代山本のニュースは9本。うち「糸引くように長生きを 檜山納豆をプレゼント」「『俳星』創刊号見つかる 能代発祥、明治33年発行」「能代ロケット実験場に 功績たたえる記念碑」の3本がトップに。いずれも1月の掲載だった。
 「糸引くように─」は、檜山納豆を取り上げたテレビ番組が全国放送された翌日の1月17日、圏外からいきなり1位となり、21日までキープ。「『俳星』創刊号見つかる─」と「能代ロケット実験場─」は30日に1位と2位を独占した。
 ほかにも米代川のサクラマス釣り解禁や三種町にコウノトリ飛来、パスタ「ノシロチーネ」発売などがランクイン。
 記事は、褒められ喜ばれることもあれば、厳しい指摘を受けることもある。それが励み、反省となってきた。ランキングだけで閲覧者の受け止め方までは分からないが、弊紙の記事を見つけるたび一人悦に入っている。(工)


 

久しぶりの地方場所

(2021.7.4)

 大相撲7月場所は、4日に名古屋市の愛知県体育館で初日を迎える。新型コロナウイルスの影響で昨年以降、年3回の地方場所(3月・大阪、7月・名古屋、11月・福岡)は感染拡大防止を考慮し、東京・両国国技館で開かれており、1年4カ月ぶりの地方開催となる。暑さもあり「荒れる名古屋」と言われる場所で、好角家の一人として、優勝争いが楽しみだ。
 今場所の注目は大関・照ノ富士の綱取り。かつて大関の地位に居ながら、けがなどもあって一時序二段まで番付を下げた。しかし、心が折れることなく稽古を重ねて徐々に番付を上げ、今年3月場所は関脇で幕内優勝を飾り21場所ぶりに大関に復帰、5月場所も優勝賜杯を手にした。苦労が実を結ぶ場所になるか。
 一方で、ファンを裏切ったのが同じ大関の朝乃山。新型ウイルス感染防止対策のガイドラインに違反し、緊急事態宣言中に接待を伴う飲食店に足しげく通ったとして6場所の出場停止処分を受けた。稀勢の里(現荒磯親方)以来の日本生まれの横綱にと期待された一人だが、幕下以下に陥落するのは確実で、一からの出直しとなる。
 北秋田市出身で、この地域にもゆかりがある豪風(現押尾川親方)が引退し、ご当地の関取がおらず寂しい土俵だが、親方は来春にも部屋を立ち上げるとし、第二、第三の豪風を育ててほしいと願う。
 さて、名古屋場所が終わると、東京五輪開幕も秒読み。ここに至っても開催の是非、コロナ対策の強化をと国内外からさまざま「物言い」がついている。その裁きを下す「軍配」は誰の手にあるのか、そこもあいまいだ。(池)


 

「マイナカード」取得

(2021.6.28)

 配布開始から約5年半。このたび、遅ればせながら「マイナンバーカード」を取得した。
 国を挙げて普及に力を入れる同カード。自分がこれまで未申請だったのは、個人情報が漏れるのが心配とか、体制に反発してとか、そんな立派な考えがあったからではない。単に以前送付された個人番号通知カードを家のどこにしまったのか忘れ、そのまま無くしてしまったからだ。カードの普及率がどうとかそんな記事を書いている身としては、実に心苦しかった。
 そこへ今年に入り、カードの運営組織(地方公共団体情報システム機構)から案内が届いた。カードの申請にはてっきり通知カードなどを持って市役所に行かなければならないと思っていたが、読むとスマートフォンで申請可能という。例の「マイナポイント」(上限5千円分)を得るための期限も間近というので、それならばこの機会にと、家族で顔写真を撮り合い、QRコードを読み込んでからはものの5分で申請が完了した。
 カードの受け取りは原則、市役所窓口に本人が出向くことが必要だが、事前に予約したため、手続きは15分と極めてスムーズ。通知カードを無くした件も、書類に「一筆」書いて終わり。取得のハードルは、予想を上回る低さであった。
 さて、このカード。秋からは健康保険証としても利用できるようだが、住民票等の各種証明書をコンビニ店などで取得できない能代山本では現時点で目立った使い道はなく、いったん引き出しにしまった。出番がありそうなのは運転免許証との一体化が図られる予定の2年後か。それまで無くさないように気を付けなければ。(平)


