山菜採り楽しみ、食べて笑顔

(5月4日)

 「クマに出合わないように気をつけて、楽しんできてね」と友人の母親に声を掛けられた。2時間ほどで戻ると、安心した表情を見せながら「楽しかった?」と聞いてきたので、ビニールを編んだコダシを見せながら、「結構採れましたし、何より自然に触れて爽快でした」と答えた。
 山林を所有、山野に詳しい同期生に誘われて彼の杉林周辺で山菜採りをした。「ピーッ、ピーッ」と笛を大きく鳴らした後に、杉林をゆっくり歩み、そこを抜けると日当たりのいい急峻(きゅうしゅん)な斜面。少し登ると、「足元の右」「その上にも」の指示が入り、探すと濃い緑の傘が垂れたように成長したシドケ(モミジガサ)が。根元の上あたりからポキンと折った。
 近くに可憐(かれん)な白い小さな花の群落。二輪草だった。その傍らに薄紫の花が清らかなシラネアオイが一輪。名前が分からないが、かわいい花があちこちに。手を休め、しばし見とれた。新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んで。
 3日後、林道の事情に詳しい先輩とともに、またも山菜採りに。共通の友人であったアウトドアの師匠を偲(しの)び追悼するため毎年行っていたが、去年はコロナで中止に。再開はすんなり決まった。
 彼はボンナと山ウドがお手の物。たくさん取るのではなく、家族でそこそこ食べる量の「一炊(かし)ぎ」を大切にしており、それに従ったが、目が慣れて山菜の見分けがついてくると、そこここに見つけることができた。 
 ウグイスが「ホーホケキョ」を盛大にすると、「ヒンカラカラカラ」の鳴き声も。コマドリだという。小川のせせらぎの音も心地良かった。途中でひょっこり現れたのは、タヌキとアナグマ。鳥や動物との出合いも楽しいと実感した。
 採った山菜を食べるまでの処理は面倒で、特に細いタケノコの皮むきに難儀したが、いずれの山菜も滋味深かった。天ぷら、おひたし、味噌(みそ)漬け、煮浸しと。
 読み終えた時代小説の一節を思い出した。「旨(うま)いもんを喰(く)やあ、人間、知らずに笑顔になる」。(八)