「税」は国民の怒り

その年の世相を1字で表す「今年の漢字」は「税」。
プロ野球・阪神の「虎」か、スーパースター・大谷翔平の「翔」あたりが有力かと思っていたが、それらを吹き飛ばす強烈な1字だと感じた。

発表した日本漢字能力検定協会によると、「税」の選出は平成26年以来9年ぶり2回目。
前回は消費税が5%から8%に引き上げられた年だが、今年も「1年を通して増税議論が活発に行われた」のが理由の一つという。
急激な物価高騰もあり、国民が税やお金全般に敏感になった結果とも言えそうだ。

税で言えば、10月から消費税のインボイス制度がスタート。
軽減税率が導入された中で正確な消費税額の把握などが目的だが、「実質、増税だ」といった不満は能代山本の事業者からも聞かれる。

影響を探る取材では「消費税は消費者からの預かり金という人もいるが、そもそも価格に税金を含めるも含めないも任意。
預かり金でも何でもない」「円安で潤う輸出企業には消費税を還付し、零細業者からはしっかり税金を取るのは不公平だ」との切実な訴えも耳にした。
怒りの矛先は国政・政権へと向いていた。

そうした中で、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題が発覚。
国民からの税金で賄われる政党交付金を受けながら、法の抜け穴を通した表に出せない金も組織的に作っていた実態が暴かれた。
消費税率が上がったわけでもないのに「税」を選んだ国民の政治への不信感は、さらに高まりを見せている。

政権与党の不正行為は、国民と国政との信頼関係の上に立つ税制度の根幹をも揺るがすものだ。
自民党の「解党的出直し」は避けられない。
そしてこの窮地を突破する力が、岸田首相にはあるのか。厳しい目は、能代山本からも注がれている。

(平川 貢)

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