 

笑顔つなぐ聖火リレー

(2021.6.17)

 ともあれ、人の笑顔は人を笑顔にするもんだな、と思った。コロナ禍で、聖火リレーも東京五輪も賛否あるだろうが、8、9日に本県で聖火リレーが行われた。能代市でも。どうも隊列は約800㍍に及ぶらしい、どんな「にぎやかし」が来るのだろうかとやじ馬気分も抱きつつ、取材に出た。
 スポンサー企業の、赤やら青やら、何やらでかい車両が連なり、明るい声色のアナウンスと一緒に、畠町から柳町に続く「たっぺの坂」を下ってきた。そろいの衣装の男女が笑顔を振りまき、跳んだりはねたり踊ったり、手を振り旗を振り、タオルや扇子など応援グッズを配り…一陣の風のように。
 車両のナンバーは世田谷、越谷、横浜、品川など。日本中を回ってタイヤは大丈夫か、とか、新型コロナウイルス対策のマスク着けて手袋はめて重労働だな、とか、余計な心配をしていると、車列も終盤。
 いよいよ主役の聖火ランナーが姿を見せる。沿道に手を振り、足取りも軽やかに。沿道で観覧している人たちは、「まだか」と待つ楽しみでウオーミングアップ、「来たぞ」という高揚感。双方の頬は自然と緩み、笑顔が交わされるのであった。走る人も、見る人も、心は晴れただろう。
 ランナーが去り、走り終えたランナーをバスがピックアップしていく。その後ろには、地元の消防車と救急車。主役を守り、もり立て、支えた皆さん、お疲れさまでした。…紺色やグレーのユニホームで聖火ランナーを取り囲むように両側をきっちり並走したり、制服姿の警察官もがっちり護衛する様子には、「ちょっとぉ、無粋じゃない?」と思ったけれど。(渡)


 

「門外漢」ではいられない

(2021.6.3)

 取材を終え、会社に戻った若い後輩記者が「分からない」と漏らした。全くもって同感。それは何か、囲碁のことである。
 先月24、25日、能代市柳町の旧料亭金勇で打たれた第76期本因坊戦七番勝負第2局は、挑戦者の芝野虎丸王座が、10連覇を目指す井山裕太本因坊(文裕(もんゆう))に勝利した。2日目午前の終局は「異例の早さ」なのだという。 
 新聞解説を務めた高尾紳路九段は「名局だった」と評価。しかし、それがいまひとつピンと来ない。
 碁盤に向かうことは、子どもの頃にたびたびあったが、「五目並べ」が専門。囲碁のルールは深く知らない。そのため対局がどう進展し、勝負がどうついたのか見極められない。
 能代市は「本因坊戦のまち」を標ぼうする。この先も国内最高峰の棋士同士による戦いの舞台となるだろう。報道する立場として「門外漢」ではいられない。基本的な知識を身に付けようと思い立ったのだが、独特な用語に四苦八苦している。
 例えば、本因坊戦を主催する毎日新聞社の記事。第2局初日を報じた見出しは「序盤からねじり合い」だった。「ねじり合いとは?」と、調べると「優劣が不明な局面での攻防」とあった。井山本因坊が先勝した第1局の記事には「(芝野が)黒65のケイマで中央の要所に先行」「黒77のボウシを見て文裕が封じた」。
 「桂馬って、将棋では?」「帽子、いや防止?」。いったい、どのような状況なのか。さらには「早生きの一手」「手を抜き、反撃」「荒らしを狙う」など。非常に難解である。勉強することにしよう。(工)


 

来年こそ「勝利の美酒」を

(2021.5.29)

 「実年の球宴」として親しまれている本社主催の400歳野球の第80回大会は、昨年に続いて翌年に延期されることになった。新型コロナウイルス感染防止策を徹底しての開催を目指したが、県内でも連日感染者が確認されている現状を踏まえ、やむなく断念。新聞報道で延期を知った愛好者からは早速「残念」、「しょうがないな」といった反応があった。
 多世代にわたる野球愛好者の交流などを目的に昭和11年、出場選手9人の合計年齢を250歳以上とする「250歳野球」として始まった“球宴”は300歳、360歳と徐々に年齢を引き上げ、同55年の第40回から400歳となった。戦時中の同16~20年は中断したものの、その後は昨年まで休むことなく熱闘の歴史を築いてきた。
 炎天下で実年球児がはつらつとプレーし、数多くのドラマが生まれる大会。球場に足を運ぶと、50代、60代、さらには70歳を過ぎても野球少年のように白球を追い掛ける姿に、こちらは敬服するとともに元気をもらえる。随所で見られる珍プレーはご愛きょうだ。
 春以降、知人をはじめ参加選手や400歳野球ファンなど何人もから「今年は大会をやるのか」と尋ねられた。地域や職場、同期生などの野球仲間が集う各チーム。例年の6月下旬の開幕に向け、準備を進めていたチームもあるやに聞く。しかし「寂しい夏」となってしまった。
 プレーはもちろん、仲間で試合の話を肴にしての祝勝・反省会が楽しみという選手も多い。コロナ禍で宴会は自粛ムード。来年こそ「勝利の美酒」を味わえる“熱い夏”になることを願う。

(池)


 

「本因坊戦のまち」発信

(2021.5.22)

 井山裕太本因坊(31)に、芝野虎丸王座(21)が挑戦する囲碁の第76期本因坊戦・能代対局(24、25日)が間近に迫ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で予定されていた各種記念事業は残念ながら中止となり、対局のみの実施となるが、全国の囲碁ファンに3年ぶりに「能代」「金勇」の名が発信されるのは、開催地として喜ばしいことだろう。
 本因坊戦の能代対局は、平成26年、28年、30年に続いて4回目。うち28年と30年の取材を担当した。会場の旧料亭金勇・2階大広間に置かれた碁盤を挟んで両対局者が着座し、張り詰めた空気の中、1手目、2手目と打ち下ろされる「初手観戦」の取材や、終局後の対局者への囲み取材などは、普段の取材活動とは明らかに異質で、得難い経験をさせてもらった。
 また本因坊戦取材を通じて楽しさを覚えたのが、対局の様子を中継動画で見ながらの大盤解説会。大盤の前に立つプロ棋士たちは全員が全員と言っていいほどユーモアの持ち主。巧みな話術とさすがの洞察力で、石の置き方もろくに知らない自分のような者(取材者なのにお恥ずかしい…)をも、奥深い囲碁の世界へと引き込んでくれる。愛好者ならなおのこと、これほど至福の時間はないはずだ。
 将棋を含め定期的に棋戦が開かれる都市は県内では能代以外になく、もはや本因坊戦は能代の財産。今回は両雄による至高の対決を静かに見守ることにして、ポストコロナで迎えるはずの次回対局は、再び地域を挙げた歓迎ムードの中、市民も記者も、記念行事を思い切り楽しみ、取材できる「フル開催」であってほしい。(平)


 

接種には丁寧な問診を

(2021.5.13)

 トジナメラン、[(4─ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン─6,1─ジイル)ビス(2─ヘキシルデカン酸エステル)、2─[(ポリエチレングリコール)─2000]─N,N─ジテトラデシルアセトアミド、1,2─ジステアロイル─sn─グリセロ─3─ホスホコリン、コレステロール、精製白糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム二水和物、リン酸二水素カリウム…でできているモノ、これは何?。
 答えは、米製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチン。トジナメランが有効成分、それ以外は添加剤だそうだ。新しいワクチンなだけに、効果を期待する一方で副反応への心配もある。「アナフィラキシー」とか「アレルギー」と聞くと、なおさらだろう。
 おクスリは、効くのも、具合が悪くなる原因も有効成分と思っていたが、さにあらず。県医師会作成のフローチャート「予診の留意点」では「過敏症に注意すべき物質」の一つに、添加剤のポリエチレングリコールを挙げる。医薬品だけでなく、ヘアケア製品、スキンケア製品、洗剤など多様な用途に使用されているそうだ。
 「本剤(ワクチン)の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある者」は接種不適当者に当たるが、仮に医薬品や化粧品で「過敏症の既往歴」があったにしても、原因が何の成分で、それが「本剤の成分」なのか、判然としないのではないか。
 予診票は「薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか」「予防接種を受けて具合が悪くなったことは」と問う。丁寧な問診を、お願いします。(渡)


 

マスクの下には

(2021.4.22)

 不織布、布、ウレタン──。昨年の今ごろが嘘(うそ)のように巷(ちまた)にはマスクがあふれている。「ウイルス 細菌 微粒子99%カット」「耳が痛くならない」「繰り返し洗えるタフ設計」「冷感ひんやり」などと機能性をアピール、形状や価格もさまざま、どれを購入すべきか迷う。
 新型コロナウイルスが国内で初めて確認されたのは昨年の1月15日。その1カ月ほど前からインフルエンザの予防で、仕事や外出の際には不織布マスクを着用していた。かれこれ1年4カ月になるが、マスクでの生活はさらに長期化するのは確実だ。口元が見えないことにより不便を感じる場面も少なくない。
 年度末や年度始めは例年、退任や新任あいさつのため来社する人が増える。コロナの影響で控えているせいなのか、いつもより少なく感じた今春だが、幾度か応対する機会があった。
 互いの顔はマスクが覆う。初対面だと思い会話していたら、交換したばかりの名刺を見て気が付いた。「あれ、前にお会いしましたよね」。相手を目元だけで見分けるのは案外難しい。
 「名刺が少なくなってきた」と後輩記者が心配していた。担当している取材先の顔触れが、異動によって予想以上に変わったのだという。
 取材先へのあいさつは、顔と名前を知ってもらうのが目的だ。しかし、マスクをしたままでは人相まで覚えられるか怪しい。
 早くコロナが収束し、マスクのストレスから解放されたい。互いの素顔が現れた時、発見があるだろう。「あなた、こんな顔だったのか」と。(工)


 

近場で〝主役〟の桜を

(2021.4.15)

 桜前線が例年より猛スピードで北上し、この地方にも到着した。観桜スポットでは「さくらまつり」期間を設定しているが、新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮し、昨年同様にイベントは自粛と静かなシーズンとなりそうだ。
 春を彩る満開の花、その散り際の潔さから日本人に親しまれてきた国花。ソメイヨシノに枝垂れ、八重桜、大山桜、ヤマザクラなど品種も多彩。女児の名前にも付けられ、人気映画シリーズ「男はつらいよ」の主人公・寅さんの妹もさくらだ。
 もし寅さんがいたら、コロナ禍で祭りや催しがなくなった今、商売は上がったりだろう。全国各地を気ままに旅することもできず、東京・葛飾柴又のおいちゃんの団子屋にこもったきりでは「マドンナ」との出会いもなく、物語は成り立たない。
 こちらも、遠出の花見は諦めて近場をあちこち巡ろうか。能代市内だけでも能代公園、市役所さくら庭、能代工業団地の並木、桧山・多宝院、きみまち阪公園、中川原と二ツ井の桜づつみなど名所はいっぱいだ。
 また、三種町は広報4月号で「まちの身近なちょっとした桜スポット」を紹介している。惣三郎沼公園、石倉山公園、ことおか中央公園のほか下岩川農村公園、釜谷農村公園といった“穴場”も取り上げ、ぶらりとドライブコースの参考になりそうだ。
 「桜だけあっても“団子”がなければなあ」と言ったら、寅さんに「それを言っちゃあおしまいよ」と返されるだろうか。「密」を避けながら、それぞれ静かに主役の桜を満喫しよう。

(池)


 

イベント開催の可否

(2021.4.9)

 新型コロナウイルスとの戦いが続く中で迎えた2度目の春。昨年2月下旬、政府が全国の小中学校に臨時休校の措置を呼び掛けたのを引き金に、多数の参加者が集まる行事・イベントはことごとく中止、延期となった。1年経ち、ある程度のコロナ対策も確立されたこの春は、センバツ甲子園が2年ぶりに開かれ、昨年は3カ月遅れの開幕だったプロ野球も始まるなど、日常がそろり戻ってきた印象だ。
 当地でも多くの小中高校が昨年実施を見合わせた「保護者出席の卒業式」や、能代山本雇用開発協会の合同入社式などが復活。嫁見まつり、能代の花火、サンドクラフト、天空の不夜城、能代役七夕といった祭り・イベントも、現時点では再始動の方向で準備が進む。
 一方で、5月の連休に全国の強豪校を招待する能代カップ高校選抜バスケットボール大会は、「選手に万一があった時の責任が負えない」(主催者)などとして2年連続で中止に。市民の間には「能代工の校名が変わる節目の年。工夫すれば開催できたのでは」との声もあるが、地域住民の安全確保も考慮した決断であり、致し方ないところだろう。
 「どこも皆、同じ思いで苦しんでいる。自分も『やらない』と言えたら、どれだけ楽になれることか」。別のイベントを主催するトップが、そう漏らすのを聞いた。ある意味「右ならえ的」でよかった昨年よりも、判断の「選択肢」が増えている今年の方が、関係者の苦悩はより深いのだと知った。
 今後もコロナ禍で下されるであろうさまざまな「決断」に対し、地域の理解が深まる丁寧な報道を心掛けたいと思う。 (平)


 

発想変え、工夫凝らして

(2021.3.31)

 先日知人が、剪定(せんてい)したからと桜の枝を持ってきてくれた。開花のタイミングはそれまでの気温の積算で決まるという。日ごと膨らむつぼみを見ていると、桜も咲く日に向けて日数をカウントダウンしているかのようで、剪定された枝も生き物だと思わせる。同時に季節はすでに春なのだと実感する。
 農家でもないのに、なぜかこの時期になると春作業はいつ始まるのだろうかと思ってしまう。夏になれば「穂が出ただろうか」と、稲に目がいく。実りを予感させる景色は楽しい。しかし気掛かりな光景も増えている。
 そこだけ雑草の背丈が高い田んぼだったり、刈り取られないまま雪の中に立っている大豆だったり。先日は収穫されずに雪の下に埋もれたままになったであろうキャベツが、雪解けとともに変色して姿を現した畑も目にした。そういう田畑を見るにつけ、「主が病気か何かで、手を掛けられないのだろうか…」とあらぬ心配をしたり、これが農業者の高齢化のひずみだろうか、あるいは後継者・担い手確保の厳しい現実を突き付けられているのだろうかと考えたり。
 そもそも、農業に限らず1次産業全般で後継者不足が深刻。超売り手市場と言われる新卒者就職戦線の様子を見るまでもなく、全国あらゆる業界で人手確保の競争が厳しい中、地方の1次産業は圧倒的不利に感じる。であればいっそのこと、後継者が不足しているがゆえ逆に「誰にも参入の余地がある」ことを、可能性として伝えていけないだろうか。発想を変えることと、伝えるための工夫を凝らしながら、生き残りの道を探していけたらと思う。(岡)


 

情報は適宜更新が必要

(2021.3.20)

 新型ウイルス感染者が、県内で初めて確認されてから1年が経過した頃のこと。とある能代市内の公共施設にて。備え付けの手指消毒用アルコールを手のひらにシュッシュもみもみスリスリしながら目線を上げると、数枚の張り紙。新型コロナウイルス感染症の予防や相談・受診の目安、相談先を周知するチラシだ。
 チラシは「令和2年2月19日更新版」「2年3月1日版」という日付入りもある。ああ、1年たったんだなあ…いやいや、感慨にふけっている場合ではない。「帰国者・接触者相談センター」「風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く方」などの文言もある。そういえば、そうだったなあ…いやいや、懐かしんでいる場合ではない。
 この新興ウイルスに出くわした頃の、当時が分かる大事な資料の現物ではある。最新情報を提供しようと張り出したのだろう。しかし、発熱時の受診の仕方など、現在進行形で適切な知識と行動が求められる「今」、掲示物にして周知し続けるべき情報だろうか。
 何度も何度も情報は更新され、上書きされてきたはずだ。もちろん、掲示は伝達手段の一つ。一つでしかないと言われれば、その通りかもしれない。だが、張りっ放しっていかがなものか。住民からたいして気にもされず、目も向けられず、あてにもされていないならば、それはそれで情けなくはないか。
 カラー刷りの1枚に目をやると、手洗いの仕方やマスクの着け方が図解されており、両手をスリスリしながら復習。「今」も変わらず役に立つ。他のチラシもろともに撤去されませんように。

        (渡)


 

直通電話鳴ったら

(2021.2.25)

 机の上に2台の電話機が置かれている。1台は代表電話、もう1台は直通電話。この直通。今では見掛けることが少なくなった「昭和レトロ」な年季もの。事件や事故、スポーツ現場などで取材する記者とデスクを結ぶ「ホットライン」であり、長きにわたり、さまざまなやりとりが行われてきた。
 直通は、性質上、番号を公にしておらず、記者以外からかかって来ることはほとんどない。その前提で受話器を取る。たいがいはワンコール。
 「北羽新報です」
 「能代高校では?」
 「いえ違います」
 実は、同校と直通の電話番号は非常によく似ている。プッシュボタンの押す位置を一つ誤ると、このようになる。
 スポーツ大会の取材を担当した記者は、試合終了後、すぐに直通を鳴らす。勝敗の報告、出稿予定の確認など、紙面作りに大事な意思疎通をデスクと図るためだ。過去には野球の結果を学校に伝えようとした先生が、記者よりも早くかけて来たことがあった。
 そういう私も入社1年目に失敗。能代高に取材の電話をしたところ、それが直通で、「どごさ、電話してらった!」と、受話器を手にした目の前の上司に怒られた。
 業務に支障が生じているわけではなく、特に迷惑はしていないのだが、私の知る限りで1月に間違いが5件。いつにない頻度である。その何件かを取り、ふと思った。「あれで良かったのかな」と。「もっと優しく、丁寧に応対しよう」。そう心掛けると、2月はピタリと止まった。

        (工)


 

3時間の立ち往生

(2021.2.17)

 暴風雪に見舞われた先月7日夜、新聞編集作業の最中、八峰町で停電が発生し女子社員2人の自宅も被害に遭っているとの連絡が入った。停電は能代市内各所にも広がってきて、当社エリアに及べば大変と作業を急いで仕上げ、帰路に就いた。
 雪が吹き付け、幹線道にも積もっている中、慎重にハンドルを握り車を走らせた。自宅まで約17㌔。どうにか半分を過ぎた辺りで、前に東京へ向かう夜行バスが停まっており、これならふぶいても視界が確保しやすいと思った途端、そこから一向に進まない。
 対向車線にも通行車両はおらず、停車したまま30分、1時間と時間だけが経過する。渋滞の原因すら分からず、車内にいるしかない。1時間半ほどして除雪車が対向車線を進み、その車線から車が数十台走って来るが、こちらの車線は止まったまま。2時間経(た)ったころにやっと動き出したものの、数㌔走ってまたストップ。結局、到着まではいつもより3時間以上要し、日付が変わっていた。
 渋滞の原因は、トラック4台が吹きだまりに乗り上げて動けなくなったことだと、翌日知った。初めて体験した長時間の立ち往生。新潟の高速道で発生した2日以上にわたった事態に比べたら軽微で済んだが、今後は万一を考え、車のガソリンは早めに補充し、車内には食料、携帯トイレ、防寒具、温かい飲み物などを常備した方がいいかなとも思った。
 18日は二十四節気の「雨水」。空から降るものが雪から雨に変わるころとされるが、16日も大荒れの天気だった。この地域はやはり、「寒さは彼岸まで」か。(池)


 

コロナ禍を逆手に

(2021.2.10)

 県の3年度当初予算案の内容が、先月28日の新聞各紙で報じられていた。秋田支社勤務時代は自分もそれを「書く側」だっただけに、どんな事業が盛り込まれたのか注目した。
 リモートワークを活用した県内移住の促進、企業の業態転換支援など、予算案にも新型コロナウイルスの影響が色濃い中、目を引いたのがコロナで業績が厳しい航空会社(日本航空、全日空)から出向者を県庁に受け入れるという記事。4月から1年間、客室乗務員ら最大8人を観光や交通、移住・定住などの部署に配置し、県産品を販売するイベントや旅行商品の企画、交通機関の利用促進、語学力を生かした国際交流といった業務に当たってもらうという。
 県人事課によると、両航空会社がコロナ禍でも雇用を守るため全国の企業や自治体に社員を出向させているのを知り、昨年秋に両社に出向者の受け入れを打診した。同課の担当者は「普通なら外部に出ないような人材。航空会社で培ったビジネスの知識や経験を秋田のために生かしてくれるものと期待している」と語る。
 取り組みの背景には、人件費の一部を事実上肩代わりすることで、空港の路線維持にもつなげたいとの思惑も透けるが、双方にとって「ウィンウィン」であるのは間違いなく、コロナ禍を逆手に取って県政の推進や課題解決を図り、「出向から戻った後は、秋田の良さも広めてほしい」(同課)と動いたどん欲な姿勢は評価できる。
 能代山本各市町の当初予算案発表ももうすぐ。コロナをチャンスに変えようという、意欲的な事業はあるだろうか。(平)


 

二ツ井のスキー文化

(2021.2.7)

 豪雪の県南と、そして昨年末の大雪からすると予想外に雪が少ない県北。スキー場では新型コロナウイルスへの感染を警戒してかスキーヤーも少なめだが、この冬は能代市二ツ井町のスキーの歴史の一端を知り、その奥行きの深さに驚かされた。
 教えてもらって初めて知ったが、かつては町内の各小学校単位にスキー場があり、中山スキー場で昭和33年に第1回全県中学スキー大会が開催されたという。地元住民には周知の歴史であっても、初めて知ると、実に革新的に感じる。
 町のスキーの概要は二ツ井町史にもあるが、町史にはアルペン、ノルディックともに全県、全国大会で町民が好成績を残したことが記録されており、その筆致からにじむ誇らしさもうなずける。
 もう一つ興味深かったのは、二ツ井のスキー文化の土台となった米代スキークラブが、もともとは営林署関係者で組織されたということ。「冬の山仕事をするのにスキーが必要だったから」(現役クラブ会員)だそうだが、そこから藤里町のスキー組織も派生していったという。その経緯を知ると、林業とスキー文化で「山」が活気づいていた往時の地域の歴史がうかがえる。
 スキー人口の減少は、二ツ井町だけに限らず全国的な傾向。しかし、数が少なくなったとはいえ、近隣のスキー場では、生き生きと斜面を滑り降りる子どもたちの姿を見ることができる。二ツ井町が育ててきたスキー文化のDNAは、歴史を知らない子どもたちにも確実に受け継がれているようだ。(岡)


 

コロナ情報の共有

(2021.1.28)

 例えば、発熱患者を診察し、新型コロナウイルスや季節性インフルエンザに感染しているかどうか検査を行う診療・検査医療機関は、「どこ」が県に指定されたのか。能代市が設置した仮設診療所は「どこ」にあり、診察日は「いつ」なのか。少なくとも公的な機関や体制に関する基本的情報は住民と共有した方がいいと思うのだが、それを束ねている「公」は明らかにしない。
 風評被害や誹謗(ひぼう)中傷が懸念されるうんぬんという。と、いうことは、住民は誹謗中傷する人々だ、との大前提に立っているのか。情報から締め出された住民は、不安が募る上、心はささくれ立ち、うたぐりや詮索を生む。知らされない部分を埋めようと、うわさ話をあさり、想像で補う。
 正確な情報が行き渡っていれば、どうか。仮に誰かが「あること、ないこと」を吹聴したにしても、聞いた側がそれは事実ではないと分かるから、尾ひれの付けようはない。そもそも、情報を伏せることで、感染自体が「悪いこと」「恥ずかしいこと」で「知られるとまずいもの」との誤った認識を流布してはいないか。
 ちなみに、市の仮設診療所の所在地は、市条例にも番地は書いていない。しかし、設置者の意向がどうであれ、それが明記された「公」の資料はインターネット上に公表されている。公の「公表」というものは、時に滑稽(こっけい)だ。明かさないことで、得られた利は何だろうか。
 ある診療所の敷地にあるコンテナの張り紙は「コロナ感染症待合室」。詮索のしようも、する必要もない。発熱等の症状がある人は我慢せず、かかりつけ医に電話して指示に従いましょう。
                                         (渡)


 

多くのニュースを

(2021.1.19)
 

 最近、全国郷土紙連合のウェブサイトを見るのが日課のようになっている。
 同連合は、北羽新報社を含む日本新聞協会に加盟する地域新聞12社で構成。サイトでは地域性や話題性などを考慮し、各社がその日の一押しとして選んだ記事が日々更新されている。
 弊紙は先月、「季節ハタハタ接岸で漁港に活気」の見出しで記事を掲載した。不振が続いていたハタハタ漁だが、県漁協北部支所管内で3・1㌧のまとまった水揚げがあり、漁業関係者に安堵(あんど)が広がっているという内容。サイト内の週間アクセスランキングで2位まで上昇、関心を集めた。
 その時に1位だったのは八重山毎日新聞社(沖縄県)の「観光大使に『みやぞん』さん 『日本中に魅力伝えたい』」。各社の一押しだけあって、それぞれのニュースは興味深く、驚きや発見も多い。ちなみに月間ランキングでは、十勝毎日新聞社(北海道)の「帯広の豚丼老舗『ぱんちょう』仮店舗にも行列」が昨年10月の記事ながら、いまだトップを堅持している。
 昨年は新型コロナウイルスの影響で、「嫁見まつり」や「能代の花火」「天空の不夜城」「役七夕」「おなごりフェスティバル」といったイベントが軒並み中止。そのせいもあって更新回数が一昨年より半減してしまった。
 コロナ収束の兆しはなく、政府は11都府県に緊急事態宣言を再発令、不要不急の往来自粛などが求められている。こうした時だからこそ積極的な情報発信に努めたい。古里への思いを募らせる出身者はもちろん、多くの人に地域の様子、魅力が伝わるように。(工)


 

なじみのそば

(2021.1.12)
 

 いつもと違った年末年始だ。コロナ禍の影響はさておき、わが家の年越しそばが変わった。40年以上にわたって叔母が発泡スチロールの箱に詰めて届けてくれる「鶴形そば」を味わっていたが、その叔母が昨年10月に急逝し、買い出しせざるを得なくなった。
 スーパーの食品売り場で品定めしながら産地別に3種類のそばを購入し、大みそかから三が日は、〝しきたり〟となっている元日朝のとろろご飯、何食かのを除いて、多くはそばをすすった。
 当たり前に食していた鶴形そばは、麺が途中でちぎれやすく、「すすって食えない」と嘆いた記憶もある。今回準備した3種のそばはそういうことはなく、ずるずると口に運べた。
 ただ、どのそばを食べてもしっくりこなかった。独特の風味、食感が違った。各産地のそばがうんぬんでなく、長年なじんだ味に勝るものはなかなかないということだろう。そこには安心感、郷愁が加味される。
 年明けはここ十数年、遅めの正月休みをもらい「お江戸巡り」を楽しんできた。まずは浅草寺に参拝し、近くの新奥山に建つ三種町下岩川出身の世界的舞踊家・石井漠の「山を登る」記念碑にも合掌。その後は国技館で大相撲観戦したり、劇場や寄席で伝統文化に触れたりし、1年の英気を養ってきた。
 その東京は、コロナ感染拡大が収まらず、再度の緊急事態宣言発出だ。飛行機でひとっ飛びだが、今は「遠い地」となってしまった。噺家が巧みにそばをすする所作でおなじみの古典落語の「時そば」。高座をそばで見られるのはもう少し先のようだ。(池)


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